第6話 sometime(6)

「は? 浩斗くんと?」



結局。



キャパオーバーになった志藤はゆうこに相談してしまった。



「スカイツリーのとこの水族館だって、」



ひなたは風呂上がりの麦茶を飲みほした。



「やっぱりな~~~、おれはまだ早いんやないかって思うねんけど。 ホラ、今まだみんなでワイワイやる方が楽しい年頃やん?」



志藤は二人だけのデートに持っていきたくない気持ちが優先してしまい



性に合わない真面目なコメントしかできなかった。




「でもさー。 もうなんか強引なんだもん。 いいよな? とか言っちゃって。 ま、でもスカイツリーのとこの水族館まだ行ったことないし・・ちょっと行ってみたい気もするけどー、」



ひなたは浩斗と二人、ということよりも水族館に少し興味が惹かれているようだった。



ゆうこは双方の意見を聞いた後



「え、別に・・いいんじゃない? 行ってくれば?」



あっさりとそう言った。




「えっ!」



志藤はそれに異常に反応してしまった。



「別にー。 浩斗くんだし。 そんなに深く考えなくても、」



ゆうこにはまだまだ浩斗は幼稚園のころのまんまのイメージが拭えていなかった。



「アホ!! 男なんかなあ、中2になったら何考えてっかわからへんねんで!! 今までとおんなじみたいにホイホイくっついてったら何されるかわからへんやろ!!」



志藤は思わず激しい『本音』を口にしてしまった。



「え、なにされるって、なによ、」



ひなたに思いっきり突っ込まれてしまった。



「ひなたはなあ、男が全くわかってへん! 思春期の男の頭の中なんかもう爆弾より危ないんやからな!!」



「もー。 一人で興奮して、」



ゆうこはあきれてしまった。



「結局。 浩斗くんはひなたのことを女の子として好きってことなんじゃない? ひなたはどう思うの?」



ゆうこは同性らしく落ち着いて浩斗の気持ちも考えてそう言った。



「それが。 困っちゃうんだよねー。 浩斗といると楽しいけど。 裕香がね、この前からテニス部の先輩とつきあうようになったんだけど。 もう朝も帰りも一緒に歩いてるんだよー。 昼休みも! なんかね、もうあたしたちのことなんか眼中ないってゆーか。 あたしは男の子のことそんな風に夢中になれるのかなって・・すっごく不思議、」



ひなたは正直な気持ちを言った。



「それじゃあ・・ちゃんと浩斗くんにそう言ってあげたほうがいいと思う。 なんだか気を持たせるのもかわいそう。」



「そうかあ。 んじゃあ、とりあえず水族館は行くことにするよ、」



よくわからない妥協案でデートには行くことにした。




リビングのドアの外で



ななみは3人の話をじっと聞いてしまった。



胸が痛くて。



言いようもなく悲しかった。

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