【芽が出たよ】癖がある奴は大体好み別れる【芽が出たよ】
もっしゃもっしゃと今日の酒の当てを咀嚼しながら配信をスタートさせる。視聴者たちは開幕から喋らず料理を頬張っている俺とオーロラを目の当たりにすることになる。勿論そんな状況で喋ることが出来るわけないので、飲み込むまで見てもらおう。
『おかしい、配信を覗いたら2匹のリスが口いっぱいに何か頬張っとるんじゃが』
『俺達は何を見せられているんだ……?』
『皿に盛られてるのはパクチーか?』
『オーロラちゃんもパクチーいける口か……』
『よく食えるな』
『美味いやんパクチー』
『いや、エルフと妖精だぞ?そこら辺の雑草の可能性も』
『なるほど、有り得る』
『アリウール抗菌+』
「ありえねーよ!?」
『あ、飲み込んだ』
いくらエルフになったとはいえ、雑草を食べようだなんて思えない。野草は食べるんですけどね。
さて、俺達がもしゃもしゃしていたのはコメントで大体出ていた通り、パクチーのゴマダレサラダだ。パクチーの苦手な人からしたら地獄絵図かも知れないが、独特なパクチーの風味をゴマダレが包んで美味いんだよね。
俺としてはパクチーサラダだけでもよかったんだけど、これに異を唱えたのがオーロラ。パクチーも美味しいと思うが、肉なり魚なりが食べたい――!と仰るのでカリッと揚げたチキンバーを用意した。昨日、巣守さん宅で夕飯を頂いた帰りに下味をつけたものを持たさせてくれたのだ。漬け込んだのは良いけど、作りすぎちゃったらしい。
「うん、パクチーと交互で食べるといいな。ビールも進む」
「――♪」
『今日はグラスに注がずそのまま?』
「そう、今日は直で飲みたい気分」
『分かる。そういう日あるよね』
『ワイはいっつも缶で飲むわ』
「そこはお好みだよね」
『ってかジョージ骨食べてない?』
「知らないの?チキンバーの骨の端って食べれるんだよ?中を吸ったら骨髄が出てきて美味しいよ?」
『えぇ……?』
『すまん引く』
『ちょっと何言ってるか分からないですね』
「――」
「えっちょっオーロラまで!?」
いや、以前武道さんに引かれてるから異端の実感はあったけどそこまで引かれるかね!?うわ、流れるコメントのどれもが否定的だ。いや、1つくらいあってもいいんじゃないかな!?
『百歩譲ってオーロラちゃんと一緒の時は良いけど配信中とか他の人と食べる時はやめなね?』
『意地汚く見えちゃうからね』
「ガチ目な説教!?分かった止めますよ!」
えぇー?そこまで言うかね……?美味しいのになぁ。しかしここは視聴者の言葉通りに従っておこう。これで炎上する可能性もあるからね。ただでさえ、男の時と比べて視聴者爆発的に増えているんだから。
『とか言いながら食べようとしない!』
「――!」
「待ってこれ無意識!」
『余計アカンじゃろがい!』
・
・
・
「さて、3缶目を飲んだ所でちょっと皆さんに相談があってね」
『金なら貸さんぞ』
『10万までならええで』
『対価によっては1000万出してもいいよ?』
「十分稼いどるわい!」
『富豪おるわ』
『1000えんまでならだいじょうぶです』
『子供なら1000円は大切にとっとけ!』
『そも子供はスパチャ出来んやろw』
アカン、このままだと話が進まなくなる!話をぶっちぎるために、チキンバーの骨が積まれた皿を撤去してラップを机に敷いて例のブツをその上に置く。それなりに重量感の音が出てしまったが特に中身が零れたりというのは無い。
『プランター?』
『植える言ってたもんな』
『はえーもう芽が出たんやね』
『ちょっと育ってんな』
コメントの通り俺が持ってきたプランターに小さいながらもしっかりとした芽が等間隔に出ていた。これだけ見れば何も疑問に思わないだろう。俺も相談なんてしなかった。
「これね、昨日植えたの」
『え?早くない?』
『普通早くても3日かかるはずなんやけど?』
『というかTwitterで報告する言ってなかったか?』
「それは単純に忘れてた!ごめん!」
『謝れて偉い』
『次は無い』
「えっ怖い――じゃなくて、やっぱり異常だよな?やっぱりエルフ補正?」
『ジョージだけで植えたの?』
「いや、オーロラも一緒だったけど」
『じゃあオーロラちゃんの影響の可能性もあるのか』
念のため、オーロラに確認してみたがオーロラも分からないらしい。でも、オーロラは自分が使える能力のことはよく分かっているみたいだし、自身に植物を育てるなんてそういう力があるなら事前に宣告しているはずだ。となるとやっぱり俺?
『植物の成長速度が上がるとなると色々便利だけど……これ配信で出して大丈夫だったの?』
「うーん、大丈夫だと思いたい、な?」
『ちなみに何植えたの?』
「大葉・ミニトマト・シシトウ・唐辛子・パクチーだね。今日食べたパクチーは元々家にあった奴だから植えた奴じゃないよ」
そう言えば何を植えたか分かるようにプランター毎に白いビニールテープに名前書いた奴を貼っていたんだった。その名札俺たち側に向けちゃ視聴者見えんわな。ほい、向けてっと。
『ふーん。ぱっと見、特に変異してるという訳は無さそうね』
「流石に市販してる種植えたからね」
『待って?ミニトマトのプランターにカメラ向けてくれない?』
「ん?分かった」
何か気になるコメントがあったので、書かれてある通りカメラにミニトマトが植えられたプランターを近づける。何に気付いたんだろ。
『よく見るとミニトマトの芽じゃないやつあるんだけど。端の方』
『うわホントだ』
『別の植えた?』
「えー?……あれ、本当だ。確かに他の芽と形が少し違う?」
もしかして、他の種を間違えてミニトマトプランターに入れた?慌てて他のプランターと見比べてみると……どの芽とも合致しない。
「え、なにこれ怖い」
『雑草じゃない?』
『その可能性はままある』
「――!」
「え?何オーロラ」
「――!」
「オーロラが植えたの!?こっそり?」
『犯人はすぐそばにいたw』
『犯人はヤス』
オーロラが言うには翠ちゃんがやって来たころ、こっそりと抜け出して種を植えていたみたいだ。なんでそんなにドヤ顔しているんだい?
「オーロラ、何植えたの?」
「――♪」
「内緒?」
『オーロラちゃんったらお茶目』
『可愛い』
「……変なものじゃないよね?」
「――!」
「悪い物じゃないって……ほんとぉ?」
『ほんとぉ』
『オーロラ姫を信じるのです』
『マジレスすれば研究所とかに送ったほうがいいと思う』
正直、こういう時のオーロラは何をしでかすか分からない恐怖があるんだよね。妖精だからそこら辺人間と感覚違うかもだし。研究所に送ることが一番正しいムーブだろう。だけど、少し気になる自分もいるのも事実。
「オーロラ、これは俺が育てた方がいいの?」
「――♪」
『めっちゃ頷くやん』
『ヘドバンかな?』
そこまで肯定されると少し引くんだけど……それほど本気なんだろう。
「分かった、これは俺が責任もって育てよう。ただし、オーロラも手伝ってよ?」
「――!」
『途中経過報告よろ』
『ヤクじゃないことを祈る!』
「おい馬鹿やめろ!」
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