第19話
祈りを捧げた後。
魔装凶器の戦闘後の破損した場所を治す復興班が登場。
その中には余り見た事の無い研究班も存在し、破壊された魔装凶器の事を入念に調べている。
その様な事態を見ながら、迎えの車が到着し、曼殊沙華ひがんはその車に乗り移動すると、学園へと戻った。
本来、平の戦女神ならば報告書の作成をした後に口頭での報告を戦士長へと行う。
しかし、曼殊沙華ひがん自体が戦士長と言う役割を持つ為にその工程を省く。
「曼殊沙華さん、戦地に出向いたらしいですね」
曼殊沙華ひがん専用の戦士長部屋に、複数の戦女神が待機している。
戦士長クラスになると、彼女が選出した部隊の編成が可能であり、曼殊沙華ひがんに選ばれた彼女たちは言わば、曼殊沙華ひがんの為に存在する専属部隊であった。
「えぇ、まさか、あんなに魔装凶器が出ると聞けば、出向かないワケにはいかないもの」
そう言いながら、曼殊沙華ひがんは、彼女達に一つ、お願いを口にした。
「申し訳ないけれど、私の後に事件に関わった戦女神が来るかも知れない、彼女達から情報を聞いた末に、状況報告書を作成していて欲しいの」
彼女の命令に、否定をする戦女神など居ない。
全員が二つ返事で了承する。
その姿を見て、曼殊沙華ひがんは頼もしい事だと感じた。
「私、先に休ませて頂くわ、事後の処理は宜しくお願いしますね?」
如何に、彼女が優秀な戦女神だとしても。
疲れ知らずとは言い難い。
机で一日中、書類とにらめっこをする事よりも、短時間でありながら命のやり取りをする戦地で仕事を全うするのとでは、時間の差に違いはあれど、疲弊感にかなりの性生じる。
無論、彼女とて例外ではない。
疲弊、焦燥、肉体に降りかかる重みを感じながら安らぎを求めていた。
戦士長部屋を後にする曼殊沙華ひがん。
優雅に歩く仕草には決して疲れなど感じない様に見える。
それが、彼女なりのやせ我慢だ。
自分が戦女神の上に立つものだと理解している。
だから、他の戦女神の模範となる様に、一時も気を抜く様な真似はしたくなかったのだ。
「あの、曼殊沙華さん」
歩く彼女の後ろから声を掛け垂れた。
その可愛らしい声に反応して、曼殊沙華ひがんは金色の長髪を揺らして後ろを振り向くと、其処には、戦場で出会い、武装人器を無くした戦女神の姿が其処にあった。
「あの時、泣いてばっかで、言えなくて…あの、私の武装人器を看取ってくれて、ありがとうございました」
彼女は頭を下げる。
深々と、彼女に感謝の気持ちを込めて、だ。
曼殊沙華ひがんは、自分は大した事はしていないと思った。
それは本心であり、自分を卑下しているワケではない。
しかし、それよりも先に、口に出して言いたい事が、曼殊沙華ひがんにあった。
彼女の視線に合わせて、ゆっくりと頭を下げる。
地面に金髪の先端が触れる程に、彼女は頭を下げていた。
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