第15話  単独

 皆様、いいですか? 「女の子のすぐに準備するからちょっと待って」を信用してはなりません。 わたくしは今、それを実感しております。


「ごめんよ、ホマレ……。でも1台じゃ不安だろう? 絶対に予備がいるから!」


「それは理解できますが、もう暗くなってしまいますよ?」


「ではここをキャンプ地とするしかないね!」


「はぁ……」


 結局ノーナ様はダカールなんとかのみならず、他にも数台のバイクを持って行く準備をし始めました。わたくしにはよくわかりませんが、乗れる状態にするのに少し時間がかかるということでした。


 1台目は2時間ほどで終わったのですが、なんだかんだで2台、3台とその作業は続けられ、今4台目に突入しました。わたくしにはその4台の違いは形くらいしかわかりませんが……。


 今日の進行を諦めたわたくしは、探索に出掛けることに致しました。結局カセットコンロを見つけていないことに気が付いたので、それを求めてのことです。ダイホンストーリー蒲田店を出たわたくしは、辺りを掃除しながら少し離れた場所に見えていた、大きな家電量販店へと向かいました。


 最近の家電量販店はすごいですね。家電以外もなんでもあります。食料品から医薬品、書籍におもちゃ。果ては家具まで売っておりました。家電量販店は一体どこへ向かっているのでしょうか?


 わたくしは1階のキッチンコーナーでフライパンと雪平鍋、それにやかん、カセットコンロと予備のガスボンベを適量頂きます。ついでに地下の食糧品売り場に行こうと思ったのですが、あまりにも真っ暗で困ってしまいました。


 そこでまだ比較的明るい2階の照明器具コーナーに行き、懐中電灯を探しました。手に持つタイプから頭にバンドでつけるタイプ、クリップでつけるタイプ、天井につけるタイプ、壁につけるタイプなど、色々な照明が売られています。


 とりあえず電池で動くものと、電池を大量に頂き、その場で装備致しまして、今度こそ地下へと向かいました。


 地下は美容関係のものや、マッサージチェア、食料品の売り場のようです。もちろんゾンビもいらっしゃいますので、神の御許へ送って差し上げます。


 ライトの光には敏感なようで、フロア中のゾンビが集まってきてしまいました。物を壊さないようにしながら作業を続けます。それにしてもゾンビの方を倒すと、光の粒子になって消えてくれるのは本当にありがたいですね。遺体が残ってしまうと、色々と大変ですから……。


「よいしょっ」


 インスタントラーメンやレトルト食品を大きな袋に詰め込むと、インベントリに収納します。すっかり盗賊業も板について参りました。


 帰りは脱出するだけです。わたくしは速やかに外へと脱出致しました。


 家電量販店を出た頃には、外はすっかり暗くなっていました。急いでダイホンストーリー大田店へと帰還致します。


「ただいま、戻りました」


「ホマレェェェェェェェェ!?!?」


 バイク屋さんに戻りますと、ノーナ様がわたくしに抱き着いて参りました。何かあったのでしょうか?


「どうされました?」


「だって! だって! 私がぐずぐずしてたから、捨てられたと思ったよ!!!」


「捨てませんよ。ほら、カセットコンロがなかったので、取りに行っていたんですよ」


 カセットコンロの入った段ボールを見せると、ノーナ様は膝から崩れ落ちました。


「だったら一声かけてよぉぉぉぉぉ!!!」

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リリー・オブ・ザ・デッド・アンド・ダンジョンズ ~世界がゾンビまみれになったので、わたくしたちはダンジョンを攻略しながら安息地を求めて旅します~ 内妙 凪 @utitae_naide

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