宅配来る時って色々神経使うよね
「ちわーッス!木原さんお荷物のお届けです!……うん?これ宅配ボックス?見たことないくらいデカいのが2つ?……これに入れろってこと?いやぁ、クール便もあるんだけど?あ、メモがある。何々?『すぐに回収するつもりだからそのまま入れておいてください。商品が悪くなってもあなたの責任にはしません』?……まぁ?依頼主がそう言ってるし?再配達面倒だし、言う通りにさせてもらおう!よし、印鑑も押してOK!」
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玄関の外から、トラックが発進する音が聞こえ、やがてそれが聞こえなくなったところで――玄関の廊下で息を潜めていた俺は即座に行動を開始する。隣にはそんな俺がスパイめいて面白がり何故か伏せの体勢をした。
「よし、行ったな?GOGO!」
「――!」
なんてさながら死地に突入する兵士のように言っているが、結局のところは置き配を回収するだけだ。サッと玄関から出て、サッと沢山の荷物が入った2つの宅配ボックスを重ねて持ち上げ、すぐさま家に戻る。フッ、5秒もかかっていないんじゃないかな?宅配ボックスを廊下に置いたが、中々重量のある音を出したことからかなりの量が入っているみたいだ。
……にしても、あの配達員が緩い感じで助かったなぁ……クール便を置き配とか本当はダメだからね。これで断られたら武道さんに代理受け取り、それがダメなら覚悟を決めて対面で受け取るしかなかった。まぁ次回も上手くいくとは限らないからいい方法を考えなければ。
「じゃあ確認といきますか!」
「――!」
開封をしやすいように俺は宅配ボックスを持ち上げ、配信部屋に運ぶ。とは言え、開封する様子を配信するつもりはない。もし何も知らずに配信中にアダルトなものやグロテスクな物が映った日にゃBANされかねない。そんでもってネタにされかねない。ネットとはかくも恐ろしい物なのだよ。
そういう訳で、パソコンも起動させずに宅配ボックスを開ける。
「うっわ、大なり小なりいっぱいあるなぁ……」
「――♪」
今まで家に届く荷物なんて大抵俺がAmazonで注文した商品が1~4つくらいが定番なのだが、今回の荷物は20はくだらない。その中で俺が覚えのあるものは……Amazonで注文したマンガ肉と蚊取り線香みたいなソーセージと酒と炭――あとはオーロラ用の家具や服だ。それ以外は、全部が匿名の送り主。これは前配信で話題にして設定した視聴者から俺とオーロラ宛のプレゼントって奴だな。
大きかったり小さかったり、長かったり薄かったり、細かったりとみんな何送ってきたんだ?ちょっと怖いよ?かと言って、箱のまま置いておくのも気味が悪いな。一旦、マンガ肉とソーセージを冷蔵庫に入れておいてっと。おぉ、マンガ肉は新聞紙で包まれてて中身が見えないようになってるのか。これは配信の時に開けよう!
「さて、開封していくわけなんだが」
「――♪」
「そこオーロラさん、楽しみにしている所悪いんだけど、まずは俺が確認してからね?勝手に開けないでね?」
「――!?」
余程楽しみにしていたのだろう、背景に稲妻のフラッシュトーンが入りそうなほどショックな顔だ。許せ、オーロラ。いくら君が大酒飲みで味覚が人間の大人と遜色なくても、君の純粋さは子供のそれだ!グロは耐性ありそうだけどエロはアカン!俺はその聖域だけは守らなければいけないんだ!――と直接言うわけには行かないので
「人間の常識として、まず荷物は家長が確認しなきゃいけないんだよ」
「――!」
「ほら、この箱はオーロラが選んだ服だからそれ見ててな?」
「――♪」
あっさり納得した。マジかよ、チョロい。そのチョロさは俺だけに発揮してもらいたいものだ。いつかコメントに騙されるのではないだろうか……
そんなことを危惧しながらもオーロラが服の入った段ボールに夢中になっている間にまず一箱目――あー、見たことあるなー!見たことあるなーこのマッサージ器!初っ端からこんなんかよ視聴者ァ!配信していなくてよかったぁ!そしてオーロラに見せなかった俺はナイス判断。そっ閉じし予め用意していたガムテープぐるぐる巻きにして封印。
続いて少し小さめな2箱目!流石に連続して変なものが入ってるとは思いたくない!信じているぞ、視聴者!
「これは……服?」
中に入っていたのは数着の服。が、そのどれもが人間サイズではなく人形が着る様なサイズだ。ということは、これはオーロラ宛の服だね。質問配信でも【オーロラちゃんに服を送りたいんですけど、住所教えてくれませんか!?】ってのがあったしね。中身を確認してみるが、特に変なものは入っていない。それどころか1枚の手紙が入っており、そこには
『オーロラちゃんに着てほしくて自作しました!是非配信で着て見せてくれると嬉しいです!byフミマル』
だなんて書いてある。え?マジ?これ自作なの?てっきり商品かと思ったんだけど……再度確認してみたけどお金を取っても不思議じゃない程の出来だ。ありがたいけれどビックリだ。うん、これはオーロラに見せても大丈夫だな。
「オーロラ!お前宛に服が届いてるぞー!」
「――♪」
言うが早いか俺が言い切る前に凄いスピードでオーロラの服が入った段ボールにダイブした。プレゼントされたという事が嬉しいのか、届いた服を自分の体に当てて楽しそうにしている。この反応を見て「あれ?じゃあ俺オーロラの服買わなくて良かったのでは?」と過ったが、それは悪い考えだ。忘れよう。おっそうだ、いい事思いついた。
「今度のキャンプ配信でファッションショーしようなー」
「――!――♪」
その後も開封式は続いていく――
「なにこれ。俺用の服?うわ、凄いヒラヒラ。これを着るのは恥ずかしいなぁ」
「――?」
「着ない着ない!俺はファッションショーはしないからね?」
「お、日本酒の黒龍じゃん!マジか、有難く頂こう」
「――♪」
「はは、俺とオーロラお揃いのスク水かぁ、はいサヨナラーッ」
「チーかまだ、チーかま。久しく食べてないなぁ」
「――!」
「あっこらオーロラ今食べたらご飯が……食えるか」
「……俺とオーロラのイラスト?え、マジか可愛い。ファンアートって奴?……飾ろうか」
「――♪」
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結果、少なかった順番で言うと――6位同率イラスト・筋トレ道具 5位俺用の服(コスプレも含む) 4位アダルトな物 3位オーロラの服(コスプレも含む) 2位酒 そして栄えある第1位はおつまみと相成った。
4位!おい視聴者ァ!セクハラって知ってるか!?
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