第5話 死霊
そもそも魔物とは人間や、魔族、襲う存在の総称である。
異世界には、エルフ族、魔族、人族、獣人族、聖霊族、小人族、などなど数多存在していた。どの種族も考え方や感性は違えど言葉は持っていた。
魔物は基本的に言葉を発することはなく、理性がない。それゆえに人を襲うのである。
まぁ、何事にも例外がある、魔物の中でも言葉を発する存在がいて、それが祭り上げられて神獣とか言われたりね。
話が逸れた気がするな。
死霊。死んだ生き物に宿る魔力、生きている生き物に宿る魔力、思念などが合成されて生誕する理性なき魔物。
死んだ直後の人間が死霊となって暴れ回るとかよくある話だった。面倒なのは普通に生きている人間から漏れ出した魔力からも産まれてしまうことだ。
魔力とは魔法を使う超常的なエネルギー。そこから生まれる怪物は……そりゃ、強い。
『黒堂くん、この世界にも死霊がおるみたいやね。まぁ、異世界にいたんやから当然やけど』
この世界の人間も微々たる物だが魔力を持っているんだ。死霊くらい産まれて当然だろうな。
『ってことはや、それを退治する存在もおるんやろね。じゃなきゃ、こんな平和もおかしいやん』
だとしても、この世界全体の人間の魔力平均保有量は低い。それなら、死霊系の凶暴度も下がるだろう
『せやねぇ。まぁ、問題ないってことやな。さっきのも強いとか自分で言うてたけど弱かったんやし』
夜、たこやきが散歩をどうしてもしたいと言うから、歩いていた。そうしたら、学校の前に死霊が現れたのだ。
まぁ、あっさり倒したが、この世界の死霊は言葉を話すみたいなのが驚いたな。
『四魔天? とか言うてたね。でも、名前負けやろ。魔って字を使って欲しいんよ。ほら、魔王とか強かったやん?』
そりゃね。俺の生涯であれより強いのと会うことはもうないだろう。魔の王を名乗るに相応しい存在だったな。
『なんで、19形態まで進化すんねん。頭おかしいやろ』
普通魔王は第2形態にするもんだが、19形態までいた。しかも最初に2形態までしかないとか言ってたしな。
こっちを油断させる狡猾さも併せ持っていた。しかも、倒したら死霊になって襲いかかってくるし。実質20形態だろあれは。
『それを単体で倒す黒堂くんも、化けもんやねん。ほんまに人間?』
自分でも怪しいよ。あれを倒せたんだから……
『流石やね。あの魔王は歴代最高やったらしいから』
あれを倒すために人類を他から呼ぶって頭おかしいだろ。しかも、世界観最悪だし、暗殺するし、ご飯まずいし、暗殺するし、衛生面も悪いし、暗殺してくるし……
暗殺してくるし!
『ほんま、トラウマになってるなぁ。あの召喚魔法オモロイのが呼んだ人物の世界の時間を止めんねん』
つまり、呼ばれたのが元の世界に戻らないと永遠にその世界の住人は静止した世界で生きることになる。
『実質死んでるのと一緒や。しかも、帰還魔法を持ってるのが魔族の長、つまりは魔王なんやから是が非でも倒さんとあかんちゅうのがおもろいなぁ。やっぱり、人間は下等種族やで。堕ちるところまで堕ちれるからなぁ』
──腹たったから召喚魔法の術式とか、異界から人を召喚する魔法の器具とか全部ぶっ壊してから帰ってきたけどな。二度と使えないように、古代記述とかも念入りに消しておいた
『まぁ、魔王も、もう現れることはないやろうしな。黒堂くんが、倒した魔王の19形態、あれは全魔族の生きるエネルギー、魔力、寿命を全部集めた究極形態やったから。勝手に根絶やしになってくれたわけやし』
使う理由もないだろう。俺があそこまでやったんだ。異世界人を呼んだら、やばいってあいつらも気づいただろう。
『ククク、後の呼ばれる存在のこと考えて暴れ回るとか優しいなぁ。甘すぎるねん。心チョコレートで出来てるん?』
甘くねぇ。腹たったから暴れただけだろ
◾️◾️
「は?」
「何度も言わせるな。四魔天が祓われた」
あーしの家、その一室でパパから言われたのは衝撃の一言だった。四魔天って平安時代に存在していた妖魔の中でも、超強い存在じゃなかったけ?
「お前がやったのか?」
「知らんよ。あーしは」
「陰陽協会はお前が倒したんじゃないかと言っている。俺もお前以外が祓えるとは思えん。祓われた後の、
「ふーん、あーしはみてないから知らんけど」
四魔天って、封印されてるんじゃなかったけ? 誰かが封印を解いたのだろうか。
「……本当にお前じゃないのか」
「……しつこいなぁ。でもまぁ、あーし現代最高だよ? 知らんうちに倒してたのかも、そんなに強くなかったとかじゃない?」
「そうか、それしかあるまい。もう行ってよい」
「はーい」
「そうだ、おこづかいいるか?」
「あーし、パパより稼いでるけど」
「……そ、そうか」
あ、ちょっと親としての矜持が傷ついてしまったか。うーん、悪いことしたかな
「んじゃ、相談乗って」
「ほう?! いいぞ!」
めっちゃノリノリ、ウケる
「気になる異性がいてさ」
「お前は渡さん……そいつを連れて来い、一発殴ってやる」
「価値観古いって。いつの時代の親父だよ」
やっぱ相談する相手間違えたかな。まぁでもここまで言って、何もしないで帰るのもねぇ。
「あー、その人はあーしより強くてさ」
「ははは、お前より強いだって? ははは、乙女ゲーの話か?」
「ちげぇし。ってかパパ乙女ゲー知ってる?」
「もろちん」
「勿論でしょ。とんでもない下ネタを娘に言うなよ」
「ははは、ジョークジョーク」
ジョークじゃ済まねぇよ。ってか乙女ゲーしてんのかよ
「なんで、乙女ゲーしてんの」
「面白いからだろ、ギャルゲーもしてるぞ」
「さっきまで、めっちゃ渋い顔で、四魔天の話してたけど。威厳消えたね」
「おい、父親になんて口の聞き方する。そこに座りなさい」
「いや、その威厳を出しても無理だから。もう、無理だから」
相談する相手間違えたわ。白髪でめっちゃ顔は渋くてかっこいいけど、相談する相手間違えたわ。
「そもそも乙女ゲーの話じゃねぇし、リアルヒューマンだし」
「清子、お前より強い相手がいるだって? 今日は4月1日じゃないぞ」
「エイプリルフールじゃないのは知ってるつうの」
「……お前より強い存在だと? 名家の子か?」
「それは知らん」
名家の陰陽師の家系なのかな……今度黒堂くんにそれとなく聞いてみようかな? でも、名家なら彼の名前が有名になってるはずだけど
「イマジナリー彼氏か……」
「違うっつうの。リアル男子。まぁいいや。あーしもう行くし」
「そうか……冷蔵庫にプリンあるから食べなさい。疲れてるだろ。あまり溜め込むなよ。現代最高と言われてもお前は子供だからな」
「現代最高だから、余裕。天巫女って言われてるしさ」
あーしの家は巫女の一族。いずれ、安倍晴明の生まれ変わりが出ると言われている一族。
それがあーしじゃないかと言われている。
現代救済が義務なんだってさ
パパは心配しすぎだっての。あーしなら、余裕。あーしより強いのなんて存在しない……いやまぁ、柴犬と隣の席の男子は例外として、基本居ないから。
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