第2話 実るほど……

 我々W会社の社員は、J会社から給与関連の仕事を請け負っている訳ですよ。

 主に、『作業系』の、手を動かす仕事ね。

 J会社の社員は何をしているのかと言えば、主に『企画・運営』だそうです。

 知らんけど(笑)

 だからまぁ、我々の仕事は主に『作業系』なのです。

 データを加工したり、必要な書類を揃えたり。

 照会応答だって、『作業系』のひとつだと思う。その多くは、どこかに書いてある事を読んでいないがための照会だからね。調べて読んで答える、みたいな。


 ところがある日、ほんとにイヤミな社員から電話で照会が入った。

 受けたのは私ではないけれど、淡々と照会に答えた彼女に、そのイヤミ社員はこう言ったのだとか。


「仕事が作業になってませんか?」


 仕事は作業だがそれがなにか?


 って返したくなる。

 彼女は丁寧にやんわりと答えて電話を終えていたけれど、それはもうご立腹でしたよ。

 まぁ当たり前だよね。

 だってそいつ、やっぱり説明書に書いてあることをまるで読みもせずに照会してきた奴だったようだし、そのうえで、教えてあげた相手にこの言葉だもの。

 言葉遣いは丁寧だったらしいけど、ちょっとねぇ……


 中途入社で、前職もそれなりの役職で、J会社でもそれなりの役職で入社してきた奴だから、もしかしたら【とりわけ丁寧に】扱ってもらえるのかと思ったのかもしれないけど、知らんわ、そんなこと。

 勘違いんすんな!

 ここじゃ、役職無しの新入社員だろうが、お偉いさんだろうが、対応は同じじゃっ!

 なんせ、あんたらにW会社社員の人事権なんて、1ミリも無いんだからな~。特別扱いなんぞ、する訳なかろうが。

(人事権あったって、こんなイヤミな奴に丁寧な対応なんて、したくないわ)


 いつの時代にもいるんだよねぇ、勘違い社員。


『実るほど頭を垂れる稲穂かな』


 という言葉を知らんのか。

 知らんのなら、今からでも胸に刻んでおきたまえ。

(人事部・給与厚生課 実務担当者からイヤミ社員に贈る言葉/笑)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

次の更新予定

2024年12月6日 08:00
2024年12月6日 08:00
2024年12月13日 08:00

はい、人事部 給与厚生課です。Part Ⅲ 平 遊 @taira_yuu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画