第36話 神ではない。
「ジバ。お前は、正式に、俺の配下となった。だから、お前には、俺の実力……その一端を魅せてやろう」
そう言ってから、
センは、指をパチンとならしながら、
「限定空間ランク5」
魔法で、『何もない、真っ白な空間』を作り出し、
そこで、ジバと二人きりになると、
センは、
「刮目せよ。そして震えるがいい。これが……この世界でブッチ切り『最強』の……バケモノの実力だ」
グンっと、オーラと魔力を解放する。
フェイクオーラを消し去って、真の圧力でもって、
ジバの前に立つセン。
「ぁ……ぁあ……」
センエースのとてつもなく大きなオーラを前にして、
ジバは、普通に腰を抜かして、その場にへたりこむ。
体がブルブルと震える。
魂の深部が凍り付きそう。
……自分の力では、どうあがいても立ち上がれない。
そのぐらい、センエースの圧力はハンパじゃなかった。
「か……神……」
と、ジバは、ボソっとつぶやく。
センエースのあまりに神々しいオーラを受けて、
センエースのことを、『神』と呼ばれる『超次元の生命』であると勘違いした。
その勘違いを、センは、鼻で笑い、
「俺は神じゃねぇよ、ジバ。もしかしたら、今の俺は、神と同じ領域に立っているかもしれねぇが……しかし、神ではない。そこは誤解するな。俺は、ただの……残酷で冷酷で非道で、そいで可憐な化物でありんす」
「……?」
「気にするな。ただのテンプレだ」
「……??」
センエースという男の不可解性にどぎまぎするしかないジバ。
これから先、ジバは、このセンエースという『世界一頭がおかしい男』の側近となったことで、かなり苦労することになる。
だが、後に、ジバは、こう語る。
『この上なく尊き王の側近として忠義を尽くせたこと。それが私の誇り。それだけが私の自慢。私の命は、尊き王のために在(あ)った』
「……せっかくだし、お前の実力も正確に知っておきたいから……このまま、闘ってみることにしよう。軽い手合わせだが、しかし、気は抜くなよ。俺が相手だと、ちょっとした判断ミスでも、普通に圧死するからな」
そう言うと、
センは、高速移動で、ジバの背後を奪い取る。
ジバは、何も理解できない。
ただ、『目の前からセンが消えた』ということしか分からない。
『センが消えた』と『頭が認識した』のと、ほぼ同時のタイミングで、
「ぶげぇっ!!」
首裏に、強烈な衝撃が走った。
ビリビリと、痺れて、まるで雷が直撃したみたい。
何が何だかサッパリ分からないが痛みだけがどんどん鋭角になっていく。
……『センのチョップがクリティカルヒットした』というのが、コトの真相なのだが、
そんなこと、ジバにわかるわけがない。
センエースの『まあまあ力を込めたチョップ』という『イカれた衝撃』を前にして、普
通に失神してしまうジバ。
しっかりと失神したはずなのに、しかし、なぜだか、すぐに意識を取り戻す。
グワングワンとする頭の痛みの中、
ジバの耳は、確かに、センの声を聴いた。
「朦朧としている余裕などないぞ。俺という暴風の前では、全てがFになる」
言葉の意味はよくわからんが、とにかくすごい自信だ、
ということだけ理解するジバ。
気づいた時には、浮かされていた。
なんで、自分の体が浮かんでいるかは分からない。
なんだか、すべてが、とってもスローモーションで、
『正式に自分の状況を把握すること』すらままならない。
(まるで……海の中にいるみたいだ……)
自分の体がまったくいうことをきかない。
何もかもが、すべて、フワフワしている。
揺らぐ視界と思考。
グニャグニャとズレて、乱れて、軋んで……
「苦痛を与えることが目的じゃねぇから、痛覚だけは俯瞰できるようにしてやるよ」
そんなセンの言葉の直後、
『体の痛み』というものが、きれいさっぱり消え去った。
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