第二章 - 虚実の防壁2

 カイル・オースティンは、仮想世界のセキュリティ強化に向けた新しい対策を考えるために、夜遅くまでオフィスに残っていた。

彼の目の前には複雑なコードと設計図が広がり、頭の中では数々のシナリオが交錯していた。

彼の経験と直感が示すところでは、レジスタンスは次なる攻撃をさらに巧妙に、そして致命的にしてくるだろう。


 突然、彼のデスクに置かれた電話が鳴った。

表示された名前を見て、カイルはすぐに電話を取った。


「カイル、今すぐに来て。重要なミーティングがあるの」


エミリーの緊迫した声が響いた。

カイルは資料をまとめ、オフィスを出た。


 会議室に入ると、既に何人かのセキュリティ専門家と上司が集まっていた。

全員が深刻な表情をしている。

カイルは一瞬、昨晩の攻撃が再び行われたのではないかと心配になった。


「諸君、急な召集に応じてくれてありがとう」

と上司が口を開いた。


「新たな情報が入った。レジスタンスは今度、仮想世界に直接攻撃を仕掛けようとしているらしい」


 部屋中に緊張が走った。

仮想世界に直接攻撃を仕掛けるということは、そこに住む何億人もの人々の安全が脅かされることを意味していた。


「具体的な計画はまだ不明だが、仮想世界のセキュリティプロトコルに侵入し、内部から破壊するつもりのようだ」

と上司が続けた。


 カイルは冷静に対策を考え始めた。


「まずは仮想世界へのアクセスルートを再確認し、全ての入口を再検査する必要があります。そして、新たな侵入検知システムを導入し、リアルタイムで異常を検知できるようにしましょう」

と提案した。


エミリーも同意し

「さらに、内部のユーザー行動を監視するアルゴリズムを強化し、異常な行動を即座に検出できるようにしましょう」

と補足した。


「また、仮想世界のセキュリティレイヤーを増やし、マルチファクター認証をさらに厳格化します」

とカイルは続けた。


「各レイヤーで異なる暗号化アルゴリズムを使用し、データの不正アクセスを防ぎます。さらに、AIによるセキュリティ監視を強化し、予測分析を用いて潜在的な脅威を事前に検出できるようにしましょう」


 会議は数時間に及び、具体的な対策が次々と決定された。

カイルは全ての計画を細部にわたって確認し、実行の準備を始めた。

彼は、この戦いが長期戦になることを覚悟し、全力を尽くす決意を新たにした。


 数日後、カイルは、システムの最終チェックを行った。

彼の画面には、最新のセキュリティプロトコルが次々と実装され、リアルタイムで動作している様子が映し出されていた。

彼はエミリーと共に、新しいアルゴリズムのテストを繰り返し、システムの弱点を徹底的に洗い出しては修正を加えた。


 夜が更ける頃、カイルはようやく一息ついた。オフィスの窓から見える都市の夜景は、静かながらも不気味な雰囲気を漂わせていた。

だが、彼の軍人時代に培われた生き抜く力と、母から譲り受けたこの仕事に必要な知性、実行力、献身、努力に裏打ちされた自信は微塵も揺るがない。

仮想世界にいる無数の人々の生活を守るための、次の戦いに向けての準備は既に整いつつあった。

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