先生との再会

先生との約束の時間。先生とは家の近くの大通りで待ち合わせをした。


お母さんにはアンナと出かけるって嘘をついちゃったし、気持ちがソワソワして時間より10分も早く待ち合わせ場所に着いた。


クラクションが鳴って私の前で車が止まった。


「北川、乗って!」


私を乗せて先生の車は出発した。


「北川来るの早くない?」


「先生も早かったね!」


「遅刻するとろくな事ないからな。」


そう言って笑う先生。


みんなで焼肉を食べに行った時、先生遅れてきてアンナと菜乃から大ブーイング受けてたよね。


「ところで、なんで中華なの?」


「小龍包が食べたくて。もしかして先生嫌い?」


「そうだったのか。ウマイやつ食わしてやるよ。」


「やった!先生、夜間の学校ってどんなところなの?」


「やんちゃなやつもいるし、成人してる生徒もいるよ。休み時間は生徒と一緒にタバコ吸ってる。」


「そっか。成人してるってことはもう大人だもんね。」


「喫煙所もあるよ。俺より年上の生徒もいるし、北川たちが通ってた昼間の学校とはまた違った雰囲気だな。」


「高校でも色々あるんだね。」


話をしているとあっという間にお店に着いた。


食事をしながら私と先生は色んな話をした。先生の話は面白くて会話も弾んだ。


「先生、社会人になると色々大変だね。」


「どうした急に。何かあったのか?」


「そういうわけじゃないけど......高校の頃の様に遊んでばかりはいられないね。」


「そうだな。でも社会人になってやれることも増えただろ?」


「そうだけど......」


「どうしたんだよ。」


「私だっていつも元気なわけじゃないよ。」


「そうか。北川が3年の時の元気いっぱいなイメージのままだけどな。」


「そう?」


「俺にとって初めての3年の担任だったし、生徒の進路のこととか色々すごく大変だったんだ。正直文化祭や体育祭とか、クラス運営のことを考えてる余裕なんてなかった。だから北川がいつも明るく元気にクラスをまとめてくれて本当に助かったよ。」


「お母さんにはずっと反対されてたよ。『クラス委員は成績の言い子がやること』って。私は委員や係をやるよりも楽かなと思ってやってたんだけど。」


「そうだったのか。北川にはすっかりダマされたな。」


「えっ?」


「クラス委員は北川にピッタリだと思ってたのに

そんな軽い気持ちだったなんて。」


「ふふふ。でもクラスがまとまって無事みんな卒業できたんだからいいでしょ?」


「クラスのみんなを無事に卒業させたのは俺だろ。」


先生と話していると話が尽きない。気がつけば22時。


「もうこんな時間か。そろそろ行くか。」


「うん!」


「先生今日はありがとう。すごく楽しかった。」


「それを言うなら美味しかっただろ?」


「確かに!」


「気をつけて帰れよ。何かあればいつでも連絡するんだぞ。」


「わかった。次は私が先生にご馳走するね!」


「楽しみにしてる。」


先生の車はクラクションを鳴らして走り去った。



「ただいま。」


「おかえり。珍しく早かったじゃない?」


「そ、そう?」


「アンナちゃんにまた遊びにおいでって伝えてね。」


「うん。言っとく。」


お母さんの顔をまともに見れなくて自分の部屋へ戻った。先生と会ってご飯を食べただけ。それだけなのにお母さんには言えなかった。


先生と会ってたなんて言えなかった......

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