深く考えたらダメっぽい
「イヤリングに盾か。どちらも2つずつあるが……宝箱を守っていた?シャコガイが二枚貝だからか?」
「ジョージ、この盾ワタシでも持てる!」
「あらホント」
あの巨大シャコガイの貝殻をそのまま小さくしたような盾。とは言え、余裕でオーロラの何十倍ものの面積を誇るのだが、そんなデカい盾をオーロラは軽々と持ち上げていた。試しに俺も持ち上げてみるが、ずっしりとした重さでどこか頼もしさを感じる。――いや、おかしいな。結構パワフルになっている俺が重さを感じている盾が、見た目に反して力があると言ってもオーロラに持ち上がるわけがない。
「オーロラ、ちょっと持ち替えてみようか」
「ウン――持てる!」
「持ててるなぁ」
交換してみても俺もオーロラもそれぞれの重さを感じているようで、やはりオーロラも俺と同じ貝殻の盾を持ち上げて見せている。誰でも持つことのできるみたいな能力でも兼ね備えているのだろう。防具としては有用だよね。ただ、俺達基本回避戦法だからなぁ……でも持っておいて損は無いだろうしこれは換金せずに持っておくか。
続いては黒真珠のイヤリングか。ただの装飾品か、これまた特殊な能力を持った物か……後者ならともかく前者なら換金一択なのだが。オーロラに聞いてみるか。
「オーロラ、このイヤリングいる?」
「ホシイ!でも、ジョージにもつけて欲しい!」
「え゛」
すごい見てくる。イヤリングなんて今まで縁が無かったから滅茶苦茶抵抗あるんですが。でも、ピアスと違って穴開ける必要はないみたいだから敷居は低そうだが……うぅむ、オーロラのおかげで宝箱獲れたようなもんだしなぁ……よし、ここは
「前向きに検討します」
「セージカみたいなこと言ってる!」
君、政治番組も見てるの?それともニュースの知識?
・
・
・
「ジョージ!」
「あぁ、来てるな」
正面より迫る1匹の巨大な魚。カジキマグロに似たフォルムだが、鋭利なのは上顎だけではなく両顎が尖っており、その黒光りする体ごとドリルの様に回転させながら突っ込んできている。奴の通り道にいた憐れな小魚は逃げる間も無くドリルに貫かれ体を引き千切られていた。バラバラになった身はすぐに別の魚のおやつと化していたが。
「回転しながら突っ込んでくるって普通にヤバいよな……脳みそシェイクされないの?」
「ジョージ、モンスターに人間の常識通じないよ?」
「あー、せやな」
そういや、常識外れな妖精がパートナーでしたね、俺。
さて、ドリルカジキだが、試しに進路方向からずれてみると、器用にも俺に標準を合わせているのか軌道修正してくる。だからそんな回転しながらでどうやって俺を把握してるんだよ。
まぁいくら牙〇牙で突っ込んでくるとはいえ、ただの一般モンスター。ヤドリギの矢の敵ではないだろう。とりあえず、そうだな。下手に傷つけて折角の身を無駄にしたくないから――
「"一旦ドリルカジキの回転を止めろ"」
願い、投擲する。ヤドリギの矢は俺の手から離れるや否や、ドリルカジキ同様……いや、逆方向に回転して、ドリルカジキと正面衝突――熱いベーゼを交わした。するとなんということでしょう。あんなに荒ぶっていたドリルカジキの回転が止まりその場に静止しているではありませんか。
よし、ヤドリギの矢は戻ってきているな。それなら次の願いは
「"締めろ"」
俺の意図を汲んだヤドリギの矢は、ふわっと浮かび上がったかと思うとドリルカジキに向かい、頭にぶっ刺さり、再び回転を始めようとしていたドリルカジキは急に動かなくなってしまった。あー、綺麗に脳みそだけ貫いたのね。絞める方向じゃなくて何より。それにしても、そういう細かなものまでちゃんと狙ってくれるんだ。
「コレも食べられるの?」
「おうとも。ってか海の生物は大体食べられるぞ?毒ある奴もそれなりにいるけど……」
締めたドリルカジキをAカードに仕舞うと、そろそろ帰路につくべくトラバサミを設置した地点まで戻る。何かかかっていればいいが……ん?遠くに見えるは、開封された巨大シャコガイの貝殻か。発見されたのだろう。数十人ものの冒険者が力を合わせて運んでいるようだ。
「アレ、よかったの?」
「惜しくはあるけどなぁ」
今更取りに行って所有権主張するのもなんなので、彼らに任せよう。……ってかなんであいつらAカードに入れて持って行かないんだろうか。絶対にそっちの方が楽だろうに。
気になる所だが、聞くわけにもいかないしね。なんて考えているうちにトラバサミ設置地点だ。さーて、何がかかっているかなー?ってんん?
「ナニコレ?」
「タコの足……か?」
ぐにゃぐにゃと海中で揺れるはビッシリと吸盤の付いた1本のタコ足。その足の先には俺が設置したトラバサミがしっかりと挟んでいる。これは自切して逃げられたか?ヤモリ同様にタコもするってのは聞いたことはあるが……足から見るに大物だったろうに惜しいな。だけど、刺身にするならこれくらいで十分かも知れないな。有難く頂いておこう。
タコで残念な思いをしたが、それ以外のトラバサミは結構な成果だった。地味に狙っていた大型の蟹に、ブリっぽい魚。何も掛かってないと思ってトラバサミの口を開いたら中に赤ナマコがいたりもした。
そんな訳で、初めての海ダンジョンは中々に満足のいく結果となった。……クイーンランスサーモンが見つからなかったのは残念だが。
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