スモーキージョージー
「オニワでやるの?」
「そうそう、煙くなっちゃうからな」
俺が今回買った家庭用の燻製器は、昔出前でよく使用されていた
早速日光降り注ぐ庭に出てアウトドア用テーブルを設置。その上に燻製器を置く。庭ということは当然、親分マンドラゴラもいる訳で寝ていたところを起こしてしまったか、植木鉢の土を掘り起こして顔を覗かせていた。
「ピギッ?」
「おう、親分。これから燻製するから庭使うからな」
「ピッ」
了承といった風に親分マンドラゴラは片手をあげると再び土の中に戻……らないな。見ているつもりか?まぁ親分マンドラゴラは賢いし変なことはしないだろう。
さて、記念すべき最初に燻製する食材はチーズとゆで卵だ。変に冒険するよりもまずは慣らしということでね。
「ジョージ、ジャーキーは?作れるんデショ?」
「作れるけどジャーキー用のイャナ肉を乾燥させているから今すぐは無理だな。出来るのは……夕方頃か?」
燻製器が届いてからひっそりと準備はしていたのだが、驚いたことにジャーキーはお肉にしっかり漬けて下ごしらえをした後、12時間ほど乾燥させなければいけない。届く前日に思い出して漬け込みまでは出来たけど間に合わなかった。まぁ、今日の内には出来るからそれで勘弁してほしい。
「ブー、分かった。待ってる」
「まぁまぁ、チーズもゆで卵も美味いはずだから。――で、これが食材に香りをつけるための燻製チップなんだけどオーロラどれがいい?」
「ヘェー、種類あるんだねー」
オーロラの前に並べたのは燻製をする上で最も重要ともいえるアイテム、燻製チップだ。今回は燻製器を購入した時に付いてきたものを使うつもりだが、3つもあるから小皿に少量盛ってオーロラに選んでもらうことにした。
「ナニガあるの?」
「リンゴ・サクラ・クルミだな」
「フゥム……」
そうして始まったオーロラのテイスティングタイム。戦闘時に見せる様な真剣な表情で1つ1つ皿からチップを手にとっては鼻に近づけてくんくんと嗅いでいる。……その様子から少し時間がかかることを察した俺は一旦庭の水やりに勤しむことにした。はよしてね?
「コレに決めた!」
小一時間経ったところでようやく決まったオーロラがビシッと1つの皿を指差した。選ばれたのはリンゴでした。理由を聞いてみた所ビビッと来たかららしい。思った以上に直感的な選出理由でした。
燻製チップが決まったところで早速準備に取り掛かる。えーっと、コンロの上に燻製器を置いて、燻製チップを入れた受け皿を下段にセット。上段にアルミホイルを敷いたチーズとゆで卵を載せて扉を閉めてっと
「オーロラ、火を点けてくれるか?」
「オッケー!」
火を点けると言っても直接魔法という訳ではもちろんない。コンロのつまみを回すだけだ。火を点けたことですぐに燻製器から白い煙が漏れ始める。これが住宅ひしめく地域だったら気を使わねばならない所だっただろうが、ここはお隣さんとの距離も遠いから気にしなくて大丈夫だ。
「……アキタ。ジョージ、出来たら教えてネ。お酒持ってくるから」
「ハイハイ」
ここで問題が発生した。というのもオーロラ、最初は面白がって煙を眺めていたがやることなくて家に戻ってしまった。あとやる事言えば出来栄えを確認するために燻製器の扉開くだけで、面白みはそこまでないからな。呼べば字の如く飛んでやってくるだろうし好きにさせてやろう。
「ピギッ」
「ん?なんだ親分そのジェスチャーは?俺はここにいるぞ的な?」
「ピッ!」
あぁ正解だったらしい。ジェスチャーといっても万歳した状態で土の中からにょきにょきしているだけだったから殆ど適当に言ってみただけなんだけど。……ん?よくよく見ると親分マンドラゴラの目線が燻製器に釘付けのような。
「親分、食ってみたいのか?」
「ピギッ」
「お、おぉ。分かった欲しいならあげるよ」
「ピギーッ!」
・
・
・
「オーロラー、出来たぞー」
「マッテマシタああああああああああああ!!」
うわ、家の中からビール缶持ってきた妖精が飛んできた、怖。その妖精、ビールは1缶しか持ってきておらずそれをテーブルの上に置くとまたすごいスピードで家に戻ってはもう1缶も持ってきた。大きいもんね。
さて、オーロラからのビールのデリバリーが届いたところでご対面といこうじゃないか。燻製器の扉の前にはオーロラと親分マンドラゴラが陣取っている。何となく俺にはこれから先の未来が見えるのだが面白そうだから黙っておこう。
「早くハヤク!」
「ピーギッ!ピーギッ!」
「んじゃ御開帳!」
勢いよく扉を開けると、中に残っていた煙が排出される。つまりは扉の真ん前にいたオーロラと親分マンドラゴラはもろにそれを浴びることとなる。煙を浴びて軽く燻製されてしまった2人?はと言うと軽く咳をすると、文句を口にした。
「ケムイ!」
「ピーッ!」
そらそうでしょう……待って、親分マンドラゴラお前咳するの!?
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