5年が過ぎて
逢えなくなってから、もう5年が過ぎた。
それでも毎朝の出勤前の15分間。
正確な時間にかかってくる電話は、あのひとの生真面目な性格をあらわしているようだ。
コロナ禍をキッカケとしてからこの間には、本当に色々なことがあった。
わたしの方は父が亡くなり、あのひとの方ではお母様が亡くなられた。
わたしたちはお互いに両親ともに鬼籍に入り、あのひとは妹と、わたしは息子との暮らしになった。
そうしているうちに、あのひとは続くコロナ禍と不況で家業をたたむことに。
職探しから再就職。
見つけた仕事は介護職。
まったく畑違いだったから心配したけれど、性に合っていたのだろう。
3年半過ぎた今も頑張って、同時に介護福祉士の資格をとるために勉強もしている。
わたしはわたしで、目の手術やら、持病や体調不良で入院したり。
ポンコツに磨きがかかるばかりだよ。
そんなこんなで
逢えないまま5年が過ぎて、わたしたちは朝の電話とLINEで繋がっている。
あのひとは来春から作業所を移動になるようだ。上司から話があったそう。
そこはまた今よりも人手が足りてなくて、一段と忙しくなるみたい。
多分、記録は更新されるだろうな。
新幹線でないと逢えない距離。
わたしたちの関係は何なんだろうと、時々考える。
付き合いは十数年を越えた。
わたしもあのひとも歳をとった。
女性の5年は結構、大きいのだよ。
ましてや、あなたより8つ歳上なんですからね。
いつか、また、あうことはできるのだろうか。
逢えなくても、会える日はくるんだろうか。
フェードアウトなんて言葉が浮かんでは消えて。
わたしたちは朝の電話とLINEで繋がっている。
あなたが、わたしにこの電話とLINEを続ける限りは、この繋がりもこのままでいいのかもしれないと、そんなことを思ったりもしている。
寂しさとプライドの狭間で揉みくちゃに揺れたりなんかしながら。
期待することなどない、と諦観の仮面を被る。わたしはウソツキ。
馬鹿だねぇ。
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