第9話 英雄になりたかった男
「おい……! おい、お前……! 大丈夫か……?」
凍えるような寒さの中、誰かに呼び起される。
「お前、この辺では見かけない顔だな……。凍死してしまってるのかと思ったぜ……」
そう言って俺に話しかけてきたのは、年の頃40才は過ぎているとみられる髭面の男。
その姿は、お世辞にも小綺麗とは言えない、薄汚れたものだった。
ひと目で浮浪者とわかる。
「あっ、いえ、大丈夫です……」
とても寒い朝だった。
ひと晩中こんな中で寝ていれば、確かに凍死していてもおかしくない気温だった。
いや、俺の場合、実際に凍死していたのかもしれない……。
おかしな言い方だが、ひと晩中、眠っていたのではなく死んでいたのかもしれない。
しかし、今日もこうして目が覚めて、一日を過ごさなければならない。
これからどうすれば、いいのだろうか……?
声をかけてきた男のことを気にするよりも、そんなことを考えていた。
その時だった。
「ヒデさん! ベンのやつも逝っちまってた……」
「そうか……」
ほかの浮浪者仲間と思われる男が、大声とともに俺が寝ていた路地裏に飛び込んできた。
「この寒さのせいでな、仲間が次々と凍え死んじまっているようでな……。お前は初めて見る顔だが、大丈夫そうでよかったな!」
『ヒデさん』と呼ばれた男は、俺にそう話しかけてきた。
どうやらこの男は、この辺りの浮浪者のリーダーのようだ。
凍えるような寒さの朝、仲間同士で安否の確認をしていたようだった。
「ベンたちは、後で丁重に弔ってやれ。それよりも、残った奴は全員集まったか? 集まったなら、さっさと仕事に行くぞ! 遅れたら、飯ももらえなくなっちまうからな!」
そう言って、彼は立ち去ろうとする。
浮浪者仲間で集まって、なにか仕事をしているのだろうか?
あるいは、浮浪者をまとめて雇ってくれている所があるのか?
そう考えていると、彼がふと足を止めて俺のほうへ振り返る。
「そうだ、お前! 新顔のようだが、これからなにか予定はあるか? あるわけないよな? それなら、俺たちと一緒に来ないか? 飯にもありつけるぞ!」
仕事と食事にありつける……。
そう言われて、とにかくこれからの身の振り方に困っていた俺は、その仕事がなにかと聞くこともなく彼について行くことにした。
「そう言えば、名前聞いていなかったな。なんて言うんだ?」
「コウです……」
俺は、またややこしくなるのが嫌で、フルネームで名乗ることは避けた。
「ほう、変わった名前だな……。まあ、これからよろしくな!」
「こちらこそよろしくお願いします……。ヒデ……さん……でしたよね?」
「ああ、みんなはそう呼ぶがな」
あんたも、変わった名前してるじゃないか……!
などと突っ込みを入れたいところだったが、その名前に疑問が生じる。
俺と同じ、日本人のような名前……
ヒデキ、ヒデオ、ヒデヤなどなど……
そんな名前が浮かんでくる。
俺と同じように、本名を隠しているのだろうか?
だがしかし、今はそんなことはどうでもいいとさえ思えた。
この男……いや、ヒデさんが声をかけてくれたことで、どこか救われた感じがしたのだった。
そんな彼に対して、不信感よりも感謝の気持ちのほうが勝っていたのだった。
ヒデさんに連れられてきたのは、街の入口付近にある衛兵舎だった。
ここでなにかするのか?
衛兵舎や武器庫の掃除とか? それとも書庫整理?
まさか、浮浪者に門番はさせないよな……?
これからなにをするのか、それが気になった。
だが、まず仕事より先に、食事を支給してもらえるようだったので、俺はその順番待ちの列に並んだ。
ひとりに一杯ずつ、スープのようなものが支給された。
そのスープの中には、緑色の雑草のようなものが一本浮いている。
具はそれだけだった……。
俺は、一口スープをすする。
味がほとんどない……。
ちょっとだけしょっぱい味はするが、お湯に少量の塩を加えただけ、といった感じだった……。
この世界のスープは、出汁とかをとるなどの手順がないのだろうか?
