第1100話 *メビ* 一翼
まさかね、と思ったらそのまさかだったよ。
タカトの凄いところは運のよさ。そして、その運を見逃さないことだ。
あたしたち姉妹もそうだけど、出会ってすぐなのに、その人の能力を見抜いている。
ラダリオンねーちゃんを初めに、カインゼルのじーちゃん、ミリエルねーちゃんと、能力と才能の塊でしかない者を引き込んでいる。
確かに能力と才能の塊とは言え、ラダリオンねーちゃんは大食らい。カインゼルのじーちゃんは浮浪者、ミリエルねーちゃんなんて両脚がなかった。
普通、助ける? 仲間にしようと思う? 足手まといだと見捨てるのが当たり前だ。あたしだったら確実に見捨ててるよ。
でも、タカトは見捨てなかった。仲間にして救った。皆の人生を幸福に変えたのだ。
あたしら姉妹も同じだ。獣以下家畜以下と人間に見下された存在なのに、タカトは、いや、タカト他ちは救ってくれ、温かい家と食事を与えてくれた。
「獣人の身体能力、スゲーと思ったから仲間にした」
ってタカトは言ってた。
なんとも単純な理由だな、とか思ったけど、タカトの側にいるだけで生活は一変した。
隠れて住む必要はなく、獣以下家畜以下と見られることはない。タカトが勢力を拡大するに連れ、ニャーダ族の地位は上がり、女神の尖兵やらタカトの牙とか言われるようになった。
ねーちゃんなんて一部隊を率いるほど。タカトの一翼とされているよ。
あたしはねーちゃんみたいに頭はよくない。でも、タカトから絶対の信頼を受けている。それがあたしの誇りと言っていいくらいだ。
タカトからの絶対の信頼を受けるならあたしはタカトに恥じぬ者にならなくちゃならない。タカトが望むように動かなくちゃならない。タカトが動くと優秀なヤツがいることが多いからな、それを見逃さないようにする。
「あたしが運がいいのか、マニルスさんが運がいいのか、女神が動いているのかと錯覚するね」
タカトはあまり口にしないが、女神を嫌っている。本人は隠しているつもりでも舌打ちや奥歯を噛んでいるときがある。というか、一度たりとも女神に感謝している姿を見たことがない。自分の運のなさを呪ってばかりだったよ。
……あたしたちからしたら女神には感謝しかないけどね。タカトがこの世界にきてくれたお陰で今の幸せがあるんだからね……。
「神はあまり信じないが、助けてもらった恩は返させてもらう。必要ならわたしの名を自由に使ってくれて構わない。ただ、生き残った民を救って欲しい」
「それはタカトに言って。あたしはタカトの力になる者を一人でも多く助けるからさ」
あたしにはその辺のところはわからない。ただ、タカトの力になれる者は一人でも助けてタカトの元に届けるだけだ。
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