【チーズ】カレーなる一族【醤油】

『いつも思うのだがね、ジョージのサラダは量がメイン級なのよ』

『分かる』

『分かるが故にコレガワカラナイ』

『2人で食べる量じゃないんだよ』

「そう言われましても」


 うちは俺とオーロラだけだが、どちらも食欲が異常なものだから小皿に盛られた程度のサラダじゃ満足することは出来ないんだよ。だからこうやって大皿にモリモリに盛っているのだ。言われてみると、男の頃だったら大根(マンドラゴラ)サラダ単品で満足していたかもしれないな。

 視聴者たちの反応を軽く流して2つのサラダとそれぞれのカレーをテーブルの上に置く。


「はい、これオーロラのね」

「これは俺で……」


 俺は席に着くなり、テーブルの片隅に置いてあった醤油を2滴ほど垂らして一口。醤油のおかげでカレーにコクが増してまた別の美味さとなる。ちょっと和風っぽくなるんだよね。1杯目は普通に食べて2杯目はこうやって何かしらちょい足しして食べるのが俺の家カレーでの食べ方だったりする。


「ジョージ、何かけてるの?」

「醤油」

『ジョージカレーに醤油かけるんか』

『俺もかけるで』

『ソースも美味い』

『いや、かけないのが一番だろ』


 俺が醤油をかけたことに気付いたオーロラが自分のカレーにもかけようとしたところでこれを阻止。俺のを少しあげるからかけるのは別のにしてみたらどうかと提案してみたら、「分カッタ!」と元気のいい声を上げてキッチンに飛んで行ってしまった。

 コメントにもあったソース等はテーブルの上にあるから何を取りに行ったのか、疑問に思いながらもカレーの箸休めにマンドラゴラサラダに箸を伸ばす。


「んっ!こりゃ美味い!」

『すげぇシャキッて音がしっかり聞こえた』

『これは美味い(確信)』


 マンドラゴラが美味いのは分かっていたが、千切りにしたことで食感が軽くて食べやすい。加えて食べているとマンドラゴラの中に紛れたベーコンの風味がまた食欲を推進させる。オーロラの存在が無ければすぐにでも食いきっていたことだろう。それほどまでに夢中にさせる一品を作ってしまった。マンドラゴラの恐ろしさに戦慄していると、どこかに行っていたオーロラが戻ってきた。その手にあったのは――


「とろけるチーズ?」

「ソウ!」


 大事そうにオーロラの両腕に抱きしめられたそれは数枚のとろけるチーズ。なるほど、それをカレーに乗せて食べるのね。確かにそれはオーロラの好みにピッタリだろう。でも、チーズをかけるのならば一旦電子レンジとかで溶かしてから入れた方がいいのでは……?気づかなかったのかもしれないし、ここは俺がやるか。


「オーロラ、チーズ溶かして来ようか?」

「ン?ダイジョーブダイジョウブ!」


 そう言うと、オーロラはカレーの上にチーズを並べ始めたかと思うと、人差し指をチーズに向かって突き出して呟いた。


「エイ」

「うぇっ!?」


 オーロラの指からまるでバーナーの様に火が噴き出し、とろけるチーズを炙り始めた。オーロラ、氷魔法を多用するからてっきりそっちのイメージが強いけれど、火魔法も普通に使えるんだよね。今まで潜ってきたダンジョンが山ダンジョンと海ダンジョンってのが悪い。前者は最悪山火事、後者は辺り一面水と相性が悪い。……いつか韮間ダンジョンの様なクラシックダンジョンでオーロラメインの探索をするか。

 そんなことよりもだ。炙られたチーズは何とも香ばしい匂いを立ててその身を焦がす。あぁ、匂い……いや、見ただけでも食欲をそそられる。


「オーロラ、天才か?」

「フフーン!」

『っぱオーロラちゃんよ』

『火魔法ってそんな風に出来るのか』

『ワイ、火魔法使えるけど指先バーナーは出来んぞ?』


 ……アカン、間近でチーズを炙る光景を見せつけられたら食べたくなってしまうではないか。やはりカレーは恐ろしい。いくつもの顔を持っていやがる……!

 恥を忍んでオーロラに一口貰えるか頼んでみた所、一口ずつ俺の醤油カレーと交換ということに相成った。トロッと糸を引くチーズに悪戦苦闘しながら頬張ったチーズカレーは最高だった。焦げ目の部分が特に美味い。


「ジョージのカレーも美味しい!」

「そうかそうか。このカレーをな、出汁で伸ばしたカレーうどんもめちゃくちゃ美味いんだぞ?」

「タベタイ!」

「おう、もちろん作るとも。――視聴者諸君は申し訳ないが、俺達が美味しそうに食べる様をじっくり見ておいてくれ」

『なんだぁこのエルフ……?』

『ウーバーで既にカレー頼んだ俺は勝ち組』

『セブンのカレードリア買お』


 こうして、大きめの鍋で大量に作られたカレーは、カレーうどんにも使用されたことでほとんど使いきってしまった。それでもあとほんのちょっとは残っているので、視聴者に何か明日の朝ご飯で有効活用できないか聞いたところ


『あぁそれなら――』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る