【農家の皆さん】米泥棒の猛攻【ありがとうございます】

「うめぇ……うめぇよぉ……」

「ジャンクでオイシイ!」

『ジョージ泣きながら飯かっ込んでんな』

『対照的にオーロラちゃんいい笑顔してんな』


 視聴者たちのコメントの通り俺は今猛烈に感動してポロポロと涙を流している。というのも、俺が食べているのは、しそ巻きと呼ばれる宮城県の郷土料理だ。味噌にゴマと唐辛子とくるみを混ぜたものを大葉で包んだもの。商品名を知ってから即ポチったね。我ながら神速とも呼べるスピードだったな。


 届いてから何度つまみ食いをしてしまいそうになったことか。げに恐ろしきは大葉の魔力よ。さて、問題の味はと言うと、俺のこの涙が物語っていると言えるだろう。大葉?味噌?ゴマ?くるみ?ご飯に合わないわけがない。味の予想は出来ていたが、それでも泣かずにはいられなかった。大葉や味噌、ゴマの風味にくるみの食感……パーフェクトだ。ありがとう宮城県。しそ巻き1本で大盛りご飯の半分。もう1本で全部食べ切ってしまったよ。調べた限り作り方は簡単な様だし自分でも今度作ってみようか。


 さて、オーロラはと言うとコンビーフをご飯に乗っけて黒コショウとマヨネーズをかけて温泉卵を乗せた所謂コンビーフ丼だ。見た目通りこってりとした味付けのようだが、バクバク気持ちよく食べている。お、味変として粉チーズもかけているな。それもまた良き。そしてオーロラはコンビーフ丼でビールをグビグビと飲んで気持ちよさそうだ。俺は味噌にも合う日本酒をちまちま飲んでいる。


『オーロラちゃん、それに醤油かけても美味いぞ』

「ホントウ!?やってみよ!」

「俺かにふり食べよ」

『かにふりまだあったんか……』

「俺もビックリした」


 新しくよそったご飯の上に金色の包装を開けて中のふりかけをパッパとかける。

 男の頃はこれで蟹を食べた気分になったものだ。最初は懐疑的だったが、いざ食べると凄い蟹なのだ。うん、蟹だ。おかず的なものもいいが、こういうふりかけもたまには悪くない。


『そろそろご飯無くなってきたけど大丈夫?』

『ってか1時間もかかってないのに6合も食ってるのか……』

「安心してくれ、まだ炊飯器2つ炊いてる」

『まって2つっていった?』

『2人で田んぼ1つ分一日で食い荒らせるのでは?』

「HAHAHA、流石にそれは無理だろう」

「ムリムリー」


 そこまで食べてしまえばいくら俺達でも飽きが来ちゃうからな。1日でなんて食べられはしないよ。あ、でも白飯だけじゃなくてチャーハンとかオムライスに出来るのであればワンチャンあるか?

 それにしても、この一杯で土鍋で炊いたご飯は終了か。残念だが、機会があればまた作ってもいいだろう。さ、炊飯器ーっと



「いかの塩辛うめぇ!」

「サバの味噌煮オイシイ!」

「バター醤油ご飯美味い!」

「ごはんにかけるギョーザサイコウ!」

「イナゴの佃煮美味いな」

「松阪牛のしぐれ煮スゴイ!」

『待って変なの混じってなかった?』

『ジョージ昆虫食イケるのか』

「進んで食べはしないけど勧められた昆虫食の中でちゃんとした郷土料理だし」

『モンスターの中でも食える虫とかあるん?』

「……いるはいる」


 虫型のモンスターはわりとどのダンジョンでも出現するが、自然の多い戸中山ダンジョンでは特によく出現する。獲れる素材があまりよろしくないから俺は襲われない限りは狩らない。斃したとしてもそのまま放置することがざらだ。他の冒険者もそういうスタンスが多いだろう。

 しかし、物好きはいるようで食用目的で狩っている冒険者もいる。昔聞いた冒険者の話だと、幼虫のモンスターはクリーミーで美味しいんだとか。その時は苦笑いで流していたなぁ……


「少なくとも昆虫食がメインになることは無いのでそこは安心してね」

『助かる。ぶっちゃけイナゴの佃煮も正直辛い』

「だってさ。オーロラ、優先的に食べるか」

「ハーイ」


 まぁ見た目まんまイナゴだもんな……苦手な人はそりゃ苦手だろう。でも食べると案外悪くは無いんだよな。日本の郷土料理なだけあってご飯ともちゃんと合うし。日本酒とも言わずもがな。

 俺とオーロラ二人の尽力により、イナゴの佃煮はすっかり片付いてしまった。それでは再開と行こうじゃないか。


「食べる出汁醤油うめぇ!」

「海苔の佃煮バターオイシイ!」

『某商店の美味いよな』

『冷奴にかけても美味いぞ』

「梅うめぇ」

『は?』

『冷房効き過ぎてんよ』

『おかしいな、冬じゃないはずなのに』

「ダジャレ言ったつもりじゃないんだが!?」

「コゴエル」

「オーロラまで!?」


 ちなみに俺が食べている梅ははちみつ梅とかではなく昔ながらの酸っぱい梅干しだ。ご飯を食べるとなると甘い奴よりもこっちの方が俺は好きだ。お茶漬けにも合うしね。


『あの、お2人?食べてる姿は見ていて気持ちがいいんだがそんなに食べて太らない?』

『女性に向かってって言いたいところだけどジョージだし』

『オーロラちゃんは女の子やぞ』

「前にも言ったことあるけど、冒険者やってりゃ太らん太らん――って言いたいところだけど、一晩経てばお腹がすっきりしているんだよな。これはオーロラも同じ」

『どういうことだってばよ』

『エルフってそういう種族特性みたいなのあるんか?』

『どんだけ食べても太らないとかアリかよ』

『私もなーエルフになりてーなー』



 ……なんか敵を増やしてしまったかもしれんな?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る