第9話

「おはようございます」

「「「「「「おはようございます夏秋さん!」」」」」」

 夏秋さんが登校してくると、男子達はみんな大きな声で挨拶をしている。凄い光景だなぁ。他の人にはこんな感じではないのに…。

 ん?これって…一種の差別と言ってもいいだろ!!

 けれど、夏秋さんのおかげで男子達はでは大人しい。それは、僕からしてもありがたいことだ。

「おはようございます。相馬くん」

 夏秋さんは、自分の席に着く途中で僕と目が合ったので、挨拶をしてくれた。

「おはよう。夏秋さん」

 ゾワッ

 何か嫌な予感がする。そう思い顔を上げると、クラスの男子達が羨ましそうにこちらを見つめている。

 怖い……。終わった……。


「ははは!相馬、朝面白かったよ!クラスの男子全員(俺を除いて)を敵に回すなんてよ!」

 そう言って健成は、腹を抱えて笑っている。

「(俺を除いて)って言ってるけど健成は、夏秋さんの事を好きじゃないのか?」

「むむむ?相馬よ。俺がライバルになるのではないかと恐れているのかい?」

「いや。そういう訳ではなくてさ。他の男子たちはみんな夏秋さんのこと狙ってるじゃん?だから健成は、どうなのかなって思ってさ」

「なるほど。そういうことであったか。相馬よ」

「その喋り方やめて。集中できない」

「すまん、すまん。にしてもなぁ、相馬が夏秋さんと付き合ってたなんてなぁ」

「えぇ!?なんでそうなる!?」

 それに、こいつしれっと話しそらしたな?

「いや!俺がそう思った訳ではなくてな。クラスに深沢って奴がいるのわかるか?」

「あの、金髪で明らか陽キャって感じのやつか?」

「そう。その深沢が『河上と夏秋さんが昨日ケーキ屋さんでデートしてた』って言ってるんだよ」

「デート?してない、してない!でも、ケーキ屋さんに一緒にいたのは間違いないけど……」

「一緒にケーキ屋さんって、デート以外に何がある!?」

「いや。健成は、勘違いしている!少し話が長くなるが聞いてくれるか?」

「あぁ。聞くよ」


 僕は、僕と夏秋さんの間にあった事を一部始終話した。もちろんお隣さんだということは隠して。

「なるほどなぁ。でもさ、好きじゃない人とケーキを食べに行かないでしょ」

 ここで認めてしまうと後から少しめんどくさい事になってしまいそうだ。

「行くよ。絶対に」

「そうかなぁ?ま!僕は、夏秋さんのこと気になってる男子とは違うからどうでもいいんだけどね!」

 な・ん・だ・と!?

 それなら、好きじゃない人とケーキは食べに行かないとか言うなよ!!

 ちょっと期待してしまったじゃないか!


 ん、?何か引っかかる。

「なぁ。健成」

「どうした?」

「健成ってもう誰かと付き合ってたりする?」

「…」

「いや!答えろよ!」

「さぁ〜ね?」

 ぐぬぬ。ずるいやつだな。絶対に解明してやる!

「あっ!けんちゃん!お〜い!!」

 遠くで身長が他よりも低くて可愛らしい女子生徒がこちらの方へ手を振っている。正確には健成に。と言った方がいいか。

「おぉ〜。ゆめ!」

 "ゆめ"と呼ばれた人はまるで僕の事が見えてないんじゃないかと思わせるぐらいに健成と嬉しそうに話している。

 !?

 "ゆめ"と呼ばれた人は、健成の胸に飛び込んだ。

「ちょっとゆめ!?人前だぞ!?」

 嘘だろ……。人前でそれは……。

 健成も、慌てている。

 いつもの健成とは違う健成でちょっと面白いなと思ったのは、ここだけの話。

「ちょっと!ゆめ。相馬が見てるからほどほどに」

「ん?相馬?誰それ?」

「目の前にいるこいつが俺の親友の相馬だ!」

「目の前?」

「「………………」」

 "ゆめ"と呼ばれた人は、僕と目が合った瞬間時間が止まったかのように固まった。

「嘘……」

「ん?ゆめ。相馬のこと知ってるのか?」

「いや。全然知らない」

「ならどうした?」

「けんちゃんとイチャついてるところを、見られた…」

「だから言っただろ?」

「言ってない言ってない」

「言ったよ??」

「終わった。みんなにバラされて私はこの高校で生きて行けなくなる」

「相馬はそんなことしないぞ?」

「ほんと?」

 "ゆめ"と呼ばれた人は目を見開き、健成の顔を見た。

「あんた!本当に言わないの?」

「言わないよ。そもそも転校したてで友達も、いないよ……」

 この言葉、自分で言っておいて自分にダメージがあるな。きっつ。

「そうなんだ!良かった!」

 そう言って彼女は ハハッ と笑っていた。

 なんかぼっちを笑われたような気が…。この事広めてやろうか!?

「そんな感じで、相馬には友達がいないんだよ。だから、ゆめも相馬の友達になってあげてくれ」

「えぇ……」

 お〜い。心の声出てますよ〜。

「分かった!けんちゃんが言うからしょうがなく友達になってあげるんだから、勘違いしないでよね!」

 うわ〜、ちょっと苦手かもしれないこの人。健成と僕で態度変えすぎだろ!でも、好きな人とそうじゃない人。そりゃそうか?

 とりあえず、友達になって貰えたことに対してお礼を言わないと!

「ありがとうごさいま、す?」

白金しらがね 結夢ゆめよ。よろしく」

「河上 相馬です。よろしく」

 こうして、2の友達が出来た。

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