第4話

暫く走って振り向くと、意外にもあの男は諦めがよかったらしくもう姿は見えなくなっていた。



『…よかった…』



安堵の溜息をついたのもつかの間…



遥か後ろから聞こえて来るのはバイクの爆音。



『………え……』



…まさか?



振り返った先にはさっきの男の強烈な金髪。

どんだけ飢えてんだよ!



『うわぁぁ!』



神様!仏様!閻魔様!

もう夜遊びなんかしない…!

誘われても合コンなんて行きません…!

髪も黒に戻します…!

だからお願い…!!

あたしを守って!!



角を曲がって目に入ったのは黒光りするVIP車。

「welcome」とでも言うように歩道側の後部座席のドアが開けっ放しなっている、四面フルスモークのマジェスタ。



『………っ!』



あたしを守ってくれるのはあそこしかない!

気が動転していたあたしは『いかにも』なその車に何も考えずに飛び乗った。



『はぁっ!…はぁ!』



息切れしながら力一杯ドアを閉めて、鍵までかけたあたし。



「……下りろよ。」



その瞬間、運転席から聞こえた低くて冷たい声。



『あ、』



慌てて顔を運転席に向けるあたし。



運転席に座ってたのはスーツ姿の男の人だった。

黒髪をラフにワックスで纏めてて大人の雰囲気が漂うその人。



でもその人が見ているのはあたしじゃなかった。

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