第4話 sometime(4)

別に


つきあってるとかじゃないし



ひなたはお風呂につかりながら



妹のななみのことを思う。



ななみは浩斗が好きみたいだけど



あたしはただ一緒にいると楽しいって感じだけで。



つきあうったって



どうしていいかわかんない。



『ふたりで行きたいんだよ、』




あんなこと言われてドキっとした。



心臓がちょっときゅーっとなった。



う~~~ん



浴槽のヘリに突っ伏して思わずうなってしまった。



風呂上がりに脱衣所の洗面所で髪を拭いているといきなりドアが開いた。



「わっ、ごめん!!」



慌てて閉まったが、それが父親であることはすぐにわかった。



「え? なに? お風呂? もういいよ、」



ひなたが顔を出すと、洗面所の外で待っていた志藤が



「手を洗おうと思ったんやけど。 髪、乾かすんやろ? あとでいいよ、」



と遠慮した。



「別に、入ってくればいいのに。」



つったって。



一応年頃の娘なんやから遠慮するやろ・・




志藤はひなたのこの無警戒さが時に心配になるほどだった。



もう中2になるというのに、そういう恥じらいがひとつもない。



夏には風呂上がりにバスタオルを一枚巻いただけで平気で出てくる。



まだ弟たちは小さいから大して何も思わないようだが、一応大人の男の自分の前でもそれなので



いくら父親とはいえこっちがどぎまぎしてしまう。




ひなたは長い髪をドライヤーで乾かし始め、志藤はその横で手を洗った。



「なんかさあ・・」



ドライヤーの音でひなたの声がよく聞こえなかったので



「あ?」



手を洗いながら聞き返した。



ひなたはドライヤーを切って



「・・浩斗に。 二人で水族館行こうって言われちゃった、」



ぽつりと言った。



志藤はゆっくりと顔を上げた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る