第13話 舞台は暗転す
……あの舞台から一ヶ月……
やらかしたなと私は思う。
監督もモデルの事務所も怒り沸騰! それはあんな事するとそうなるのは理解できる……
それでも、耐えてた演者はそのやり過ぎたことに喜んでたようだ。
「んで、私達は飛ばされたと」
先生はニマリと笑い、続きを口にしてくれた。
私は苦笑いをうかべている。
一番無茶した私は、何もいえない……な。
そう、私達、あすか、ムツ、志村、先生の四人はやりすぎた門でクビとなりました笑笑
特に、あの無能モデルが強く主張したせいらしい……仕方ないよね……
けど、おもしろかった……私が足を押さえたままムツと私がはけるまで、止まった舞台は、あわてて、再開して。グダグダだたらしい。
あいつ、受けそこねて叩かれてるし。
「予定のうちだろ」
ムツはニマリと笑う。
今はムツが所属する教室のほうで集まっている暇人四人組。
「そうすね」
扇風機にキャンディをほおばる志村は年以上に幼く見えていて笑える。
これは先生の差し入れだけど、ありがたい。
「痛快だ、はははは、ぐっ! いてて!」
ムツが脇腹を押さえた。
「どうしたんすか?」
志村が尋ねると、ムツは困った笑みを浮かべた。
「いやな。実はなこいつの裏拳が……」
私は目を背けた。
必殺の
「あれ、当たってたんすか!!」
そう、怒りのあまり、カウンター気味にいいのが入って……肋骨にめり込んだ感じ…… だって寸止めできなかったし……ちぃたんが悪い……
「殺陣にはケガはつきもんだけど……こいつの
脇差で受け止めたように見せていただけで、受け止めてない。吹き飛んだ後で見ていたのだ。
「ちいたん……ぜんぶやりすぎ……」
先生が口にする……
「ちいたん、いうな」
いちおうの決め台詞を口にする。
それだけの力を込めたからこそ、舞台は見事に大失敗できたわけだ。
つまり、私たちの殺陣がうますぎてぐちゃぐちゃになってしまったとさ。
私がした素手の戦闘演技は『技斗』という別の技術だけど。
しかも、日本の技斗よりも、中国拳法のアクションをおもに組みたてているから。また厳密にはちがう。
日本の技斗では、なかなか素手武術のアクション演技では達人を演じにくい。
まぁ、よくよく考えれば素手で殴り合う状況って、不良同士の抗争とか、ごろつきが警察に制圧されるかという話になる。もしくは、ライダーみたいな感じだしね。
侍のムツ相手にごろつき素手よりは華やかに見えるように拳法をもってきた
「まぁ、こいつのダンスのキレとか見てると、蹴り技が映えそうな気がしたんだよ」
ムツがニヤリとキャンディの棒をグルリと回す。
「なるほどね……私はちぃたんは武器に振り回されてるのわかっていたからね」
先生の言葉に私は納得する。
たしかに志村は元々居合がある。そこを中心に仕立てて短い殺陣をさせれば華になるだろう。
けど、私は……いつものダンスとの違いに引きずられていた武器に……
私はその意味に、なんとなく理解する。
左右のバランスを取る時、右手の短剣のわずかな重さでズレてしまう。それが、演技の違和感の正体。
「だから、素手の方がやりやすいと思ったんだ」
と、ムツキャンディの棒をグルリと回して決める。
「香港で仲良くしてた八卦掌と、アクション監督も引き受けてくれてた上手くいった」
ムツはいろいろと私の事を考えてくれたんだ。少しウルリときてしまう。
とうぶん、私も八卦掌や技斗をもっと、これから勉強しようかなと私は決意する。
「おかげで、あすかはおもしろいくなってたな」
苦笑するムツ。私は視線をあわててそらしてしまう。
それは、 出してきた原作漫画に新しい登場人物が生まれていた。
