第8話撤退したい……空間

 日曜日も階下のリビングは騒がしかった。

 昨日は不破と校内で見かけたことのない女子が姉と騒いでいた。

 今日は見かける頻度が高いいかにも援助交際をして遊んでそうなギャルとこちらもいかにも学級委員長など集団をまとめてそうな黒髪ロングの赤縁眼鏡を掛けた女子、不破悠歌の三人が姉と騒いでいる。


「ホノ〜友達がホノと食事がしたいって言ってるのー!ホノが嫌じゃないなら、下りてきて一緒にお昼にしよー!」

 私は姉に呼ばれ、ベッドから下り、扉を開け頭だけをだし返事した。

「分かったよー、今行くー!」

 私はスマホで時刻を確認して、自室を出て階段を下り、階下のリビングに脚を踏み入れた。

 11時40分になった。

「あら穂乃実ちゃん、こんにちは。キッチン借りて、ごめんなさいね。もう少ししたら、出来上がるから待っててね!」

「こんにちは。はい……ありがとうございます」

「いいの。穂乃実ちゃんのお姉ちゃん達が無理言ってやってるだけだから。まぁ、穂乃実ちゃんと仲良くなりたいってのもあるからね……」

 赤縁の眼鏡を掛けたお堅い雰囲気を纏った女子がキッチンで何かを作っていた。

 はにかむ彼女の顔は可愛かった。

「あっ、穂乃実ちゃん〜!ありがと、来てくれてぇ〜!ここらじゃ手に入んないアイス買えてさぁ、穂乃実ちゃんもアイス食べるって聞いて食べられるように呼んだんだぁ!羽場が食事作れるから、アイスだけじゃなんだし食事もってことでこうなったんだ」

 私とキッチンで作業をしている彼女の会話を遮るように私をテレビが置かれた方から呼んで話を進めたのはギャルだった。

 ギャルは私を手招きした。

 ギャルの手招きする手の指の爪はマニキュアが塗られていた。

 彼女はオフショルダーブラウスを着ており、肩は大胆に露出しており、ブラジャーも見えた。

 私は姉と不破、ギャルが集まるソファーの前のテーブルへと歩み寄り、ふかふかなラグに脚を崩し座る。

 点いていないテレビの画面に瞳を逸らし、頬杖を突いて無言な不破に首を傾げそうになった私。

「穂乃実ちゃん穂乃実ちゃん、あのさっ——」

 私はギャルに質問攻めを受け、不破に疑問をぶつけることは叶わなかった。


 私達は羽場が作った親子丼に舌鼓をうち、平らげた。

「ぷはぁ〜食った食ったぁ!穂乃実ちゃん、羽場の親子丼は美味かったろ?勉強と家事しか取り柄の無ぇ地味っ娘委員長を褒めてやってよ!」

「しかって何よッ!エマは喧嘩っぱやいとことおじさんとヤるのが上手いのが取り柄でしかない恥晒し者の癖にッ!」

「なぁっ……私がそんな見た目通りなことやってる風に言うなよ、羽場ぁっ!私はそんな穂乃実ちゃんが嫌うような人種じゃないからねっ!親友を売って、自分だけ良い人みたく見られるようにすんなって!羽場の言葉なんて信じちゃ駄目だかんね!」

「アンタが親友?馬鹿言わないでよ、エンコーで稼いだ金で手に入れたもんにどんだけ愛着が沸くのよ!ただの腐れ縁でしかないわよ、アンタなんて!」

「羽場ァ、あんたよくもぉっ——」

 お堅い委員長とギャルが唾を飛ばし合い、胸ぐらを掴んで喧嘩を繰り広げる寸前に不破がため息を吐く。

「はぁー、今からアイス食うんでしょ?さっさと食べよ。穂乃実ちゃんの前で何見せてんの、あんたら?」

「ごめん……アイスだね、食べよ」

「悪い。あぁーっと……」


 私達はアイスを食べ出したが、沈んだ空気がリビングに漂う。


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