人類vs吸血鬼……なに、まだ増えるのか?

 「くくくくく」



 俺は今、都会にいる。

 日本の、都会だ。

 この意味が分かるな?


 そう、人がいっぱいいる。


 楽しいショーを始めよう。



 「かぷ」


 「あ!や、やめ……あッ」



 どうだ、人が噛まれていると言うのに、誰一人見向きもせん。


 これが日本の美徳、スルーだ。

 巻き込まれないために、面倒事は無視する。


 俺が都会を選んだ理由には、こういった要素が強いというのも大いにある。



 「"従属"」



 血を吸った女を従属し、眷属にする。



 「かぷ」


 「きゃ!?」


 「かぷ」


 「いやっ!?」


 「かぷ」


 「あ!」



 何人かをアンデッドにして、眷属にする。

 非処女だった場合は屍鬼にしかできないが、 もちろん処女を狙ったので、もれなく吸血鬼だ。


 しかし……なんだろうか、芸がない。

 面白くない。


 よし、趣向を変えよう。



 「ちょっといいか?」



 お人好しそうな、処女の匂いがする元気系清楚という、世にも珍しい人種に声を掛ける。



 「……はい?私ですか?」


 「ああ。道に迷ったんだが、スマホの充電が切れてしまって……よければ、駅か地図があるところに案内してくれないか?」


 「なるほど、そういうことでしたか!もちろんいいですよ!」


 「助かる」



 くくく。

 完璧だ。少しちょろすぎる気もするが。



 「こっちです!」



 現在地から一番近い駅か、地図のあるところに行こうとすると、どうしても人気のない場所を通る。


 そのときに、色々する。

 パーフェクトプラン!


 さすが俺だ。

 穴なんて存在しな──お?


 おい、こいつはどこに向かっているんだ?


 女は迷いなく進む。


 そうして、そのまま人気のないところに連れ込まれた。



 「くふふ、くふ、ふくはははっ!」



 俺の声ではない。

 あの女のだ。



 「本当に簡単につれたわっ!」



 否、我輩はつり人である。

 魚はお前だ。


 勘違い野郎(♀)を分からせてやらねば。



 「さっきからなにを言っている?」


 「はぁ?まだ分からないわけぇ?あんたは嵌められたのよ!」


 「俺が、嵌められた?」


 「そういってるでしょ?本当に惨めね、低能」


 「……くくく……」


 「なに?おかしくなった?メンタルよっわー」


 「……ジゴクニオトス」


 「は?なに言って──え、いや、ちょ、…あっや、まっそんなとこ、やめ……ああああああ!

……………あッ」


 「……」


 「え?ちょ、まだ続けるの!?まっ、やばい、ああああああ!………」



~~~~~~~~一時間後~~~~~~~~~



 「おい、さっさと吐け」



 嵌めた、ということについて問いただす。

 調教したので、すぐに吐くだろう。



 「わ、分かったから、私に早くアレを……!」


 「言ったらやる」


 「は、はひ!私は悪魔です!悪魔は、諸事情により魂を集める必要があるのです!しかし、なんの魂でも言いというわけではありません。そこで、探し当てたちょうどいい魂が人間のでした。そのために、我々の間ではつり、と呼んでいる──」



 長い。



 「もっとまとめて言え」


 「えっ!?あ、いえ、分かりました!えっと、端的に言うとですね、私たち悪魔はつりを通して魂を集め始めまして、たまたま私の初めてのターゲットがあなただったのです!」



 鴨に見られていたのは腹立たしいが、気になる点が生まれてしまった。

 仕方なく、その気になる点を訊く。



 「悪魔というのは?」


 「種族の呼称です」


 「なぜ魂を集める?」


 「……諸事情でです」


 「それを訊いている」


 「……どうしてもですか?」



 生意気だな。



 「はあ。残念だけど、アレはもうなしか……」


 「あ、待って、言います!言います!言うので、それだけはご勘弁を!!」


 「初めからそうしとけばいいんだよ」


 「は、はいぃ!諸事情と言うのは、下克上を果たすためです!魂は、もとはただの食料だったのですが、食べると強くなることが分かりました。私たち悪魔は、強くなり、下克上を果たすために血眼になって魂を集めています!」


 「強く、なる?」


 「はい!」



 こいつはムカつくが、やってみる価値はあるだろう。



 「おい、立て」


 「え?」


 「早くしろ。あと、俺を受けれろ」


 「え?いや、受け入れるって、そんな、私たち出会ったばっかりですし……」


ーぺちん


 「いっっ!?」


 「二度言わせるな」



 こいつはなにを言っているんだ。


 まあ、関係ない。

 俺は、その悪魔にを伸ばす。


 こうか?



 「私は今、大人の階段を──へ?」



 よし、できたようだ。


──────────────────────

魂 : 0

──────────────────────


 減っている。



 「お前に魂をやった。どうだ?」


 「こ、れは……ああ、今ならなんでもできる! もうさっきまでの私じゃないわよ!いざ、リベンジ──ぶへらっ!?」



 うざかったので、黙らせる。

 どうやら、知能までは強化されないようだ。



 しかし、それを差し引いてもこれは使えそうだ。



 「くぅー、なんで勝てないのよ……」


 「おい、仲間を呼べ」


 「な、仲間?」


 「早くしろ愚図」


 「は、はい!お、お待ちくださいっ!」



 女の悪魔が一人でなにかをぶつぶつ言い始める。


 ニ分ほどして。



 「やあ。ちゃんとつれたのかい?初めからできるとは、将来が楽しみだよ」



 男装していると思われる、角と羽の生えた女が飛んできた。



 「おい、男装女、黙れ」


 「……なにかな、この男は。不愉快だから早く魂を抜き取り給え」


 「悪いわね、それはできないわ。私はこっち側についたのよ」



 なぜか偉そうに男装女にそう告げる悪魔の女。



 「はぁ……ほとほと愛想もつきる。君はかわいいくらいの無能さがちょうどよかったのに、残念だよ」


 「あーはいはい、分かったから。あんたのそういいう面倒なところ、実は嫌いだったのよね、うざいわ。しかも……くすくす、あんた、まだ自分の方が上だと思っているの?だとしたら傑作ね」


ーぴき、ぴき


 男装女の額に青筋が浮かぶ。


 「ふ、フフ……ここまで頭に来たのは、なん十年ぶりだろうか?いいだろう、それなら、お望み通りわからせて──」


 「かぷ」


 「あ、ぐ……おま、え、なにを……」



 悪魔を吸血鬼にしたらどうなる?

 悪魔女は情報源だし、なにより悪魔女という呼び名を付けてしまった。悪魔ではなくするのは、癪だ。


 だから、男装女で試す。



 「や、め……ろ………あッ」



 屈辱にまみれた顔が、次第に恍惚としていく。


 頬は上気し、目はトロンとしていて、もはや、男装が女性らしさを強調するためのボーイッシュなファッションに見えてくる。



 「"魅了"」



 そして、もとのうざい性格が出てこないように、人格を歪めるレベルの強い魅了を行う。


 魅了のスキルレベルは効力の大きさではなく、相手の防御への突破力らしく、吸血のことで頭がいっぱいのこいつには楽に絶大に掛けることができた。



 さあ、俺に見せろ。

 悪魔が吸血鬼化したらどうなる?

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