【悪い】そりゃカレーでしょうよ【やっぱ辛ぇわ】
カレーの一番の楽しみと言ったら?ルー?お肉?それもいいだろう。しかし、俺は違う。茶色の海に浮かぶ肌色の島をスプーンで掬い上げ、口に運ぶ。嗚呼、ホクホクとした食感に染み込んだカレーの風味――至高。やはり至高。カレーに入ったじゃが芋のなんと素晴らしい事か。
『俺達は何を見せられているのか』
『解らんのか!この戯けがっ!』
『エルフの飯顔見てんだよ』
『開幕から挨拶もせずにカレー頬張ってんだよな』
『オーロラちゃんは比較的バランスよく食べてるのにジョージじゃが芋ばっかり食べてね?』
「あっやべ、じゃが芋無くなっちゃった。おかわりしてくるね」
『せめてルー食いきってからお代わりしませんか?』
えぇいうるさい!カレーに入ったじゃが芋が美味しいのが悪いんだ!まぁ、視聴者の言っていることも分かるから、次回から気をつけよう。だから今だけは許してね。ちなみに自己分析して対策を練った結果、今回のカレーにはじゃが芋を大量投入している。他の具が1:1:1とするならじゃがいもだけ3だ。事前にオーロラに話は通しているから喧嘩にはならないね!
さて、一旦じゃが芋を楽しんだことだし、挨拶しておこうか。
「ハァイ、ジョージの酒飲みチャンネルだよ」
「ハァイ」
『おざなりぃ!?』
『珍しくオーロラちゃんも雑なのは草。やはりカレーには魔力が宿る』
そう、実は俺だけでなく、オーロラもカレーにがっついているのだ。それはもう一心不乱に――さっきの挨拶だってカメラに顔向けず視線はカレーのまま手を軽く上げたのみだ。いつもの愛嬌振り撒くオーロラはどこへやら。
……ふむ、辛みで喉が渇いてきたな。いつか買っておいたプレミアムなモルツの瓶を掴み、グラスに注いで一気に呷る。
「ッカァ!美味い!」
『いつにも増しておっさんムーブ』
『中身おっさんやし……』
『カレーってお酒悩まん?』
「悩んだね。この場に出しておいてなんだけど、カレーの飲み物って水とかラッシーの印象が強いんだよね。あまり酒と結びつかないというか」
事実、ギリギリまで悩んだ。配信する前は適当に冷蔵庫にあった酒を飲んでいたものだが、配信をするならそれなりにカレーに合う酒を飲んだ方がいいのでは?と思って調べたものの……サイトによって書いてある事大分違って面倒になったから伝家の宝刀プレミアムモルツが出陣した。
『まま、カレーが飲み物みたいなところあるし』
「カレーは飲み物。分からんでもない。さらさら系のカレーは飲めるよね」
『所謂スープカレーやな』
『んほぉ~カレー飲むの止めらんねぇ』
「俺はゆっくり味わうのが好きだけど」
『急に梯子外すな』
『だが、オーロラちゃんはどうかな?』
どうかなってなんだよ。オーロラはカレーを飲み物だなんてそんな。ふと視線を向けてみると、どこから持ってきたやらオーロラがカレーにストローを挿そうとしているではないか。何してん!?
「オーロラステイ!」
「エ?」
「エ、じゃありません。視聴者の言ってること真に受けちゃダメよダメ。マジレスすると今日のカレーはストローで飲むのにそもそも向いてない」
『ドロドロだもんね。ストロー苦しそう』
「ンー、ジョージがそういうならやめる」
「よしよし、偉いぞー」
分かってくれたのはいいけれど、本当にいつの間にストローを持ってきたんだ……?
『ジョージの家カレーは牛バラか』
『ワイの家は豚肉』
『うちは牛筋』
『手羽元』
「家カレーの魅力だよね。家によってカレーが全然違うんだもんな。あと正確には俺のはミノタウロスバラ肉」
『でもそんなにじゃが芋いれないと思うの』
『その量は異常だよ』
「自覚はある」
自覚はあるが、それでも俺はカレーに入ったじゃが芋をたくさん食べたいんだ。……おっと、食べきってしまったな。お代わりして来よう。オーロラはどうする?いる?分かった。……あ、ヤベ。せっかく作ったサラダ持ってくるの忘れてた。
ごはんよそってカレールーをなみなみと注いで、お盆にサラダの皿と一緒に載せて運ぶ。
「お待たせー」
「待ッテマシタ!」
『サラダやん』
『ようやく茶色ばっかりの食卓に彩りが』
「それに関しましては忘れていたというしか……」
『レタスのサラダともう片方は大根サラダ?』
「そうそう、大根のサラダ。これ好きなんだよね」
実はマンドラゴラだけどな!!ただ、作り方は殆ど大根サラダと一緒だ。千切りしたマンドラゴラを氷水に5分ほど付けて、水からあげてキッチンペーパーで水を切る。皿に盛ったマンドラゴラの上に細切れにしたカリッカリに焼いたベーコンを振りかけて和風醤油胡麻ドレッシングを回しかけて、最後に刻みのりを散りばめて完成だ。
これ、ベーコンも入っていることで肉の風味も相まって美味しいんだよね。大根で美味いのだからマンドラゴラならまた違った美味さだろう。さぁ、新たにカレーライスの引き立て役が登場したことでさらに配信は続いていく――!
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