第18話
魔装凶器、合計十六体。
戦女神、合計七体。
付属、武装人器は十五体。
今回の大量魔装凶器発生により。
戦女神、七体中三体が重傷。
武装人器は三体が破壊。
そして魔装凶器は全滅。
その内訳として。
先行していた戦女神が戦闘を開始。
魔装凶器を二体、撃破。
その後、応援としてやって来た曼殊沙華ひがんにより、残る十四体が完全破壊と言うカタチで終わった。
下手をすれば、更に被害が甚大となる筈だった。
だが、彼女の登場により、被害は最小限に収まったと言っても良いだろう。
「…」
曼殊沙華ひがんは、戦闘終了後。
他に仲間が居ないか、逃げ遅れた者が居ないかを探るよりも。
先ず最初に、限界を迎えた武装人器に向けて膝を突く。
人が振り回せる程のサイズになった一振りの剣。
刀身は罅割れていて、其処から光が溢れている。
彼女が使用した事により、武装人器はそのエインヘルヤルに耐え切れず、自壊してしまうのだ。
それを理解しているからこそ、曼殊沙華ひがんは、別れをきちんと行うのだ。
「貴方の征く道に遮りがありませんように」
「その体が楽園へと導かれますように」
「その心が永遠の幸福で満たされますように」
両手の指を重ねて祈りを捧げる。
既に人間としての命を終えた武装人器。
その器には、ただの武器として残っていない。
「は…ぁ…はぁ…」
背後から、息が絶えた声が聞こえて来た。
彼女はゆっくりと後ろを振り向くと、其処には、三人の戦女神が居た。
一人は怪我を負っていて、よく見れば、彼女は、天に召されようとする武装人器と契約した戦女神である事が分かる。
「動いたらダメ、あんたも死んじゃうよ!」
一人、彼女を連れて来た戦女神が告げる。
更に、もう一人の戦女神も頷いた。
「そうだよ、武器だから壊れるのも仕方ないって、それよりも自分を優先しなよぉ!」
二人の言葉に、それでも。
その戦女神は、壊れゆく武装人器に向かい、膝を突いて祈りを捧げる。
「それでも、私の武器だもん…ずっと、一緒に戦って来てくれた…武器なんだもん…」
大粒の涙を流しながら。
最後まで、主の為に命を尽した武器に最大限の敬意を払いながら頭を垂れる。
戦女神と武装人器の間に、他の人間には理解出来ない絆があるのだろう。
「…貴方の
戦女神に向けてそう言う。
「はい…は、ぃ…」
光が漏出し尽くした剣は、ゆっくりと血の色に似た錆へと変わっていき、最終的に、風と共に散っていった。
これが、武装人器の末路である。
それを、曼殊沙華ひがんは、悲哀の表情を浮かべながら、その魂が、救われている事を願った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます