第17話 瞳の奥のサイコキラー。
「……どうか……オンドリュー様……これからも、必死になって、あなた様に尽くします……ですので……どうか……どうか……」
「ああ、期待している。貴様が必死に働き続ける限り、妹が死ぬことはない。……ま、お前がミスをするたびに、文字通り一肌脱いでもらうことにはなるがな、くく……ははははは」
オンドリューは、魔人をイジメるとき、徹底的にやる。
どうすれば、相手がもっとも苦しむか、全力で考えて、そして、実行する。
周囲の配下連中は、そんなオンドリューの悪意を、『ショー感覚』で楽しめる連中なので、オンドリューにいたぶられているジバを見て、ニヤニヤと笑っている。
オンドリューとその配下たちは、これまで、ずっと、そうやって生きてきた。
弱い立場の魔人をオモチャにして遊ぶ。
それを、最大の娯楽として生きてきた。
笑っているオンドリューと、その配下たちの足元で、
絶望と後悔に震えるジバ。
そんな彼ら全員の様子を、
センは黙って、ジっと見つめている。
その『瞳の奥にある炎』に、
誰も気づかない。
★
ゼノのアジト……その最奥に辿り着くと、
そこでは、『邪教団ゼノの幹部』と思しき男が、
オンドリュー部隊を待ち構えていた。
「ようやく来たか……」
『ゼノの幹部』は、
オンドリューを睨みつけ、
「十七眷属の一人、オンドリューで間違いないな?」
「そうだ。私は、貴様を殺す者。正当なる世界の支配者。十七眷属が一人オンドリューだ」
堂々と名乗りをあげるオンドリュー。
性根は腐っているが、誇りと栄誉だけは一丁前。
そんな彼に、
「俺は邪教団ゼノの総帥。カドヒト・イッツガイ。俺の仕事は、十七眷属と龍神族を殺すことだ。権力の中枢に巣食い、庶民を苦しめる豚ども全員をブチ殺すのが俺の役目、ゆえに、ここで、てめぇを終わらせる。今日がてめぇの命日だ。覚悟しろ」
「くく。貴様ごときに、この私が負けるわけがなかろう。私は十七眷属の一人だぞ」
「本気でそう思うのなら、俺と一騎打ちしろ。できないというのなら、二度と強者を名乗るな、臆病者」
「……ふざけた挑発をしてくれる……いいだろう。その、一騎打ち、受けよう!」
そう言いながら、前に出るオンドリュー。
オンドリューは、常にジバをカナリアとして使っているが、別に『臆病』なわけではない。
『性格の悪さ』と反比例して、優秀かつクールで、普通に慎重なだけ。
怯えているわけではなく、単純に、『魔人をカナリアにした方が、もろもろ安全で効率がいい』というだけの話。
『損耗』はしない方がいい。
しかし、最優先はプライド。
シンプルな武人、
それがオンドリューという十七眷属。
「ゼノの頭、カドヒト・イッツガイよ! 貴様も、そこそこ出来るようだが、この私に勝てるとは到底思えんなぁ!」
そう叫びながら、オンドリューは、『アイテムボックスから取り出した、でかい矛』を振り回す。
『剛力を振りかざす』という、非常に分かりやすい脳筋スタイル。
魔法だのスキルだの、そんな小技は二の次。
筋肉で押しつぶす。
力こそパワー。
まるで猪突猛進型戦国武将ばりの戦闘方針。
「おらぁあああ!」
グンっと伸びてくる矛。
凡人なら一突きで即死のスピードとパワー。
とにかく力で押していこうとするオンドリューに対し、
カドヒトは、軽やかに、それをいなしていく。
「ちょろちょろと逃げるのはお得意のようだなぁ!! さすがは、パルカ様から逃げのびただけのことはある!」
パルカは、『カドヒトを逃がした』という件に関して、情報統制をおこなっているが、
十七眷属には、詳細を伝えている。
パルカは、『見栄』のために情報統制したわけではない。
だから、『カドヒトを殺すための武器』である『十七眷属』に対しては、『カドヒトに関する正式な情報』を伝えてある。
「逃げ回るだけでは、一生勝てんぞ! 勇気をもって立ち向かってきたらどうだ、このヘナチョコめぇ!」
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