第22話 常盤美陽を嫌う者達
「――お久しぶりですね,
「
「ちょっと,
「そうですね。敢えて言うなら――他の1年生は見捨てているのに自分の御友人だけ守ろうとする
「っ!?」
「というのは,あくまで表立っての理由ですね」
彼女の言葉に頭にきた
「はっきりと申し上げるならそちらが負けた所で
「「不可能?」」
「ええ。
彼女の言っていることはまさにその通りである。
既に
しかも,
「だからこそ,お願いがあって来ました。
「……僕達に?」
トミー達と顔を見合わせていると彼女は僕達に頭を下げた。
「この試合,棄権して頂くか負けてはもらえないでしょうか?」
「えっ?」
「……
流石の
「
「改竄!?それってどういうこと!?」
「そのままの意味ですよ。あの人に預けておいた誓約書が何故か書き換えられていたんです。
彼女は呆れた顔で肩をすくめた。
話を聞くと
無論,そのことにバスケ部の皆は反論――彼等から事情を聞いた
「
「何よそれ……」
あまりにもやることが横暴すぎるからだ。
「だからこそ,星稜学園の方々にはこの試合に負けて頂きたいのです。今回の一件でバスケ部の彼等は救われる。どうか,お願いします」
「…………」
もう一度,頭を下げられた彼女にトミーと
彼女の言う通り,この試合にこちらが負けても
審判席にいる
――だが,それはあくまでも
「
先程から話をずっと聞いていた義妹が重い口を開いた。
「あなたは……
「ええ。はじめましてですね。たしかに,こちらが負けてもお姉様が
僕の方――義妹が言いたいのは
この試合の前に
そして,僕が負けた場合,
「
「なっ!?」
「
先程まで
だが,彼女はそんなことも気にせず淡々と話し出した。
「言いたくありませんが,皆さんも先程の光景を見ませんでしたか?
「あなたねぇ,誰が原因でそうなっていると――」
「
「……
怒鳴ろうとした
「
「意思?」
「そうです。今の発言は
いつもよりも強い口調で喋る義妹――これは,非常にまずい……。
「なぁ,
「うん。彼女,義妹の一番触れてはいけない逆鱗に触れてしまったかも」
――兄さんの言葉など聞く耳を持たない……。
幼い時,僕を虐めていた男の子達や女の子達を義妹は許さなかった。
だが,それ以上に義妹が許さなかった存在――僕が虐められていることを知っていながら見て見ぬ振りをして僕の助けに耳を傾けず,挙句の果てに虐めていた子達の主張を信じていた学校の先生達であった。
僕を虐めていた女の子達をまとめていた子は所謂権力者の家系,大人の事情で逆らうことが出来なかったのは仕方がないことだろう。
しかし,先生達はあろうことか虐めを黙認しているだけではなく虐めをしていた子達の主張を優先して僕を更に追い詰めていたのだ。
「(彼女の父親が捕まった後は大変だったからなぁ。僕を擁護してくれていた先生から聞いた話だと教頭先生を含めて半数以上が辞めさせられる事態になったから)」
余談ではあるが,この件に普段怒ることが滅多にない温厚の父が動いて二度目の教育委員会の調査が入るなどそれはもうとんでもない状況になったという。
――以来,義妹は僕の意思を無視して主張を押し付けて来る人が大嫌いなのだ。
そして,そんな
「
「落ち着いていますよ?それよりも,そちらはまずやることがあるのでは?」
会場にいる学生達を義妹は見渡して微笑んだ。
「試合が開始される前,何人の誠央学園の学生達が兄さんを誹謗中傷しましたか?」「っ!?それは……」
「正解は男子76名,女子68名,しかも全員が1年生です。ただ,これは会場に入れる人数が決められているのと,兄さんが羨ましい,最初から
「それからですね。
「「えっ!?」」
「
「っ!?」
「他にもまだまだ言いたいことはありますが,特に最優先で言いたいこ――」
「ユフィ,その辺にしておきなさい」
義妹の頭をポンポンと軽く叩くと若干不貞腐れた顔で睨まれてしまい苦笑した。
「――
「……いえ,
次の休憩までに彼等に謝るように説得すると言い残して早々に彼女は誠央学園側の休憩席まで戻って行った。
「……ユフィちゃん,凄いわね。
「そうでしょうか?話して見て分ったんですが,あの人自身は真面目なだけで特に問題があるわけではなさそうでしたよ」
「それでも,凄いと思うよ。ところで,ユフィ。
「ええ。ただ,
困った顔で義妹は
やっぱり,
そう思っていると
「それじゃ,私達は観客席に戻るわね。
「あ~,待ってよ~」
「……
「
一人だけ立ち止まって落ち込んだ顔をしていた彼女を見ると先程のことを気にしているのだと思った。
「大丈夫だよ。こっちも負けるつもりはないから」
「……ええ」
僕がそう言っても一向に元気が出ない――というよりも,こちらが勝っても向こうの援助が無くなることを心配しているのだろう。
「――僕の知り合いの先輩にね,社交部って部活の部長さんがいるんだけど……」
「えっ?」
「その先輩って少し前まで政府にも顔が効く家系の人だったんだよね。あと,多数の企業とも繋がりを持っている人だから」
僕の言った意味を理解したのか彼女は目を見開いて驚いた顔をした。
だが,直ぐに嬉しそうにすると僕に頭を下げて
「よかったの?彼に何も言ってないのにそんなこと言っちゃって」
先程から黙っていた
「何とかしますよ。おそらく,僕と義妹が頭を下げたらそれくらいのお願いなら聞いてもらえると思いますので――対価が非常に怖いですけど……」
「ふふっ,そうだね。」
おそらく,そこまで無理難題は押し付けては来ないだろう。
それにしても,これだけ
「んん?
「…………」
――何だろう,この違和感……。
まるで何かに狙われているような,殺気の籠った目線を感じるのは……。
だが,その目線は僕ではなくある方向に向いていることに気付いた。
そして,その目線の先には――観客席に戻ろうとしていた
僕は慌てて殺気のした方を見るとそこにはボールを持った男子生徒が今にも常盤に目掛けて投げようと構えていたのだ。
「まさか!?
「――えっ?」
彼女が気付いた時には既に遅く,男子生徒の手から投げられたボールは
――ほんの一瞬出来事であった。
当たったボールはそのまま地面を何度もバウンドしながらゆっくりと観客席の方に転がって行き,同時に人が地面に倒れる音が響いた。
「キャアァァァァァァ!?」
「お前,何やっているんだ!?風紀委員,直ぐにそいつを拘束しろ!」
「
会場は最早試合をする処ではなくパニックとなってしまった。
だが,そんな状況の中であってもまるで天が味方をしているような更なる
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