いや、この前宿屋で飲んだスープは、もっとコクのあるものだった。
きっと、浮浪者たちに出す飯ということで、適当な物を出しているのだろう……。
しかし、そんな粗末な物でも、なにも食べられないよりはましだった。
「さあ、お前ら! 食うもん食ったんだから、シャキシャキ働けよ!」
衛兵の一人がやって来て、大上段からの物言いで命令を出す。
あんな食事で偉そうに……。
俺は内心憤りを感じたが、それに気付いたのかヒデさんが俺を諭す。
「まあ、あんな飯で不服だろうが、ちゃんと働けば報酬ももらえるからよ。我慢しな!」
「はぁ……、それならあの食事は我慢するとして……。ちなみに、いくらもらえるんですか?」
「大銅貨5枚だ!」
彼は、誇らしそうに言う。
しかし俺はそれを聞いて、そんなに大した金額でないことに落胆する。
昨日、露店で買って食べた謎の肉の串焼きが、1本で大銅貨2枚だったはずである。
1日働いて、大銅貨5枚では、2本しか買えない。
昨日、2本食べて腹は満たされたので夕食のあてにはできそうだが、残った大銅貨1枚だけでそれ以外になにが買えるのだろうか。
前世の感覚だと、丸一日バイトして帰りにラーメン食べて帰ったら、その日の稼ぎはほとんどなくなっちゃいました、といったところだろうか。
ともかく、低賃金であるのは間違いない。
とは言え、当面の働き口もないわけで、ここまで来たのもなにかの縁だと思い、ヒデさんたちについて作業の場所へ行こうと道具を手にする。
それらは、木でできた雪かき用のスコップのような物だった。
しかしそれらを手にした瞬間、嫌なにおいが鼻をつく。
気持ちが悪くなり、吐きそうになる。
この臭いは……?
そう思ったが、俺はすぐに答えを知ることとなる。
衛兵舎のすぐ横に、地下へ降りていく階段があった。
階段を降りると、地下には通路のようなものが広がっていた。
そしてそこには、滔々と水が流れていたが、その水は激しい異臭を放っていた。
下水道だった……。
とくに衛兵舎の下には、衛兵たちのものと思われる排せつ物が山のように積もっていた。
「おえっ、ろろろろろろーーーーーー!!」
俺は先ほど飲んだ塩水……もとい、スープをすべて下水にぶちまけてしまった。
「おいおい、大丈夫か? 初めてできついかもしれないが、すぐに慣れる」
そう言って、ヒデさんたちは作業に取り掛かっていく。
俺はしばらく、その姿をぼーっと眺めることしかできなかった。
衛兵舎には、多くの兵士たちが常駐している。
当然それに伴って、用の足される量も相当なものになる。
そのため衛兵舎の下は排せつ物がたまりやすく、定期的に処理をしないと下水が詰まってしまうとのことだった。
排せつ物の処理……
前世では、昔は奴隷や著しく身分の低い者がさせられる仕事だった。
この街もどこか中世ヨーロッパの街のような雰囲気だが、暮らしている人々の考え方や価値観も同じなのかもしれない。
汚い仕事は、街の浮浪者にでもさせておけばいい……。
そんな考えなのだろう。
今、自分はそんな立場にいる……。
作業をしている途中、何度も涙が出そうになった。
途中、ふらふらになりながらもなんとか作業を終える。
環境が環境だけに、かなり長い時間作業をしていたように感じた。
しかし、これでやっと解放される。
しかも安い賃金ではあるが、夕食にありつけるくらいの金ももらえるのだ。
そう思うと妙な満足感が湧いてきた。
「さあ、賃金を支給してやる! さっさと並べ!」
相変わらず衛兵の態度は横柄である。
気に食わないが、受け取るものは受け取らなければならない。
俺は内心の憤りを押さえつつ、列に並び順番を待った。
「ほらよ!」
感謝の気持ちが微塵にも感じられない言葉とともに衛兵から投げ渡された銅貨を見ると、3枚しかなかった。
確か、ヒデさんの話では大銅貨5枚もらえるはずだったが……。
「あの……、足りないんじゃないんですか? 確か大銅貨5枚もらえるって聞いたんですが……」
「ああん? 2枚は俺らへの手数料だよ、手数料! お前らのために手間かけてやってんだから当たり前だろ!」
はあ!?
