第16話
「それでも、武器として」
彼は最後まで武器として人を守り続けた。
その気持ちを考慮した末に、曼殊沙華ひがんは彼の為に祈り、その魂を背負う事に決めた。
「貴方の誇りを、私に委ねて欲しい」
武装人器にとっての、彼女に使役されると言う選択。
即ち、死の運命を受け入れねば。
彼女の提案を受ける事は出来ない。
「は…ぁ…」
しかし、武装人器。
彼は、最後まで、武器としての役目を全うする道を選択する。
「お、ねがい…します…ど、うか…守って…」
手を伸ばす。
彼の震える手を、曼殊沙華ひがんは強く握り締める。
彼女は、ゆっくりと、その柔らかく瑞々しい、薄桜色に染まる唇を近づける。
そして、武装人器の頬に、甘く口付けをした。
武装人器としての最後を看取る、死の契約が成就する。
「死して尚も、その魂が我々と共に在ります様に」
体が崩れていく武装人器は、彼女の掌を強く握り締めながら、涙を流して笑みを浮かべる。
「ああ…死んでも、死んだ後も、俺は、あなた、たちの為に…」
意識を落とす武装人器。
生命の活動が途絶えた瞬間だ。
それでも、武装人器として役割が残っている。
彼女が武装人器に口づけをした際に、力を流し込んだのだ。
「…さようなら、〈
悲哀を抱く。
また一人、愛する者を自らの力で失っていく。
哀しみを抱くが、それでも。
彼女は戦女神として戦わなければならない。
膨大な光が、崩れかけた武装人器の肉体を包み込んだ。
彼女の、いや、戦女神が肉体に宿す、武装人器を強化させるエネルギー、〈エインヘルヤル〉によって、武装人器は最後に盛大な力を生み出す。
そして、武装人器は肉体を変化させ、彼女の望む武器へと変化する。
それは一振りの剣だったのだが、彼女の使用する武装人器はかなり巨大だ。
彼女が武装人器を使用すると、どの様なものであれ、形状が彼女の思う通りへと変化してしまう。
対・人間用に鍛錬された様な武器では無く、正しく、神話に出て来る巨人を一刀両断する為に造られたかの様な巨大な剣の人器である。
戦女神でありながら、固有の人器を持たぬ理由がそれだ。
神の領域に達する神器化した武装人器を、彼女が使えば、能力・形状を問わず、彼女の色に染められてしまう。
故に、多くの武装人器は、強制的に神器として使役されるが故に、名が総て統一されていた。
「―――〈
全身全霊の愛による重厚且つ重圧を兼ね揃えたその武器は、彼女だけは重さを感じる事無く操作する事が出来る。
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