第5話 幼馴染と再び歩み出す



リュカは戦いが終わり

二人で休んでいるときに

エリナにふと疑問を投げかけた。



「エリナ

俺のスキル……


『エクリプス・ノヴァ』って

怖くなかったか?


闇の力だし

普通の人間なら……」




リュカは少し心配そうに

エリナの顔を見つめた。



自分のスキルは

これまでに多くの人々から恐れられてきた。




エリナも同じように感じたのではないか

という不安があった。





しかし

エリナは優しく微笑んで首を横に振った。





「確かに

『闇魔法』だって分かったわ



でも私はむしろ

リュカが私を守ってくれる

温かい感じがしたのよ」




その言葉にリュカは驚き

そしてホッとした表情を見せた。



リュカの中で

重くのしかかっていた不安が

少しだけ軽くなった。





「……ありがとう、エリナ



そう言ってくれて

本当に救われたよ」




エリナの言葉に安堵しながら

リュカはため息をつき

彼女にこれまでのことを話し始めた。





「実はさ……俺

そのスキルのせいで追放されたんだ


勇者パーティに入ってたんだけど

みんな俺のスキルを怖がって

仲間だって思われなくなって……



結局

王国の人たちも俺を疑い始めて

追放されてしまったんだ」




リュカは遠くを見つめながら

胸の内をさらけ出した。



これまで誰にも話せなかった自分の苦しみを

エリナにだけは打ち明けられる気がした。





「そんなことが……」


エリナは驚き

そして悲しそうにリュカを見つめた。



「リュカ

あなたはいつもみんなのために

戦ってきたのに……


その気持ちが

伝わらなかったなんて……」




リュカは少し笑いながら肩をすくめた。



「俺もこんなに

誤解されるなんて思ってなかった


でも

エリナがそう感じてくれただけで

今は十分だよ」




エリナはその言葉に頷き

リュカの肩に手を置いた。





「リュカ

あなたは変わらず勇者よ


『闇魔法』が何だろうと

私はそれを知ってる


だから

もう一度自信を持って進んでいきましょう」






リュカはその言葉に励まされ

エリナの温かさを感じながら

再び自分の道を信じる力を取り戻していった。






リュカは少し微笑みを浮かべながら

エリナに言った。





「俺は故郷のアステリア王国に戻ってきたんだ


エリナに会えて安心したよ」




しかし

エリナはその言葉に反応することなく

悲しそうな顔をしていた。





「リュカ……アステリア王国はもう……」




リュカはエリナの言葉に戸惑い

表情がこわばる。





「どういう意味だ

エリナ?」




エリナは深いため息をつき

ゆっくりと話し始めた。





「アステリア王国は……魔王の滅光騎士団めっこうきしだんによって滅ぼされてしまったの


つい最近のことよ


先ほどのあの男

ゼファーもその騎士団の一員


彼らは王国を襲撃し

破壊の限りを尽くしたわ



みんな

ほとんどの人たちは命からがら

他の王国に逃げ込めたけど……」




リュカはその言葉に目を見開いた。



「そんな……!」




エリナは続ける。



「でも

生贄として捕まった人たちがいたの


私は今

その人たちを助けていたのよ」




リュカはその事実を聞いて

衝撃で体が震えた。



「アステリア王国が……滅ぼされた……だって……」




リュカの胸の中に

絶望と怒りが混ざり合い

深い感情が渦巻いた。



故郷が滅ぼされていたなんて

想像もしていなかった。



自分が守りたいと思っていた場所が

すでに破壊されてしまったなんて。





「……そんなことが……」





エリナは静かに頷いた。


「まだ希望はあるわ

生き延びた人たちが他の王国に逃げ込んでいるし


私たちが助け出すべき人々もまだいるの

ただ……」


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