再び韮間ダンジョン!
「「ギギャァ……!」」
韮間ダンジョン3層からスタートした俺達は今現在5層まで足を延ばし、今しがた行く手を阻んでいたゴブリンソルジャー2体をヤドリギの矢の力によって燃やし尽くしていた。どうしてこのような現象が起こったかと言うと、俺がしたことと言えば願っただけだ。"2体のゴブリンソルジャーの腹を順番に貫いて貫いた箇所から発火しろ"って念じて投げてみたらご覧のありさまだよ!
本当に順番に腹を貫いて矢が通った痕から炎が噴き出し瞬く間にゴブリンの体を覆ってしまった。殆ど致命傷の上に発火などしてしまえば魔法も使えないゴブリンに逃れる術は無いだろう。やがてゴブリン達の悲鳴は炎によってかき消されその体は炭化し崩れていった。
「ふぅ……ヤドリギの矢を介することで俺実質魔法使えてない?」
「――♪」
俺の発言にオーロラが首肯する。どうやらオーロラにもあの発火現象は魔法によるものだと分かったらしい。ただ、デメリットは当然あるようで、普通にヤドリギの矢を投げるよりも体力……というより精神力みたいなものを持って行かれるような感覚がした。動作的には何時もと変わらないはずなんだけどね。
「もしかして燃えて凍って切り裂いて――とか一気に注文したら俺ぶっ倒れちゃうのかも。怖い怖い、少しずつ検証していかないとな。ん?オーロラ、どうした?」
「――!」
ゴブリンだった炭の山を避けて先に進もうとしたら、オーロラが何かを発見したようで、魔法を用いて炭の山を吹き飛ばすと、中から宝箱が出てきたではないか。え?本当に?オーロラが抱え込めるほど小さいが見るからに宝箱だ。
「オーロラ、それ宝箱!?」
「――♪」
自慢するようなオーロラが俺の手のひらの上に宝箱を置く。サイズのおかげでミニチュア感はあるが、かなりしっかりしている。オーロラ、よく気付いたなぁ。ゴブリン程度なら宝箱ドロップしないと決め込んだ俺が悪いんだけど。
おっと、オーロラが期待するような目でこちらを見ている。自分で開けたいのだろう、俺は手のひらに乗っけられた宝箱をオーロラの方へと向き直し、彼女に差し出す。
「どうぞ、お嬢様」
「――!」
少々芝居がかった様に言ってしまったが、オーロラはお気に召したようで本物のお嬢様のように礼をすると膝をついてゆっくりと宝箱を開ける。――うん、虹色の光は出ないな。やっぱりこれが普通だよな、多分。オーロラは、宝箱の中に頭を突っ込み中身を探る。残念ながら俺は蓋が邪魔して中が見えないからオーロラに任せ……あ、出てきた。
「――!」
「何それ?……宝石?琥珀かな?」
ンバッと宝箱から顔を出したオーロラが手にしていたのはオレンジ色の丸々とした輝く石。俺がそれをトパーズとかシトリンではなく琥珀と断じたのは、その宝石の中に異物を見つけたからだ。種と……なんだこれ。石?のような何かが入っていた。宝石は宝石でもルビーとかダイヤモンドならいざ知らず、中身の入った琥珀が出てくるのか。何とも不思議だ。とは言え、この琥珀はオーロラが見つけたものだからオーロラの物だ。俺がどうこうするつもりはない。ん?オーロラが琥珀を俺に差し出してる。
「え?オーロラ、これくれるの?」
「――♪」
「でも、オーロラが折角見つけたんだし……え?その宝箱が欲しいからいいの?」
「――♪」
「あぁ、小物入れにするのね。確かにデザインいい感じだもんな。分かった、それじゃあこれは有難くもらうな?」
「――!」
という訳で、琥珀は貰うことに。中身って調べることって出来るのかな?ポケットに入る魔物を育てるゲームでは琥珀から魔物を復元して仲間にすることが出来た。もしかしたらこの中身の種も復元することが出来るのではないか?問題は復元するような研究者知り合いがいないことだな!粒源先生?あの人医者だぞ!!
・
・
・
「ブヒイイイイイイイ!!」
「おっ、オークじゃあん!!」
もう一階層降りたところで、ようやくゴブリンと違うモンスターと出会うことが出来た。オーク!自然とテンションが上がると言うものだ。何と言ってもオークは食えるからね。それも一般的にスーパーに出回っている豚肉に比べて美味い。ちなみに人型からくる忌避感は全くない。まぁ反対する団体はあるみたいだけど、どうでもいい。
さて、出てきたオークは一体か。オークは、ゴブリンに比べて鈍重ではあるがその分パワーは侮れない。その手に持っている棍棒を乱雑に振るわれただけでゴブリン数匹は絶命してしまうだろう。おまけにでっぷりしてるから下手な物理攻撃は弾かれることもある。スピードも必要だが、スピードに偏った冒険者にはキツイ相手と言われてる。そしてもう一つの特徴だが……
「ブヒッブヒヒッ」
「……キモイな」
女性を見ると異常に興奮するのだ。今も俺とオーロラを見てはニヤニヤと笑みを浮かべている。うーむ、遭遇するたびにこんな目を向けられると思うと割と不快だな。ちなみに男だと普通に襲って来るらしい。キモイ。なので――
「"あの顔面爆発四散させろ"ッ!」
大きく振りかぶりヤドリギの矢の投擲。途端に脱力感が俺を襲うが、気になるほどではない。まぁゴブリンの時より疲れるかなー?くらいだ。放たれたヤドリギの矢は一直線にオークの顔面へ向かい――着弾した瞬間、小規模な爆発が発生した。憐れオークは断末魔を上げることなく顔を失い、重い音を立てながら地面に倒れ伏した。
「セクハラオークに慈悲はない!」
「――!」
「よっしゃ解体解体!オーロラ手伝ってな!」
「――!」
俺は嬉々としてAカードから装備モールで購入した解体用のゴッツイナイフを取り出す。いやぁ、これ使うの楽しみだったんだよなぁ。武器的なナイフもいいが、こういう解体に使う無骨なナイフも男心をくすぐる。弓より高かったが、全く後悔はしていない。
それではケーキ入刀ならぬオーク入刀!なんてくだらないことを考えながら解体しようとしたとき――
「おいおい、何か音が聞こえたと思ったら……この前の速ぇしっぺのお嬢ちゃんじゃねぇか」
何か知らんおっさんがおっさん引き連れてやってきた。
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