言っている意味がわからなかった。
「なんだ、お前! なんか文句あんのか!?」
俺が、「納得がいかない」といった顔をしていると、衛兵はまるでチンピラかとも思えるような口調でこちらを睨んできた。
以前の俺なら、ここで完全に怯んでしまって、なにも言えなかっただろうが、さすがに背に腹は変えられず文句を言おうとキッと衛兵を睨み返す。
すると、ますます衛兵の怒りに火を着けてしまったらしく、衛兵は腰に下げていた剣を抜き放ち、なんの躊躇もなく剣を振り下ろしてきた。
さすがにこの行為には、怯んでしまった。
たかだか金のことで、人を切ろうと言うのか……?
いくら浮浪者とはいえ、そんなに簡単に人を切ってよいものなのか……?
斬られる!
そう思った瞬間、ヒデさんが俺を庇うように間に割り込んできた。
おかげで俺の体は無事だったが、代りに彼が右肩に深手を負ってしまった。
右肩を押さえ、血をだらだらと流すヒデさん……。
しかし、衛兵はそれを悪びれようともせず、むしろ俺たちを虫でも見るかのように見下ろしてくる。
「すみませんねぇ、旦那……。こいつ、新人なんですが、俺の教育がなってなかったみたいで……。後でゆっくり言い聞かせておきますんで、許してやってくれませんか?」
「ちっ、しかたねえな! 今日のところは許してやるが、今度また同じ態度をしたら、その時こそ叩き切るからな!」
ヒデさんの弁解のおかげで、その場はなんとか治まることとなった。
しかし、俺のせいで彼は肩に大怪我を負ってしまった。
彼には申し訳ないことをしてしまった……。
仕事が終わった後も彼らと行動をともにした。
なけなしの金で食料を買い込み、彼らのねぐらに案内される。
雨露をしのぐのによい場所があると言われて連れてこられたが、まさかの下水道の中だった。
街の中でも比較的、汚水の流れてこない場所ということらしいが、それでも下水道である。
まるで、トイレの中にいるようだった……。
「みなさんここで、生活しているんですか?」
「ああ、ちょっと臭いけど、慣れれば快適なもんだぜ! あとイヌネズミに気を付けてさえいれば、危険もないしな!」
気になる動物の名前が出ってくる。
イヌネズミ…… イヌなのか? ネズミなのか?
「なんですか? そのイヌネズミって……?」
「ああ、下水道に住み着いている、ばかでけぇネズミだよ! 名前の通り、イヌくらいの大きさをしていやがる。噛みつかれたら、大怪我じゃ済まないかもしれないから、気をつけろよ!」
ヒデさんの説明を聞き、嫌な想像が頭に浮かぶ。
前世でのゲームの中で、下水道ステージに出てくる巨大ネズミたち。
ゲームの主人公たちは武器を使ってバッタバッタと簡単に薙ぎ払っていく、これまた雑魚中の雑魚である。
しかし今、俺は武器なんて持ってない……。
いや、持っていたとしても、対抗できるだろうか?
