第3話 冒険者
カールス共和国には幾つかの大都市が存在している。大都市と言っても、別に高層ビルがあるわけではないので、俺の価値観で言うとそこまで大きな街とは言えないかもしれないが……とにかく、中核都市と呼べるだけのものが首都以外にも存在している。その1つが、俺たちがやってきたこの街「ヨムル」だ。
ヨムルは首都の次に人口が集中している街であり、その中心に存在しているのが俺たちの目指している組織の建物……カールス共和国冒険者ギルド本部が存在している。
冒険者登録にはそれほど面倒な手続きが必要ない。なぜなら、冒険者はどれだけいても困らない、ただの労働力程度にしか考えられていないから。
「では、ハヤト・ヤマモト様と、ヴィオラ・パリス様ですね。冒険者登録はこれで完了しましたので、今後はカールス共和国内の冒険者ギルドならどこでも、その冒険者カードを提示すれば活動することができますので、ご活用ください」
少しばかりの金を払い、名前を記入しすると、すぐに免許証代わりの冒険者カードを発行された。こんな雑な感じでいいのかと思うのだが、実際にこれだけの登録でカールス共和国内の冒険者ギルドならばどこでも使えるのだ。魔力の波長とか登録の照会とか……何かしらの原理があるらしいが、とにかく登録した本人が冒険者カードを提示することで簡単な身分証明になるのだ。とんでもなく便利だがこの手軽すぎる部分があって、国内での身分証明書としての信頼度はそこまで高くないらしい。
「……こんなんでいいんですか?」
「いいんだよ。そもそも、この国は来るもの拒まず去るもの追わず……どこまでも自由な国なんだからな」
「そうですか……あっちの出身としては考えられないですね」
「だろうな」
カールス共和国がかなり緩い国なのはそうなのだが、それ以上にアルブレム王国がめちゃくちゃそういうのに厳しいだけとも言える。まぁ……歴史的に周囲に敵ばかり作ってきた国だから、国内でのスパイ監視手段は多岐にわたるのだとか。戸籍もかなり厳格にされているしな。
「共和国内での冒険者ってのは、金さえ払えば何でもしてくれる連中ってイメージなんだそうな。王国が雇ってる傭兵とは違うんだよ」
「へぇ……なんか、あんまり外のことを知らなかったので文化の違いに驚きです」
「ま、これも慣れだよ」
何事も慣れてしまえば大丈夫なものだ。冒険者として活動するのだって……いきなり勇者だって言われて剣を持たされたって、人はなんとかしてしまうもんなんだ。
「それで、登録したらどうするんですか?」
「片っ端から残っているモンスター討伐依頼を受ける。修行にもなるし金稼ぎにもなる……ついでに、ギルドにいつまでも残されている不人気の依頼ってのは、結構ギルドの評価を上げやすい……らしい!」
「大丈夫ですか?」
俺だって別に冒険者として活動していたことがあるわけじゃないから、仕入れた情報しかないんだよ。基本的に、俺は自分の目で見たものしか信じない主義だから、取り敢えずは習うより慣れろで行こうと思う。
受付の前から移動して、依頼が張り出されている掲示板まで移動する。
「俺たちはさっき登録したばかりだから、冒険者ランクはGだな」
「……Gの依頼、モンスター討伐なんてありませんよ?」
いきなり壁にぶち当たってしまったな。
事前の説明で、特殊な事例以外は基本的に冒険者ランクと同じランクと、一つ下の依頼しか受けてはいけないと言われた。多分、高ランクの冒険者が下の下位ランクの依頼を片っ端から片付けてしまわないようにするための措置なんだろうけど……GランクでFランクの依頼が受けられないのはかなり厳しい。
Gランクの依頼は、街の近くにある森から薬草を採取するような簡単なお使いか、街中の店で一日だけ警備員を務めるバイト程度のものしかない。俺はてっきりGランクでもそういう依頼があると思ってたんだけど……どうやら違うらしい。
「ん……これとかが、いいかな」
「商人の護衛依頼ですか……でも、何故Gランクに?」
「隣町までだからだろ」
俺が見つけた依頼は、商人の護衛をするだけでそれなりの金が稼げる依頼。
冒険者としてギルドから信用される為に有効な依頼かと言われればそうでもないと思うが、依頼内容が簡単な割には報酬がそこそこよさそうだ。
「って……これ、移動先がアングルじゃないですか?」
アングルとは、ヨムルの隣にあるそこそこ大きな街で、特徴的なのはカールス共和国内で最も大きなカジノがある場所……つまり、俺とヴィオラが出会った場所でもある。
ここまでわざわざ歩いてやってきたのに、再びアングルに戻るってのがヴィオラには気に入らないらしいが、金が手に入るなら俺は別にどうでもいいと思っている。それに……アングルとヨムルを繋ぐ道はそれほど人の往来がめちゃくちゃ多いわけではないので、モンスターもそこそこ出る。モンスター討伐依頼がない今の状態で、依頼をこなしながらもっとも多くのモンスターと戦うことができ、経験を積めるのはこれしかないだろうなという、俺の勝手な考えだ。
「ま、取り敢えずはこの依頼を受けてみよう。護衛は片道だし、アングルに行けば面白い依頼があるかもしれないだろ?」
「そうですけど……大丈夫ですか?」
「平気平気、なんとかなるさ」
根拠はあんまりない。けどまぁ……それほど詳しくない場所で仕事をするのならば、一度でも通ったことのある道でやった方がいいだろうと思っただけだ。
少しだけ気になるとしたら、商人が運ぶ荷物とかの情報が全く載っていないことだ。普通なら割れやすい荷物を載せているからあんまり荷車を揺らして欲しくないとか、逆に硬いものしか運んでないからある程度は大丈夫とか、引火しやすい物があるから火は駄目とか、色々と伝える情報があると思うんだけど……どうなんだろうか。
「はぁ……大丈夫かなぁ」
ヴィオラの心配に同調するわけではないが……確かにちょっと不安になるような依頼ではある。こっちで色々と詳しく探りを入れるってわけにも行かないだろうし、ギルドがそういう部分はしっかりと管理していることを願って、こちらは依頼に集中することにしよう。俺たちの主目的は、ヴィオラの戦闘経験と金だし……簡単な依頼であることにそこまで不都合はないからな。
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