へぇ、クリアしたんだ

「へぇ、あいつらダンジョンクリアできたんだ」

「ダンジョン?」

「ほら、韮間ダンジョンの新階層のやつ」

「アー、アレ」


 朝、コンソメスープで作ったうどんをオーロラと共に啜りながら、地元の情報を放送するニュース番組の内容に関心を寄せる。そのニュースの内容とは、韮間ダンジョンに突如として発見された新階層の攻略を見事達成したと言うものだ。いやぁ、俺が潜った時はイャナサウルスとその上位存在であるマグイャナには辛酸をなめさせられたものだ。


 さて、新階層を突破したのはここいらで実力者揃いで有名な2組のパーティ+助っ人外国人のラバー&ソニック+配信用のカメラマン1人の11名でクリアしたんだとか。ラバー&ソニックは確か攻略を配信することを条件に参加したんだったな。本当に配信したまま欠員なくボス斃したのか、素直に凄いな。

 今テレビではダンジョン攻略に参加したパーティのリーダーがインタビューに答えているようだ。


『ダンジョン攻略おめでとうございます!』

『ありがとうございます!』

『早速ですが、出現したボスが"ブロックザウルス"とのことでしたが、感想をお聞かせいただいてもよろしいでしょうか』

『苦戦しましたねぇ。アレ同行してくれたラバーさんとソニックさんがいなければ全滅――とまではいきませんけど犠牲はあったかもしれません』


 ブロックザウルス、か。聞き覚えのないモンスターだな。軽く調べてみると、体を構成する肉体1つ1つがおもちゃの某有名企業のブロックの様な形をした恐竜型モンスターなのだとか。見た目こそファンシーな姿をしているが、厭らしい戦い方をしてくるらしい。


『配信見た人なら分かるかもしれないですけど、アイツこっちの動きに合わせて体の形を後出しで変えるんですよ!』


 そこでインタビュー中の画面が切り替わり、ブロックザウルスと戦闘を行っている時の配信の映像が流れた。ボス部屋は闘技場の様な場所で映像上では剣士タイプの2人の冒険者がブロックザウルスに斬りかからんと距離を詰めているところだ。だが、ブロックザウルスはそれを視認すると、自身のティラノサウルスの様な形を崩すとまるで早送りのようにブロックを積み上げ、首長竜の姿――あ、テロップ出た。ディプロドクスっていうのか――に変え向かって来る冒険者を尻尾で薙ぎ払った。

 しかし、こうして体バラしてブロックになって別の形になるところを見ると恐竜型というよりゴーレムっぽいし、何よりこいつ


「フゥン、オニク取れなさそうだね」

「だよなぁ」


 あ、オーロラも同じことを思ったみたいだ。絶対あれ倒したところでブロックがバラバラッと崩れるだけだよな。何かの素材、それこそブロックを建材とかには使えるかもしれないが、食料としては使えなさそうだ。残念。


『私も配信を見ていて手汗握りました!ズバリ、勝因は?』

『やっぱり助っ人の2人がいたからかと。ソニックさんは目にも止まらない動きでかく乱してくれて、ラバーさんは重い攻撃をその身で受けてもピンピンしているどころか、殴り返す始末ですからね』

『なるほどー!そう言えばそのお2人は?』

『あぁ……僕にインタビュー任せてさっさと打ち上げ会場に行っちゃいましたよ』


 そう言って冒険者はフルフェイスヘルメットの奥から乾いた笑い声をあげて肩を竦めた。……しかし、ダンジョン攻略してからすぐインタビューしているから装備を着ているのは分かるんだけど。フルフェイスヘルメットは脱いでもいいのではないだろうか。もっと言えば鎧全部脱げよ。ガチャガチャと鎧が擦れる音がうるさいんだが。



「デ、ジョージ。ブロックザウルス挑戦するの?」


 インタビューが終わってCMに入った時に、うどんをちゅるんと啜り切ったオーロラが尋ねてきた。聞いてくる感じからオーロラ自身はどっちでもいいレベルなんだろう。俺が行くと言えばついて来てはくれるだろう。俺のことだからオーロラなら聞かなくても分かるだろうが、念のためといったところか。


「行かない行かない。行ってもイャナサウルスの肉が切らしてからだな」

「ダヨネー」

「今日はそうだな。昨日届いた燻製器使ってみるか」

「クンセイ……?あっ!ジャーキー作れるやつ!」


 いつだったかに注文していたものがようやく昨日届いたのだ。これを使わない手は無い。さーて、何を煙塗れにしてやろうか!

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