先日のダイアウルフに、襲われた時のことが思い出される。
武器を持っていても、集団で襲いかかる獣たちに命を落とした……。
ネズミといえど集団で襲われたら、同じことになるのではないだろうか。
また、それと違った別の嫌な考えも浮かんでくる。
ゲームに出てくるネズミの魔物は、往々にして毒を持っていることがよくある。
ここに住むネズミたちもこんな不衛生な場所にいるのだから、毒を持っていても不思議でない。
もし持っていたら、軽くかまれただけでも毒を受けてしまい……
なんていうことも考えられる。
しかも、毒消しなんか手に入れることもできないだろうから、毒を受けたら確実にアウトということになってしまう。
街の中にいるだけで、死の危険と隣り合わせ……。
そんな状況に、身震いする。
「それじゃ寝るときは、ネズミたちが寄ってこないように、焚火を焚いたりして寝るのですか?」
「はぁ? そんなことしてみろ、この辺に漂っているガスに引火して、大爆発起こしちまうぞ!」
獣を避けるために、焚火を焚く。
当たり前のことだと思っていたが、逆に怒られてしまった。
前世のニュースで、トイレでタバコを吸って大爆発……なんて事件を聞いたことがあったが、確かにこれだけ臭う下水道の中、メタンガスが充満していて同じことが起こる危険性もあると言えよう。
しかしそうなると、暖を取ることもできない。
雨露がしのげると言っても、街の地下にある下水道の中はひんやりとしている。
地上の路地裏よりいくらかはマシだが、それでもかなりの寒さだ。
そんな環境でも、みんなその場で横になり眠りについていく。
明かりもないし、なにもできないから、さっさと寝てしまおうってことだろう。
明かりのない暗闇の中、ヒデさんだけが起きているのがわかった。
俺は、いろいろ聞きたいこともあり、彼に話しかけた。
昼間の出来事に対する謝罪もかねてのつもりだった。
「あの、昼間はすみませんでした……。その……、俺のせいで、ケガをさせてしまって……」
「ははっ、まあ気にするな。衛兵たちに理不尽な目に合わされることなんて、今日に始まったことじゃねえ。慣れっこだ!」
「慣れっこって…… あんなことが……」
「ああ、奴らにとって、俺たちなんてその辺にいる虫みたいなもんだ。殺しったって、なんとも思わねぇだろう。」
虫みたいな扱い。
殺しても、なんとも思わない。
どんな人にでも人権がある、と教えられてきた前世の感覚からすると、とても信じられない話だった。
しかし、この話題が驚く方面に展開していく。
「俺たちのもといた世界からしてみたら、とても信じられない話だろ?」
一瞬、耳を疑ったが、俺はすぐに「やはりそうだったか」と確信した。
初めて彼の名前を聞いた時に、うすうす気付いてはいたが彼も同じだったのだ。
「もといた世界って……、やっぱり……」
「ああ、お前、もと日本人だろう? 俺もそうだ!」
この場では暗くてよく見えないが、昼間見た彼の顔はどことなくアジア系といった感じだったし、髪もやや白髪混じりではあったが黒い髪をしていた。
俺も、黒髪で典型的な日本人といった顔つきだ。
この世界は中世ヨーロッパのような世界、とあの自称女神が言っていたが、少なくともこの街で見かける人たちは金髪で彫りの深い顔の人たちが多い。
前世の、ゲルマン系の人たちに似た特徴を持っている。
そんな環境の中にいて名前も姿も、お互い異質な存在ということに、気付いてはいたのだった。
「ヒデさんは、この世界に来て、もう長いんですか?」
「ああっ……、そうだな、かれこれもう30年近くになるかな……」
「どうしてこの世界に? 30年間、ずっとこんな生活をしているんですか?」
思わず、いろいろと詮索してしまった。
さすがに、うっとうしく思われてしまったかと思ったが、暗くて彼の表情は見えない。
「長くなるけど、聞きてぇか?」
「はい、差し支えなければ……」
俺は、知りたかった。
俺のほかにも転生者がいる。
その転生者たちがどんな人たちで、なぜこの世界に転生することになったのか……。
そしてなによりも、今までどのような目にあわされてきたのか……。
あの自称女神……いや、邪神に……。
