第6話 ガビエルVSコンプレックスの塊
俺はブサイクだった。それに加えて太っていたし、臭かったし、敏感肌ですぐニキビが生えたりした。
そして今もだが、コミュニケーションもあんまり得意ではない。
必然的に嫌われた。辛かったなぁ。なんで生まれてきたんだろうとも思った。
そんな時に出会ったのが異世界転生モノの創作物だった。主人公はみんなイケメンで、『ああ、やっぱり変わらなきゃな』と思った。
その頃、異世界行きの魔法陣の作り方という本を見つけていた。異世界、行けるなら行きたい。主人公になりたい。主人公みたいにハーレムを築きたい。
だから変わろうと、もがいた。
太りやすい体質だったから摂食障害に近いぐらいの食事制限をして、激しい運動を毎日して痩せた。
匂い消しを常備して徹底的に匂いがでないようにした。
それでも敏感肌と顔のブサイクさはなんともならなかったので、お金を貯めて手術した。何回も。何回も。
これで生まれ持ったイケメンには劣る程度の顔面と、太った名残で皮が伸びきっているスタイルと、まともになった肌を手に入れたわけだ。
◇
素でイケメンなガビエルに対する怒りと共に、俺の手元には神々しい光が集まってきていた。その光は刀となった。
「宝剣コンプレックション! 強いコンプレックスを抱いた時に現れる幻の聖剣です! その効果、防御無視!」
唐突に現れてなんて都合のいい効果なんだ。ていうかどうして俺の手に……
「ほう? 我に対してコンプレックスがあるのか小僧。負け犬根性極まれりだな」
コンプレックス。そうか、ガビエルに劣等感を抱いていたのか。偽物は本物には勝てないから。
それでもいい。劣等感でエリスを襲ったやつを倒せるなら。
「……舐められたモノだ。ならば我は、聖女を人質にするしかないよなぁ!」
瞬間、俺の右頬に激痛と衝撃が走った。ガビエルにぶん殴られたのだ。
ガビエルは勢いそのままエリスさんの喉元に鋭利な指を突き立てた。エリスさんは一歩も動けずに青い表情でプルプルしている。
「正体表したな強姦魔」
「おっと、動かない方がいいぜ。動いた瞬間聖女の顔がズタズタになるからなぁ!」
余裕の笑みを浮かべながらガビエルはジリジリと後退していく。
どうする、このままではジリ貧だ。打開策は……
そうだ。こういう時、一瞬で近づける方法があるじゃあないか。大分リスクはあるがやるしかない。
俺はガビエルの顔面目掛けてドロップキックを仕掛けた。
しかし、紙一重でかわされた。でもそれは想定内。
今のでエリスとガビエルを引き剥がせることに成功したのだから。
「貴様ぁ……さっきの脅し聞いてないのかぁ!?」
「聞いてたよ。俺はただ、お前が有利になった瞬間イキリ散らかしていたその隙を突いただけだ」
勢いそのままにコンプレックションをガビエルの心臓へ突き刺した。
◇
ガビエルは大量の吐血をしながら地に伏していた。
それと同時にコンプレックションが光の粒子を撒き散らしながら消えていく……
「……最後に言い残しておくことはないか?」
「我が主人、魔王様はインキュバスの中で一番聡明なお方だ。時期に貴様らを始末しにくるだろう……」
ガビエルは吐血しながらもこう続けた。
「魔王様の理想『ブサイク以外を皆殺しにしてブサイクが、非モテが豊かに暮らせる世界を作る』を見届けれないのは残念だがな」
そう言った後、奴は事切れた。
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