008 雨模様の色

 梅雨時。一年の中で、一番憂鬱な時期。

 普段はビニール傘で雨を凌げればいいと思っているが、今回は旅行先。街の風景に溶け込むのと、店員さんにお勧めされたこともあり、和傘を買ってみてしまった。



【雨模様の色】



 和傘と言っても、和傘風。

 傘の骨はいつものビニール傘よりも断然多く、持ち手は竹の様な触り心地。

 店舗から外に出れば、梅雨時らしく、しっかりと雨が降っている。

 階段ばかりの道を、傘をさして足元に気を付けて進めば、一瞬開ける視界。

 ほう、と感嘆の息が出るのも、仕方ないだろう。

 そこには、柔らかなパステルカラーの傘たちが、列をなして大通りまで途切れることなく続いている様子があった。

 曇天は、薄暗く。しかし、ところどころで天使が架け橋を地上までつないでくれている。もっと遠くを見れば、虹が輝いていた。……雨はいつの間にか上がっていたようだ。

 ふと、足元に再び目線を移せば、パステルの青とも紫ともピンクとも言えない、不思議な色の紫陽花が咲いていた。

 それが、雨粒をうけてキラキラと輝いていて――。

 意識の外で、思わず写真を一枚。

 また、旅行の思い出と、コレクションが増えたな。と思った、今年の梅雨時だった。

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カラーパレット・セレクション 紅莉 @Lidy

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