第8話
僕は、今クラスのヒロインの夏秋さんと夏秋さんの奢りでケーキを食べに来ている。
「相馬くんは、どのケーキがいいですか?」
僕達はテーブルに向かい合って座り、メニューを見ながらどのケーキを選ぶか話し合っている。
「ん〜、どれも美味しそうで迷うな」
お世辞とかではなく、本当にどれも美味しそう。だから値段もいいくらいに高い。本当に奢ってもらってもいいのだろうか。
けれど、遠慮はするなと言ってくれたのでお言葉に甘えて奢ってもらおう。
「夏秋さんのおすすめは、どのケーキ?」
「私ですか?私は甘いものが大好きなので、このクリームたっぷりのショートケーキですかね」
夏秋さんの教えてくれたカットされたショートケーキは、クリームが見たことがないくらいにたっぷりと塗られていた。
「このショートケーキ、クリームで隠れていますが実は、フルーツも沢山入っています。クリームや、フルーツの味が前に出すぎず、スポンジの部分の味もしっかりと伝わたわってきてとっても美味しいですよ」
なんだと!?もう夢のショートケーキと言ってもいいじゃないか。こんなに熱く語られたらこれ以外を選ぶ気になれないからショートケーキを選ぶことにした。
「じゃあショートケーキにしてもいい?」
「はい!いいですよ。では、私はチョコレートケーキにしますね」
夏秋さんが選んだチョコレートケーキは、チョコの部分がとても輝いて見える。これはこれで美味しそうだ。
今度、健成を誘ってまた来よう。
夏秋さんが注文を済ませてくれた。ケーキが来るまで夏秋さんと、話すことにした。
「夏秋さんって小さい時から人気だったの?」
「そうですね。私は小学生の頃まで、少し田舎の小学校に通っていました。その時は大事なものを取ろうとしてくる人がいたりして。人気者ではなかったですかね?」
「そうだったんだ…」
「何深刻そうな顔してるんですか!嫌なことをしてくる人をもいましたけれど、そのおかげで出会えた。優しい友達もいましたよ?」
「そうか。ならいいんだ!」
「相馬くんも、そのうちの一人です」
夏秋さんは顔を赤くしながらそう言った。
そうか、優しい人として見てくれてるのか。期待に応えるためにももっと周りをよく見て夏秋さんのように周りから好かれる人になろう。と、そう心に決めた。
「夏秋さんは転校したての僕にも優しくてとても優しい人ですよ」
「そうですか。そう思ってくれてるなら頑張ってるかいがありますね」
何か夏秋さんの言葉が引っかかった気がしたが気のせいだろう。
店の人がこちらの方へ歩いてくる。お待ちかねのケーキがついに来たぞ!
「ご注文のショートケーキと、チョコレートケーキです」
「わぉ」
あまりにも美味しそうだったのでつい声が出てしまった。
「わぁ!やはり何度見ても美味しそうです!ありがとうございます!」
「はい。ご注文は以上でしょうか?」
「はい!大丈夫です!」
「ごゆっくり」
そう言って店の人は去っていった。
「相馬くん、相馬くん!早く食べちゃいましょうよ!」
「分かった、分かった!」
そう言って僕達は合唱をした。
「「いただきます」」
夏秋さんは、早速チョコレートケーキをフォークで小さくして口に運んだ。
「んおいっしぃ〜!」
ゴクリ
そんなに美味しいのか!?僕も1口ショートケーキを口に運んだ。
「ん!!なんだこれ!すごく美味しい!多分いや、絶対僕が今までに食べたケーキの中でいちばん美味しい!」
「ですよね!ここのケーキはベリーが黒船に乗って日本に来たぐらい衝撃的ですね!」
ん?黒船?ペリー?どゆこと?
「そ、そうだね、?」
夏秋さんの例えがいつもの印象と違い、面白くつい口角が上がってしまった。
「むぅ〜!何笑ってるのですかぁ?私、もしかして変なこと言ってましたか?」
「いや、変なことはイッテナイヨ?」
「何か不自然です!隠し事はいけませんよ。相馬くん!」
「隠し事はシテナイヨ」
「いいえ。絶対にしてますね!」
そう言って夏秋さんは、じっと僕の目を見つめてくる。だから、僕も夏秋さんの目をじっと見つめたその時。いきなり夏秋さんが明後日の方向を見だした。
「夏秋さん。もしかして照れてる?」
「な!そそそそんなことありませんんん。それより、ケーキを食べましょう?」
やけに焦りながら夏秋さんは、ケーキを食べるのを再開した。
平和だな。ほんと、転校して良かったなぁ。前にいた高校では、僕は酷い扱いをされた。思い出すだけでも鼻の奥がツンと痛くなる。
「相馬くん?どうかしましたか?」
「大丈夫!少し考え事してた!」
「そうですか」
夏秋さんは、何か物言いたげだったけれどグッと堪えているように見えた。
相手が言いたいと思うまでは無理に聞かない。そこは夏秋さんの一番優しいところかもしれないな。
「はぁ〜!美味しかったですね!」
「ほんと、それな!奢ってくれて本当にありがとう!」
「いえいえ!私は貸しを返しただけですよ!」
「いいや!僕の方がたくさんもらったから!だから…」
「だから?」
「次は、僕が奢るから。また、一緒にここに来ないか?」
「はいっ!約束ですよ!」
そう言って夏秋さんは目を輝かせて笑顔になった。
僕の目には、太陽よりも眩しく夏秋さんの笑顔が写った。
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