第6話
突然走り出したマジェスタの中で、ひっくり返ったあたしに
「………で、誰?」
運転席から低くて冷たい声が届く。
『ご、ごめんなさい!勝手に入っちゃってすいません!ちょっと追われてて…、でももう大丈夫なので車停めて下さい!』
あたしは運転席と助手席の背もたれに手をかけて、身を乗り出して懇願した。
「無理だね。あんたのツレ、相当厄介だから」
香月さん、て人は不敵に笑うと親指であたしたちの後ろを指差した。
香月さんの親指の方に振り返ると、マジェスタの後ろにはさっきの合コン相手がバイクで追って来ている姿が見えた。
「お?!極連?!」
何故かウキウキし出す千秋。だけど、その綺麗な琥珀色の瞳はギラギラと輝いていた。
『"極連"って何?!』
「全日本極砕連盟」
『何ですかソレ?!』
あたしと千秋がそんな会話を交わしていると、香月さんがマジェスタを急カーブさせて遠心力であたしの体は千秋の方にひっくり返った。
千秋は体勢を崩しながらも、香月さんの華麗な運転を絶賛していた。
「香月のカーチェイス堪んねぇわ!」
バックミラー越しに見えるスーツ姿の香月さんは、キリッとした目に口端に銜えた煙草が印象的。多分20歳位の大人な男性。
そんな大人な香月さんを呼び捨てにする千秋は、某不良高校の制服を着ている。
「10分以内にあのバイクまけよな、香月。俺家に帰ってからDVD見る予定なんだから」
「どーせAVだろ?集中してんだから黙ってろ」
「ちげぇし。今日は『暴走☆列島』の続編を…」
キキキィー!!!
またしても凄まじい急カーブで、今度は千秋があたしの方に転がって来た。
ゴッ!!
千秋の額とあたしの額が激しくぶつかって、聞いた事もないような鈍い音が車内に響いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます