【日本産】日本人と言えば米だよね!【エルフです】

「ハァイ、皆の衆。ジョージの酒飲みチャンネルの時間だぁ」

「ドンドンパフパフー」

『オーロラちゃんなんだその微妙に気の抜ける効果音は』

『土鍋でかくない?』

『こちとらあれしきのデカさじゃもう驚かないね』


 うちの視聴者がいつの間にか訓練されていた件。確かに今日お米を炊くために使っている土鍋は10号だから、1人暮らしの人にはあまり馴染みのない大きさだろう。でもこれが一番多くご飯を炊ける土鍋なのだから仕方ない。


「さて、今日は事前の告知通りごはんのお供をひとしきり楽しもうという内容になるんだが……先にみんなの疑問に答えておこう。配信中ずっと言われちゃ配信楽しみたい人たちに迷惑だろうしね。――まぁご飯をよそいながらの回答になるけど」


 「疑問」なんてぼやけた言い方をしてしまったが、視聴者たちはすぐに何のことか察したようだ。


『あの記事か』

『ラバーとソニックとコラボするん?』

「しないしない。微塵もするつもりはないね」

『なんで?』


 既に蒸らしておいた土鍋の蓋を開けるとふんわりとした炊き立てのお米の香りが爆風の様に広がる。先日パックご飯を食べたばかりだから分かるが、米の香りが全然違う。お米の種類、土鍋で炊いたものと電子レンジで温めたもの、ここまで差が出るとは。おっと、なんでの声に答えねば。


「潜る理由が無いしなぁ……イャナサウルスの肉は前回ので十分確保したし。なぁ、オーロラ?」

「ソウダネ!」

『食べ物優先なのね』

『でも奥にはもっと美味しいモンスターいるかも知んないよ?』

「そん時は後日オーロラと一緒に取りに行くよ。そもそもパーティ組むつもりもないからね。はい、この話は終わり」


 おおっ、綺麗なおこげが出来てるじゃないか。土鍋で炊くことでの楽しみの1つなんだよね、おこげ。子供の頃は実はあまり得意では無かったおこげだが、今では好物の1つだ。オーロラも興味があるようなので、多めによそっておこう。


『りょ』

『あの記事別にジョージに裏取りした訳じゃないのか』

「インタビューとか答えたことないなっと、ホイ、オーロラの分」

「アリガト!」

『ジョージだれかと組むとひっきりなしにそういうの来そうだもんな』

「それもあるね。それじゃよそい終わったことだし、早速食べるか。最初は……そのまま食べてみるか」


 実のところ、ご飯自体は好きだがご飯単体で食べるのは少し苦手だったりする。それならおかずと一緒に食べた方が良いと思ってしまってね。でも折角いいお米を手間のかかる方法で炊いたのだから素材の味を楽しまなければ損と考えてしまった。

 ご飯を箸で掴み、口へと運ぶと――新たな扉が開かれた気がした。これは美味い。噛めば噛むほど仄かな甘みが舌を楽しませる。漫画や小説で米だけ食べる描写を見て半信半疑だったけれど、過剰描写では無かったようだ。


「ジョージ!この焦げたのオイシイ!」

「それはおこげっていうんだ」

「オコゲ!」

『土鍋で炊いた奴が美味いのは都市伝説じゃなかったんか』

『ガチで美味いぞ。試してみろ』

『ジョージ、そのお米どこ産?』

「魚沼産のコシヒカリ」

『ええところの代名詞やんけ!』

『いい米は本当に美味いからな……』


 さて、お米本来の味を楽しんだところで、選りすぐりのごはんのお供たちのエントリーだ。傍らに用意していた段ボールから数々のごはんのお供を取り出しては机に並べていく。ククク、数多の視聴者によって選ばれたお供たちだ。面構えが違う。


「さぁ、オーロラ。好きなものを選びたまえ」

「ジョージ、確保するの早くない?」

「一番は譲れません」


 

 オーロラのジト目の先には俺の手のひらの上にある鮭のルイベ漬け。これはいくらオーロラと言えども譲ることは出来ぬのだ、許せ。


「マァイイヤ。ワタシはこれ!」


 オーロラが選んだのは、なるほどなるほど。なめたけか。ふりかけ辺りを選ぶかと思ったが、中々どうして渋いチョイスだ。でも美味しいよね。

 それでは早速始めようじゃないか。瓶の中に入った魅惑的ともいえるオレンジ色のルイベ漬けを取り出し、ホカホカのご飯の上に載せる。あぁもう、完成だわ。完成しました。今すぐにでも食べたいけれど、ここはオーロラと一緒に食べなきゃね。


「ンンンンンンンンンン!!」

『オーロラちゃん顔真っ赤』

『ジョージ開けたげて!』

『妖精のサイズで瓶を開けるのって相当大変だろうな』


 変な声が聞こえてきたので、そちらに視線をやると、オーロラが必死の形相でなめたけの瓶と格闘を繰り広げていた。あぁ、オーロラの力じゃ瓶開けれないか。ほら、開いた。

 ようやくオーロラもご飯になめたけをセッティングしたところで、2人揃って両手を合わせて


「「いただきます!」」


 贅沢にも載せたルイベ漬けを一気にご飯と共にパクリと行く。ねっとりとした食感に漂うサーモンの風味。噛むと時々イクラを噛み潰しそこからもまた別の味わいが零れ、思わず笑みがこぼれてしまう。

 あぁ、駄目だ。再認識するが、ご飯泥棒だわ。一回口に含んだだけでさらにもう一口何も載っていないはずのご飯をかき込んでしまう。うひょー!美味い!美味い!そして気付いたころには


「おかしい、ご飯が無いんだが」

「オカシイネ」

『何こいつ等深刻な顔してんだ』

『せめて食レポしてくれや』

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