第5話
「何よ!なんでそんなひどい事言うのよ!」
助手席に座って、運転席の男の人に向かって喚いているのは大人の雰囲気が漂う女の人。
『…え?…っと…』
てっきりあたしに向かって放たれたものだと思ってた言葉は、その女の人に対しての言葉だったらしい。
「静かに。今いいトコだから」
その時、急にあたしに声をかけて来たのはあたしと同じく後部座席に座ってたアッシュの髪の毛の男の子。
その男の子は長めの襟足をしきりに弄りながら
前の席の二人の修羅場を楽しそうに見ていた。
「香月(カヅキ)くん最低!」
目にいっぱい涙を溜めた女の人が、香月と呼んだ運転席の男の人の腕に掴み掛かる。
「千秋も見てないでなんとか言いなさいよ!」
掴みかかったまま、女の人はあたしの隣の男の子の事を睨みつけた。
そんな女の人の後頭部を押さえた香月さんが、突然濃厚なキス浴びせた。
「おぉ」
横の千秋が冷やかしを込めた笑いを漏らすとほぼ同時に唇を離した香月さんが、助手席のドアを開けた。
「別れの餞別だ。下りろ」
「嫌だっ!香月っ――」
女の人を無理矢理車から下ろした香月さんは、その人が再び車に近づこうとすると近付けないように車を急発進させた。
―――あたしを乗せたまま。
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