脱出ゲーム【掌編】
パズル部は、とある高校にある、ただのパズルからルービックキューブ、論理パズル、果ては推理までも受け持ってしまうという変わった部活。数ヶ月前のとある事件で単純にも僕はパズルに興味を持ってしまった。
今日僕は、いつかのように高梨さんに論理パズルでも出してもらおうかと思っていたが……。
「ねえ高梨さん、高梨さん」
「何よ、漸くん。2回も呼んで」
「なんでこれに僕を呼んだわけ?」
今、僕たちがいるのは部室ではなかった。市内のとある施設の一角にある、リアル脱出ゲームに参加しているのである。
「いつも、パズルばかりでしょ。たまには謎解きもしたいじゃない」
「高梨さん、パズル使っていつも謎解いているよね……、そしてこれやっぱ僕呼ぶ必要ないよね?」
「夏休みなんだから、たまにはこんな日があってもいいでしょ」
そうではない。リアル脱出ゲームだから詳しくはいえないけれど、会話の最中で爆速で謎が解かれていっているのだ。
こればっかりは普段の高梨さんの手際からして想像できなかった僕が悪いのかもしれない。だが、あまりにも高梨さんの手際が良すぎて醍醐味がないのだ。
次から次におそらく正解であろう答えが形作られていっている。
「僕に考える隙がないよ?」
「これで、完答ね。出られるわ」
その後聞いたことだが、僕たちはどうやら最速クリアを果たしてしまったらしい。
僕は高梨さんとは二度と脱出ゲームに参加しないと心に決めた。
高梨さんはパズルでできている 及川稜夏 @ryk-kkym
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