第17話 王都へ


「我が街を救っていただき、大変ありがとうございます!なんとお礼を申したらいいか...!」

「隊長として、私もここに感謝の意を...」


とてつもなく異世界系でよーくありそうな展開なんですが!。


「ああ、いや、全然。皆様が無事でよかったです」


没入型仮想現実ストーリーVラノベとかだったら、やった、仲間ゲットだぜ!、ハーレムだぜ!、うははははh、俺TUEEEeeeってなるんだろうけど、でも別にスライムに転生したわけでもないから、仲間とかいらないんだよなー。


第一、銀河にかえらないと...って、あれ?帰るんだっけ?


「街の皆様は大丈夫ですか?」


「リセ殿のイリョウポッドという道具のおかげで全員無事だ。一人も死んでいない」

「未だに信じられんな...」


そう、この戦闘で、。なんかクインが医療ポッドやらメディカルナノマシンやら色々用意してくれていたおかげでリークリア兵もペルラシオ兵も街の人たちも全員助かったし、なんなら腰痛やら持病やらをナノマシンが治してくれたおかげでみんな前よりも健康になっている。


『船長、報告が』

「何?」

『これを』


クインが写したのは巨大な城郭都市のホログラムだった。その周辺に絨毯のようなものが大量にあった。


「おお!こ、これはテレスではないか!?」

「古代魔法か?」

領主さんがめっちゃ興奮しながらホログラムを見てる。まあ、ミニチュアみたいな感じだしね、ネーセルさんは呆れてるけど。

「これはホログラムといって空間にものを映す装置です。それで、テレスとは?」

「この都市は我々、ペルラシオ王国の首都、テレスだ。しかし...包囲されているのか....」


絨毯のように見えるのは全て歩兵の集まりだった。隊列を組み、テレスの城郭を囲む形で布陣している。


「レイ、これもリークリアなの?」


『はい、全てリークリア軍のようです。リークリアは450万、ペルラシオ側はテレス自体に700万人が居住しているようで、うち軍役が相当数だと思われます』


「多いねぇ」


『城郭外の制空権はリークリアが掌握しているものの、王都上空にはペルラシオの飛竜ワイバーンが飛行していることから、城郭内の制空権は維持しているようです」


ホログラム上では小っちゃなハエみたいなのがリークリア軍上空を埋め尽くしてた。全部、飛竜ワイバーンと呼ばれるドラゴンの亜種だ。正直、ドラゴンが飛んでいることに驚くべきなのだろうが、私の注意はそこにはなかった。


「なんか人も飛んでるけど...」


ワイバーンにまじって少数だが人も飛んでいた。


「これは...航空魔導師か。私も見るのは初めてだ。飛行魔法は魔力消費が激しいから長時間は使えないのだが、リークリアは何かしらの方法で解決したみたいだな」


意味わかんない。人って飛ぶものなの?


「はあ、人って飛ぶんですか?」


「かなり鍛錬が必要だが、経験を積んだものであれば飛行魔法で飛ぶことができるらしい。ワイバーンの方が高速だから航空魔導師フライング・ウィッチは歩兵の火力支援ぐらいにしか使えないが...」


ネーセルさんの手記にはワイバーンの速度についても記述があって、だいたい200km/hぐらいだそうだ。航空魔導師はそれより遅いから、きっと歩兵の発展形なんだろう。


「籠城しているみたいですけど、大丈夫なんですか?」


さっきからホログラムに熱中している領主さんに聞く。


「ああ...大丈夫ではないな、じきに食料がきれる。テレスには国王一家もいる。降伏するしかないだろうな。それまでにライハ軍が到着するかどうかだが」

「領主様、ライハからテレスまではどんなに急いでも3日はかかります。それは期待しない方がいいかと...」


リークリアが450万もの大軍を連れてきたということは、ペルラシオの同盟国のライハには軍を向かわせていない、あるいは侵攻していたとしても小規模だということか。


あれ、これ普通に私達が参戦すればチートSF兵器で解決するんじゃない?


「我々が参戦しましょうか?」



☆☆☆



「これより、テレス包囲救出の作戦会議を始めるよ!」


「おー、モグモグ...」

コフィは私が作ったドーナツ食べてるし...。


『あの、船長。もう作戦は立案していますが?』


あとなんか超高性能軍歴ありの1000歳AIさんは勝手に作戦たててるらしいし...。


「いや流石に先に作戦立てるのはナシだと思うけど...」


『AIたるものは主人の行動を予測して全て事前に行うのが基本ですから』


「じゃあ説明してよ」


たっくさん時間後...。


うん、普通にすっごかったね。もう人間なんていなくていいんじゃない...。


そりゃあ元軍用AIだったんだから凡人が勝てるわけないんだけど。


『という訳でして、まず催涙ガス及び目潰しレーザーで敵軍を無力化してから武装解除を試みます』


「敵って450万もいるんだけど...」


『まあ、なんとかなります』


いやそれをAIが言ったらだめな気がするけど。


『間もなく部隊が上空を通過します』


領主の屋敷から外に出る。空にはバカでかい飛行機が何機も飛んでいた。


『第一陣はV54、80機を持ちまして、AMS2千機、MMS1万機の地上部隊。更にそれらを現地で運搬する装甲兵員輸送車の装軌型120両に装輪型120両を加えたのが総兵力です』

「いやこんなに生産した覚えないんですけど...」


優秀なAIは主人の行動を予測するとか言っていたが、それで説明がつく話ではないんだけど。


装甲兵員輸送車は40㎜レールガン搭載の歩兵戦闘車型と100㎜レールガン搭載の砲機動車型、20㎜連装レールガン搭載の通常型の3種類だ。


無論、全て無人のタイプだ。


『テレス10kmの地点で展開後、リークリア軍の背後から攻撃を開始します』


そもそも大気圏内で戦闘が行われることは銀河史でも極稀な事例だったため、大気圏内用のミサイルや戦闘機といったもののレシピは存在しなかった。なので否が応でも地上部隊を使うしかないのだ。


「結局、私にできることほぼないじゃん....。クイン、頑張ってね」

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