「俺は、日本のとある有名大企業に勤めるサラリーマンの長男として生まれてな。そして、『ヒデオ』と名付けられたんだ。『英雄』って書いて『ヒデオ』だ。親は俺に『英雄』のような、立派な人間にでも成って欲しかったんだろうな……。ははははっ……」
彼は、自虐的に笑う。
「だけどな、そんな期待に応えられんかったんだ……。 なにをやってもうまくできなくてな……。弟がいたんだけどよぉ、逆にそいつは出来がよくてな……、俺は、事あるごとに弟と比較されたもんだ……。そして、それが嫌で、嫌で……いつしかグレちまったんだ……」
親の期待というプレッシャー……。
正直、俺にはわからなかった。
俺の親は、どこにでもいる平凡なサラリーマンだった。
そのせいか、俺自身にも過大な期待はしていなかったようで、俺はのほほんとした人生を送ってきた。
まあ、それで逆に後悔することになったのだが……。
「学校にもいかず、かといって働きもせず、毎晩のようにバイクを乗り回していた。しかし、バチって当たるもんだよな……。ある晩、事故っちまってな、気づけば目の前に女神様が立っていたってわけだ」
「それでこの世界に……」
「ああ! お前も言われただろ? なんでも願い事を叶えて転生させてやるって」
「ええ、それでヒデさんはなにをお願いしたんですか?」
彼を見た感じ、なにか特別な能力を持っているように見えなかった。
俺は、彼がどんな願いを叶えてもらったのか、気になって仕方がなかった。
「俺は、親の願いでもあった『英雄』になりたかった。それで単純な俺は、強い武器でも持っていれば『英雄』になれると考えて、それを望んだのさ! そしたら、あの女神様は『聖剣グラム』っていうドラゴンも倒せるほど強力な剣を、俺にくれたんだ」
やはりそう言った発想は、誰でもするものか……。
俺は、自分も願いを叶えてもらった時に、真っ先に同じことを考えたのを思いだした。
「しかしな……、剣だけもらっても、この世界でやっていけるほど、甘いもんじゃなくてな……」
「なにが、ダメだったんです?」
「最初の頃は剣の能力のおかげで、連戦連勝だったぜ。この国の隣に、帝国ともう何十年も戦争を続けている、ミナーヴァ王国っていう国があるんだが、その国で大活躍だったぜ。しかし、凄かったのは俺じゃなくて剣だ……。ある日、帝国との争いの中、腕の立つ剣士とやり合うことになっちまってな、バッサリ右腕ごと切り落とされて『聖剣グラム』はそいつに奪われちまった……」
そう言って彼は、俺に自分の右腕を見せるように手袋をとる。
薄暗い中ではあるが、彼の右腕の先が木製の義手であることが、なんとなくわかった。
「剣を奪われた俺は、さして剣術に長けていたわけでもなく、ましてや右腕を失くしてしまったんだ……、役に立つわけがない……。それでまぁ、戦力外通告をされてしまってな、国に居づらくなって出ていくことになったんだ……。それまで、散々『国の英雄』だの『救世主』だの持ち上げられていたんだけどな……」
なんとも虫唾の走る話だ……。
利用できるときは散々煽てて利用して、使えなくなったら捨てる……。
どこの世界へ行っても、変わらないらしい……。
「転生する時に赤ん坊からやり直していれば親とかもいて、それを頼ることもできたのかもしれねえけど、前世で散々親に迷惑かけてきたからな……、この世界でも誰かの子供になるって気になれなくて、前世の姿のままでの転生を選らんじまったんだよ。そして、誰も頼れる者もなく、流れ流れて、この街に住み着いたってわけさ……」
「…………」
なにも言えなった。
グレて非行に走ったこと自体は、擁護できるものではないかもしれない。
しかし、親の期待というプレッシャーに押しつぶされ、相当辛い思いをしてきたみたいだ。
そんな人を死後、さらに追い打ちをかけるようにこの厳しい世界に転生をさせる。
しかも、なんでも願いを叶えると甘いことを言って、期待を持たせておいて、後でなにかしらの不幸にあうような願いの叶え方をする。
持ち上げておいて、後で陥れるといった感じだが、そんなことをすることに、いったいなんの目的があるのだろうか……?
あの邪神の真意がわからず、不気味でならなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます