4-5:「火力装甲バーゲン行きますか」
血も涙もないけど。
――――――――――
「――行け行け行け行け行けッ!」
王都の中心部へ伸びる街路を、会生率いる観測遊撃隊が駆け進み行動する姿がある。
ここまで幾度も遭遇戦闘を行いながらも、それを退け。会生等は着実の王都中枢を目指す行程を進めていた。
張り上がり響いているのは、観測遊撃隊の遊撃班班長の寺院の声。
その促す声に応じ、観測遊撃隊の数名の隊員が街路に並ぶ家屋に沿って、急き駆け進む。
その最中瞬間だった。街路の進行方向向こうより何か一瞬の閃光が瞬き飛来。それは次には隊員等の真上の家屋に飛び込み、爆発のそれに等しい炸裂を上げる。
帝国軍魔導兵が寄越した雷種の魔法攻撃だ。
損壊し、降り注ぐ家屋の瓦礫破片。
それに顔を顰め、少し身を庇いつつも。寺院筆頭の隊員等は動きを止めずに駆け進み。その先にあった放置された露店や、路地裏などの遮蔽個所に飛び込んだ。
「左手上階ッ!!」
その隊員の内の誰かが、今の攻撃の所在位置を知らせる声を発し上げる。
「左手了解!!」
それに呼応したのは、街路の後方で横転した馬車にカバーしていた百甘。
援護する舟海に背中を掴まれながら、百甘は装備のM240Bを構え突き出し銃口を向け。次には引き金を引いてその得物を唸らせた。
注ぎ込まれる機関銃の火線。それは向こうの家屋の上階を叩き貫通し。その向こうに潜んでいた帝国魔導兵を、家屋の壁もろとも穴らだけにして屠られる末路を辿らせた。
「沈黙ッ!」
敵、火点の沈黙が確認され。また誰かの声が張り上がる。
他、街路の進行方向向こうの各所には。まばらに散会布陣して待ち構え、矢撃などを撃ち寄越す帝国兵の姿があったが。
「左、ワンダウンッ!」
「ダウンッ、ダウンッ!」
それも観測遊撃班の応射、攻撃によって。次に、また次にと撃ち仕留められ、間もない内にあっけなく無力化されていった。
「――次の交差路まで二手で交互前進ッ。村阿、音霧に援護を付けて高所射撃支援に上がらせろッ」
その観測遊撃隊の全体の行動が掌握できる位置で。申し訳程度に遮蔽しつつもほぼ堂々と構え、自身も10.9mm拳銃を撃ち放ちながらも、各方へ指示を飛ばすは会生。
「了ッ。音霧、聞いたなッ?」
「向かいますッ」
そしてその指示を聞くが早いか。
隊員各員は交互に援護支援を行いながら前進、駆け進み。
今に指定を受けた選抜射手の音霧に、援護の隊員等は。高所に上がり位置に着くべく、近場の家屋玄関を破り踏み入る姿を見せる。
観測遊撃班のその行程行動は、苛烈ながらも鮮やかに流れるようであった。
遭遇接敵する帝国兵を、その度に銃火銃声を上げながらことごとく排除して進み。観測遊撃隊はさほどかからずに次のポイント、五つの主要街路が集まる大きな交差路広場にたどり着く。
そのすぐ向こうには目指す目標施設である、王都の中枢。聳え立つエーティルフィ王城が見えた。
「味方のRCVだッ、行け行けッ!」
観測遊撃隊が交差路にたどり着き、踏み込んだのとほぼ同時。
側方別方から合流する街路より、第12戦闘団 偵察隊の87式偵察警戒車(以降87RCV)に、軽装甲機動車が。随伴の隊員数名を伴い現れた。
ちょうどの合流を見止めるや否や、観測遊撃隊の内の寺院を筆頭とする数名は、迷わずに向こうの各車を目指し駆け。
次にはそれの随伴隊員等の援護、迎え入れを受けながら。87RCVや軽装甲機動車の胴体側面に遮蔽するべく駆け込み張り付いた。
「――ッ」
87RCVの主砲たる25mm機関砲が唸りを上げたのは瞬間直後。
撃ち放たれた機関砲火は、交差路広場の反対向こうの角に位置していた教会施設のような建物を。その窓より連弩を数機据え付け突き出して待ち構えていた、帝国軍陣地と化していたそこを。
しかし何の躊躇も容赦も無しに、注ぎ叩き込んだ機関砲火で浚え吹き飛ばした。
煙、埃を巻き上げる教会からは、次には燻り出された帝国兵達が転がるように飛び出てくる。その体を傷つけられながらも、その帝国兵達は必至の抵抗の気配を見せかけたが。
それは直後には87RCVや軽装甲機動車のカバーより、観測遊撃班と第12戦闘団の隊員各員の任意射撃に晒され。
合わせて先程に高所に配置させた、選抜射手の音霧からの高所支援射撃も襲い。
人間から、亜人獣人竜人などが混在して見えたその帝国兵達は。しかし一切の区別なく、撃ち仕留められ地面に沈む末路を辿った。
状況はさらに留まることなく動き。
交差路のまた反対別方からは、第1水陸機動戦闘団のAAV7が現れ乗り込んで来て。次には開き降ろしたランプ扉から搭乗分隊が降車。
各個の射撃行動にて散らばる帝国兵を撃ち仕留め屠りながら。AAV7からの火力支援を受けつつ、交差路広場に散会展開していく。
極めつけには交差路の上空低空に傲岸不遜の姿で、第1戦闘ヘリコプター隊のAH-64Dが飛来。
ホバリングから、その腹に備える30mmチェーンガンと、ハイドラ70ロケットの火力投射を惜しげも無く吐き出し。
また交差路角にあった、何かの商店施設のような建物を。その内に潜み奇襲の機会を伺っていた帝国軍部隊を、しかし建物ごと吹き飛ばし粉微塵にして見せた。
「正面ッ、配置しろッ!」
そんな目まぐるしく状況光景が動く交差路の中を。
会生は観測遊撃隊の遊撃班の数名を伴い、その中を堂々までの姿で割って駆け抜ける。
そして交差路広場の向こう奥側に辿り着き。丁度一旦離脱して飛び去る、今のAH-64Dを傍目に見ながら、近辺の建物等に散会して飛び込みカバー。
その位置から向こうに伸びる、幅を太く取るがしかし長くは無い主要街路の奥に。エーティルフィ城の荘厳な正面城門を見た。
「見えた」
「そこそこ固めてます。見るに配置は一個小隊規模」
交差路角の建物にカバーし、観察観測の視線を回して零す会生。
その会生の背後隣にカバーし位置取った舟海が、向こうを覗きつつ。同時進行で器用に自分のM870MCSにシェルを装填しながら、伝える言葉を紡ぐ。
正面城門はその大きな門が固く閉ざされ。そして併設される砦塔や、さらに構築されたバリケードなどによって一種の砦のようになっていた。
そしてざっと見るに、少なくとも一個小隊程度の敵部隊が配置しているだろうことが推測でき。
今もすでに、据えられた連弩や重弩などの矢撃が少なからず飛び来て、近くを掠めていく。
「インターホンはどこだろうなァ?」
会生と舟海より前方。帝国軍のものであったバリケードを利用して遮蔽する調映が。
また向こうを、バリケードに置き据えて構えた、64式7.62mm狙撃銃のスコープ越しに観察しつつ。そんな皮肉気な台詞を寄越す。
「――探す手間は無い。丁度、マスターキーが来た」
それに、一拍置いた後に会生が返したのはそんな言葉。
それとほぼ同時に聞こえ届いたのは――鉄をリズムを取って鳴らす音に。唸るような、内燃機関の発動の唸り。
その音源は後方、ここまで会生等が通って来た街路の方向。
その直後には、その街路上にまた当然のように敷設され伸びていた線路軌道を辿って。牧歌的な建造物の並ぶ光景を、塗り潰し換えるまでの傲岸たる様相で割りながら。
鋼鉄の要塞――他ならぬ《ひのもと》がその姿を登場させた。
「長呉、要請を送れ。城を訪ねるのに贈り物がいると」
《ひのもと》の姿、到着を見止めた会生は。間髪入れずに近くに居た、通信手の長呉に指示の言葉を向ける。
「了――ヴァルヴ1よりランナウェイ・ガン。こちらは正面敵陣地を破り、玄関を‶抉じ開ける〟火力を必要としている――」
それを受け。長呉は背負い装備する通信機を用いて、《ひのもと》への呼びかけ要請の言葉を紡ぎ飛ばし始める。
《ヴァルブ2へ、了解した。今より投射する――》
それに、通信により返り来たのは《ひのもと》からの端的な了解の声。
その間に、《ひのもと》は交差路広場のど真ん中にまで徐行速度で進めてきて。正面に連結する、現在の編成中で特に重鈍で長大な図体の70式直接火力車を前に押し出し、金属を引っかくブレーキ音を響かせて重鈍な様相で停車。
70式の前に連結する長物車の上の土嚢銃座からは、援護牽制のためにM240Bが機銃銃火を唸らせ始めている。
その援護を受けつつ、70式直接火力車はその主砲塔を旋回させて射角を微調整する動きを見せ。
そして直後――主砲たる90㎜高射砲M1を、間髪入れずに何の躊躇も無く撃ち放ち唸らせた。
咆哮が響き。
砲撃は一瞬後には、城門に作り付けられる砦塔に直撃、爆炎で包み。中の帝国兵ごと吹き飛ばして、倒壊沈黙させた。
それの確認もそこそこに、70式直接火力車はまた主砲塔を旋回微調整。次に照準に収めるは、固く閉ざされる正面城門の扉。
そして直後に上がる、再びの砲撃の咆哮。
撃ち放ち、叩き込まれた砲撃投射が。今度は正面城門扉のど真ん中に叩き込まれ、炸裂し爆炎を上げ見せた。
「渾身のノックだな。王城相手としては、礼儀も何も無ェが」
向こうには、バリケードなどに籠っていた帝国兵がいくらか燻り出され。少なからずの混乱に巻かれる様子が見える。
そんな光景をスコープに覗き見つつ、皮肉一杯の言葉を零すは調映。
「今、内に居構えているのは家主でなく居直り強盗だ。遠慮容赦は無用だ」
それに返されるは会生からの。帝国軍をそう表現する痛烈な言葉と合わせての、促す旨。
そんなやり取りの間にも、この場の戦闘状況はさらに動く。
――――――――――
内臓ありますか?(物理)
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