第58話 蛇は祭りの報酬を受け取る
その後も挑戦を繰り返したユーラリングだが、イベントページから確認したポイントが1000を超えた所で一度ポイントを捧げてみる……もとい、イベント報酬を確認してみることにした。
情報が行き渡ったお陰かそれともどこかの熟練“魔王”が独走しているせいか、現在オベリスクは上から1/3程が白く染まっている。総交換ポイント数が(最初の離脱ブーストも含め)どれぐらいかは分からないが、そろそろ交換しないと無くなってしまうかも知れない。
という訳でオベリスクの近くで専用ウィンドウを開いたユーラリング。さて何があるのか、と目を通していくと、
「………………」
最低は100から10ポイント刻みで交換可能なアイテムが並び、最大は500まで。300以下は特殊エリア内で手に入る素材やアイテムの内難易度の高いもので、そこから400までは例の謎アイテムが並び、それ以上がイベント限定の装備やアクセサリだった。
ユーラリング(の中の人は)心の中で「やっっっっっぱり後で絶対に必要になるパターンだこれ!!!」と床ドンして叫んでいたのだが、アバターの表情には若干虚無がよぎった程度に抑え込んだ。
さてそれはともかく、とイベント限定の装備とアクセサリの性能を見るユーラリング。性能としては上々、耐久度も高く、属性や状態異常の追加効果が付く効果があるらしい。普通に優秀な装備である。
「……イベント限定の特殊効果は無し、か」
全身を同じ枕詞の装備で揃える事で発動するセット効果の詳細(『魔神の祝福』:魔神陣営全体貢献度取得率上昇)まで確認し、ぼそっと呟くユーラリング。やはり鍵となるのはあの謎アイテムの方のようだ、と判断したらしい。
となると、と、ユーラリングは装備類を無視して、300から400ポイントの部分を念入りに見始めた。度重なる挑戦で、どの「歴史」でどう動けばどんな謎アイテムが手に入るか、大体その傾向は読めている。
だから、その法則から外れたアイテムがあれば、それはポイントでしか交換できないという事になる。……そして大抵、そういうものを見逃せば、失敗はしなくとも手痛い苦戦を強いられることになる。と、ユーラリング(の中の人)は経験則で知っていた。
「……この辺りだな」
やがてユーラリングが目星をつけたのは「不思議な型枠」と「珍しい鉱石」だった。それぞれ380ポイントと330ポイントだ。……交換候補から外れやすいポイント数であるあたり、実に姑息。とか思っていたりした。
交換数制限は3個ずつ。これはほかの謎アイテムも同じだ。とりあえず「不思議な型枠」を1個と「珍しい鉱石」2個を選択して交換するユーラリング。
ついでオベリスクに視線を戻すと……微妙に、本当に微妙に、白い範囲が増えた……気もしない事も無い。つまり、ほとんど変化はなかった。
「まぁある程度とはいえ、数千人単位の参加者に行き渡ることが前提なのだから、これくらいでは変わらないか」
この短時間に変化があったという事の方が驚きなのだと思い直した。何せ相手は廃人を超えた廃神様だ。比較する方が間違いというものだろう。
それはそれとして、とユーラリングは切り替え、目星をつけたアイテムを手に入れる為、再度「お宝探し」に挑戦に向かったのだった。
で。
〈はーい! そっこまでーっ!!〉
ちょうど特殊エリアからユーラリングが出てきたところで、使徒のそんな声が響いた。ポイントがたまり次第交換していた為、無事目標としていた謎アイテムは3個ずつ交換してある。
その後は手に入りにくい順に謎アイテムを交換していたユーラリング。セット効果はともかく、性能だけでいえば自分で作った方が明らかに高い為、装備はスルーだ。
〈オベリスクの力が使い切られましたーっ! ので、「お宝探しゲーム」はここで終了! しゅーりょーでーす!! たくさんのご参加、ありがとうございましたーっ! また明日のイベントにー、こうご期待くださーいっ!!〉
「端数を交換しそこねたか……」
そんな声と共に、砂が風に吹かれるように真っ白になったオベリスクは消えていった。それを見送ったユーラリングは、とりあえず一旦所属同盟の待機スペースへと戻る。
そこには既にサタニスが陣取っていて、実につやつやとしたイイ顔でウィンドウを眺めていた。ユーラリングはその近く、というか、最初と変わらない位置に座る。
「リングちゃん、おかえりなさーい♡ あー楽しかった!」
「それは何よりだ。こちらも、目を付けたものは手に入れられた」
「あら、良かったわね。私はね、ふふ、ポイント交換リスト、コンプリートよ!」
「……流石だな」
交換回数無限の物を1回とカウントしても、万単位でポイントが必要だった筈だが、と思うユーラリング。けどまぁこの“魔王”ならやるか。とすぐ自己完結したが。
ユーラリングも手に入ったものの確認を始める。謎アイテムのリストはコンプリート、その他普通の素材系アイテムや道具系アイテムもかなりの数を確保できた。生産職人としてはほくほくである。
問題は苗木や種をどこで育てるかだが、『ダンジョン』の設定を確認すると『天候』や『気候・地質』などのオプションが追加されていたので、恐らく10階作成時点で、地上階と一緒に追加されていたのだろう。
「けど、不思議なのよねぇ。あの大きな機械とか、持ち出せないことはなさそうだったけど、どうすれば持ち出せたのかしら? 巨人系の『配下』でも連れてくれば、まぁ不可能ではないけれど」
「重量無効化ポーションを使えば良いのでは?」
「……あぁ! そういえばそんなのもあったわね。マイナーだから思い出せなかったわ。となると、ちょっと勿体ないことをしたかしら?」
「さぁな。が、まぁ特段あの空間由来でなければならない物は無かっただろう。作ろうと思えば、構造さえ分かっていれば戻ってからでも作れると思うが」
「それもそうね。何だったら普通のオークションを覗くか依頼を出せばいいのだし」
ユーラリングがウィンドウを操作しながら答えた回答に、サタニスは満足したようだった。……その依頼がこっちに来なければいいんだが。流石に面倒そうだし。と心の中で呟くユーラリング(の中の人)。
なお、そのマイナーと言われた重量無効化ポーションを常用しなければ動けない状態のユーラリングは、当然、工業用だな? というサイズの施設染みた生産道具等も一つ残らず持ち帰ってきていたりした。
それどころか、持ち出せない一点物ですら設計図を写し取ったり完成までにパーツをくすねていたりしている。ユーラリングなら組み立てに問題もない。そして、どうしてそこまでやるのか、という理由は……まぁ、いつもの貧乏性だ。
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