第14話
「えぇ、とっても面白いものを見つけたわ」
くすりと笑みを浮かべる、曼殊沙華ひがん。
あの時の、ブンダーカンマーオークション会場で出会った屑鉄と呼ばれた男の顔を思い出す。
女子生徒は、彼女の女神の様な微笑みに目を奪われながら聞き返した。
「ブンダーカンマーで、買ったのですか?」
その、面白いものを購入したのか、と。
女子生徒は聞き、余程面白いものであるのならば、是非とも見て見たいと思ったのだが、曼殊沙華ひがんは残念ながら、と首を左右に振った。
「いいえ、買うのは少し、気が引けたわ」
その男の姿、武器としての形状。
それはまるで愛玩動物の様に小さく可愛らしい。
そんな男を愛でた末に、壊してしまう事を考えると、どうにも食指が働かなかったのだ。
「それ程に良い武器と言う事なのですか?」
「ふふ…何方かと言えば可愛らしい武器でした、使ってしまうと壊れてしまうので、心苦しく…」
仕方なく、購入するのは止めたと、曼殊沙華ひがんは彼の姿を思い出す。
その様な他愛の無い話をしていた時だった。
「ごめんなさい、お電話が…」
談笑の途中に、バイブ音と振動が彼女の体を擽らせた。
スカートのポケットに納めていた携帯電話を取り出す。
通話ボタンを押すと同時に耳に当てると、女性の声が聞こえてくる。
『曼殊沙華さま、宜しいですか?』
急かす様に話し出す相手に緊急性を感じ取る曼殊沙華ひがんは真剣な表情を作りながら何が起きたのか聞く。
「魔装凶器ですか?どちらまで?」
彼女は踵を返して早歩きで廊下を駆ける。
『学園近く、大広場付近で、魔装凶器が出現しました、可能であれば、ご参加のほどを…』
「問題ありません、が、しかし、その付近には戦女神が巡廻している筈では?対処出来ぬ程の存在とでも?」
『はい、現在、巡廻付近の戦女神の要請の元、五名の戦女神を派遣しましたが…それでも、足りないのです』
「足りない?」
『十六体の魔装凶器が、同時出現したのです』
元来。
魔装凶器化の現象は自然発生する。
それは誰にも止める事など出来ない。
しかし、魔装凶器化は極めて発生率の低い現象だ。
自然災害で言えば、台風が国土に上陸するくらいのもの。
そして発生すれば、災害として対処の出来ぬ台風よりも、ただ倒すと言う一点であれば、自然災害よりも御しやすいものだ。
しかし、それが十六体。
台風が一度に十六、国土に上陸した様なものである。
有り得ない状況に、曼殊沙華ひがんは目を大きく開き驚いたが、冷静さは欠ける事は無かった。
「では、すぐに向かいます」
既に、談笑の雰囲気は壊れていた。
戦女神として、勇姿気品の漂うものとして表情を作り直すと、踵を返して早歩きする。
魔装凶器との戦いこそ、彼女達の使命だった。
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