原作にでてきた新しい登場人物は色鮮やかなアラジンにでてきそうな踊り子衣装と惜しげなくヘソと美脚をさらす……あすかに似たキャラクターが足を上げてた、カンフーポーズをとっていた。
……『カンフーダンサー・ちぃたん』と紹介されていた……
「な、なんじゃこれ! ちぃたん! ちぃたん!じゃないか!!」
「これはひどいっす……」
先生は爆笑して、志村は同情してくれていた。うんありがとう……まだその態度はすくわれる。
「ちぃたんが、オタクの世界にも広がるな……」
と笑いを噛み殺すムツ……こいつはいつもこんな事を。
私の本音は戸惑っていた……ちいたんが全国的に広がる羞恥心を感じてい るけど……………ちぃたんは別として私をモデルにしたキャラクターが生まれてることに歓喜もある。
「それがお前の力なんだ……あがいた果ての成果だ。良かったなちぃたん」
先生が口にする……何も生みださずにあがいた私のやっと……できた結果。
少し、涙ぐむ。
気まずいのがわかるけど、ボロボロと涙がこぼれてしまう。
つい、袖で涙を拭おうとしているのに止まらない……嬉しくて……やっと、私は認められたと………
雰囲気を変えようと、ムツが口をひらく。
「そういう、志村は聞いたぞ」
よっぽど、私の涙がいたたまれなかったみたい……だった。
急な話題転換も気を使わせたな……けど、 わたしのしらない話かな?
はっとして、志村は頭を掻いて一つの結果を表してくれる。
「あっ、それすか! 舞台の「武蔵」の佐々木小次郎役に内定す……」
とたんんに皆目を丸くしていた。
なるほど、長い刀を扱える役者なんてそうはいないし、適役かも。
「けど……絶世の美形剣士……か?」
私はため息をつくと、志村は頬を膨らませた。
「顔すっか? 背すっか?」
なんて 反応していた。
「顔も背もかな?」
私が正直に口にすると。
「ちぃたん……」
足を踏みだすと、志村はムツの後ろに隠れた。
ずるい男だ。
「まぁまぁ、志村も整えれば顔はなんとかなるだろ………背も厚底を、いや下駄か……侍は高下駄?」
「それは動けなくなるっす」
などと志村は突っ込んでいた。
四人で楽しく話して聞いたが、ここまでだ。
「じゃあ、行くかな」
ムツが立ち上がる。
そう、彼はこれから、日本からアメリカに向かうのだ。
「まさか、お前がハリウッドとはね」
先生が口にすると、ムツはニヤリと笑む。
その姿は威風を感じる。
「まぁ、ちょい役だけどな……向こうで侍やってくるさ」
などとムツはめちゃ楽しそうだ。
舞台を潰す提案しても彼は先があったわけだ。
あの、有名な海外俳優にやられたり、背景でおおーとか言う程度だろうけど……
「映画で見てみると、探しにくいと思うけど楽しみしてるからね」
私は皮肉をきかせて私はムツに激励していた。
「おう! 前以上に吹き飛んでやるよ」
また、皮肉に返してくれる。
けど、私は殺陣や技斗、拳法とか出会わせてくれた彼に感謝してる。
ムツは扉をくくる。私達はまた集うのはそうはないかもしれないけど……私は……またやりたいな。
「私もさ。ムツ……もっと、ちゃんとやるから……また、一緒にやろう! そして、ありがとう!!」
私は今までの自分を認めさせてくれたこの世界に感謝してる。
そうして、私達は別々の道に向かい。また演じていく。背景でやられ役や、たまに小さなちょい役をやり、ダンスを踊り、竹光や蹴りを振るうだろう。
私達はまた、きっと、どこかの舞台で交差する。
その時を楽しみにして、また、舞台で会いましょう。皆さん
私は踊る そして、舞台は暗転す 七月七日(なつきネコ) @natukineko
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