第8話
揺れる車内。
後ろから聞こえる爆音。
タイヤが道路に擦れる音。
香月さんの鼻歌。
ステレオから流れる洋楽。
千秋の広い肩。
車内は暗くて顔は見えないけど、千秋の深みのある爽やかな香水の匂いがあたしを安心させてくれた。
ドキドキする…。
だって、知らない人とこんなにピッタリ体近付けて!
ていうか何処に向かってるんだろう。
あたし何処に連れてかれるんだろう!
「いつまで抱き合ってんの」
―――はっ!
気付いたら車は停まってて、あたしの頭側のドアを香月さんが呆れ顔で開けていた。
…ここ何処…?
逆さまに見える景色は、コンクリートの室内駐車場。
あたしに覆いかぶさってる千秋は、あたしの上でスヤスヤ寝息を起てている。
「馬鹿千秋。起きろ」
逆さまに見える香月さんが、千秋の灰色頭をパシッと叩いた。
「…ん?まけたの?」
眠そうな目を擦りながら千秋が何事もなかったかのように離れて行く。
香月さんは千秋が起きたのを確認するとすぐそばにあるエレベーターに近付いて行った。
千秋は向こう側のドアから車の外に出ようとしてる。
…放置?
あたしどうすればいいの?
焦って跳び起きたあたし。千秋は外側から回ってあたしのドアの前に手を差し延べながら立っていた。
「おいで。極連に追われてたみたいだし、今はまだ危ないからほとぼりがさめるまで。それに傷の手当もしないと、」
『傷?』
千秋の視線の先に目を落とすと、あたしの膝小僧からは血が流れていた。
…さっき極連の人に噛み付いた時にやられたんだ。
「ほら、おいで」
千秋はあたしの手を握ると、エレベーターをドアを開けて待っていてくれた香月さんの方へ引っ張って行った。
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