第2話 Let The Adventure Begin...~冒険のはじまり〜

 ゲームは、バルモアとよばれる街から始まった。 ゲームによくある洋風の港町、といった感じだ。しかしなんといってもグラフィックがずば抜けているので、どこを見てもスクショをとりたくなる眺めであった。


 幸いそのゲームには実際に写真をとる機能がついていて、しかもとった写真をそのゲームの中のタイムラインのようなものに載せて、他のプレイヤーからいいね!やコメントなどをもらえる仕組みになっていた。これは最近のゲーム内では当たり前の機能なのかもしれないが、それまで普通の RPG やツムツム、pokemonGO やドラクエウォーク等をプレイしていた自分には驚きであった。 SNS がゲーム内にまで、、、!!



 とりあえず私はチュートリアルもほとんど飛ばしていたので何をしていいのかよく分からず、ゲームではお決まりの、頭の上に「!」マークがついている人を見つけ出し、なんとなく進めていった。


 その最中も、たくさん他のプレイヤーとすれ違った。中には自分と同じような今始めたばっかりに見える、初期服にありがちなシンプルな布の服を着てる人から、もうかなりベテランであろう、がっちりした鎧で固めた強そうなプレイヤーなどもたくさんいた。

 このゲームは、まだリリースされて2ヶ月ほどしかたっていないが、重課金や廃課金はもう私のような始めたての無課金には手の届かない世界にいるのだろうと思った。



 気がつくとどこかしらの草原に立っていて、周りにはうさぎや小さいヤギみたいな動物が動き回っていた。とても可愛かったので近づいてみると、pick up できるよみたいなアイコンがでたので、 pick up してみた。結果その小さいヤギを抱っこできて、かわいい小動物を抱っこするイケメン、これはシャッターチャンスと思った私は、ゲームの中のカメラで自撮りし、ゲーム内のタイムラインに載せた。


 そこで、私は思った。

 「 Twitterで、Patrickとしてアカウントを作ってみようか、、、?」

 ゲームの中でだけシェアなんて勿体無い。撮った写真を「端末に保存する」こともできるので、せっかくならTwitterにものせて、積極的にいろんなサーバーの人と仲良くするフレンドリーイケメンやってみよう!


 MMORPGは大抵いくつかサーバーがあり、プレイヤーが1つのサーバーに集中しないように出来ている。ゲームの中では、同じサーバーの人としか遊ぶことができないので、他のサーバーのプレイヤーにイケメン王子を知ってもらうには、Twitterの手を借りるしかない、と思いたち、私はすぐにとりかかった。



 最初にしちめんどくさいgmailアカウントを作り、Twitter に登録を開始する。

 名前はもちろん Patrick917Minerva にした。(Minerva は、自分のいるサーバーの名前である)


 次にプロフィールの写真であるが、キャラの写真にしようと思っていたけど、ここは思い切って外国人アピールするために、実際の外国人イケメンの写真を使ってどうだろうか、と思いついた。私はあまり知られてなさそうなモデル、俳優の写真をググり、自分好みのビジュアルの俳優を見つけ、窓辺に座っている上半身に濃いエフェクトをかけ、かなり実際とは違うが、それでもイケメンと十分分かる具合に加工した。念のためにその写真をGoogleのイメージ検索に落としてみたが、該当する写真はなかった。


 完璧。


 そこでふと、「これは詐欺罪にあたるのか、、、?」とよぎった。

 いや、誰かから金銭を騙し取ろうとしない限りは、大丈夫か、、、?


 私がやりたいことは、誰を騙すとかではなく(自分を偽ってるから騙すことになるのかもしれないけど)、ゲームの中だけとはいえ、今のこの自分の見た目や年齢や生活とは全く切り離された別の人物、例えばイケメン外国人になれるという事実をただ楽しみたかった。パクパクEatsをやっている時はゴキブリのように扱われる自分が、 Patrickになった時にどんな世界が待っているのか、興味があった。


 単なる逃避と言われればそれまでかもしれない。きっとそうなのだろう。目の前の問題に向き合わずに、架空の世界に逃げ出す。専門家に言わせればきっと良くない兆候なのかもしれないが、とはいえたかがゲームなので、そこまで深く考えることもないのかもしれないが。

 

 写真も決まり、プロフィールの紹介文も、「 Hello! はじめまして!日本と、日本のゲームが大好きです! 日本語少し話せます。よろしくお願いします!

 I love Japan and Japanese games. kinda new to MMORPG, let's have fun together!」と、日本語と英語を混ぜて、外国人だけど日本語オッケーな感じを演出した。


 そして検索ワードに「ファンスタ」と入れて、いろいろな人のゲームのツイートに「いいね!」をしていった。


 いろんな人のツイートを見ていくうちに気がついたのだが、このゲームは女性プレーヤーの割合が多いような感じがした。 MMORPG、というかゲームお約束のレベル上げをして戦うがメインテーマとはいえ、このゲームにはそれだけではないコンテンツも含まれているからだろうか。どうぶつの森みたいな、自分の家をたててデコレーションしたり、野菜を植えて収穫する、といった要素もあるし、何度も言うがとにかくグラフィックが綺麗で、よくあるアニメ絵ではなく、キャラも全員魅力的で、景色も綺麗、小動物もかわいい、と確かに女性が好きそうな要素はたくさんあった。これはイケメンにはもってこいである。


 私は出来立てのTwitterのページを見ながら、これから起こる(かもしれない)冒険に胸を踊らせた、、、。


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