1-3章 花子、ランクアップ試験への道!
第18話 クラスメイトと新たな出会い
都内で起きた大規模ダンジョンハザード以降、校舎の修理や点検のために休校になっていた高校がいよいよ今日から始まるっ。
あれから一か月は経たないまでも二週間以上は軽く経っているから、まるで長期休みの後に登校するみたいな感じだ。夏休みほどではないけど、冬とか春休みぐらいの長さはあったからね!
とはいえ、気分的には休み期間以上の時間が経ったように感じる。
何だか制服に袖を通すのもちょっと新鮮で久しぶりな気分になる。
まあ、この休み中に色々あったからなぁ~~……
まずダンジョンハザードで避難して、家に戻ってからすぐにやった配信でゴブリンキングと遭遇して戦う羽目になったり。そういえばあの時にMさんと出会ったんだよね。今でもたまに連絡を取り合っているけど、やっぱりAランクシーカーだけあってかなり忙しくしているようだ。あ、あとあの剣が聖剣だって判明したのも同じだったっけ。
それから聖剣の鞘を探しに行く配信では、思わず隠し通路を発見して今度はトレントに遭遇したり。権藤局長や私と同じ聖剣を持ちSランクシーカーでもある佐久間さんとも知り合った。面倒な連中とも関わったりしたけど……うん。アイツ等はどうでもいいや。
そしてついこの間の配信では、秋冬さんという新人配信者のトップに立つような人達に出会ったりもした。二人からは色々学ばせてもらったし、なんと配信の後はご飯まで奢ってくれたすごく優しい人達だった!
一言では言い表せないぐらいには沢山の出来事があって、かなり濃密な時間を過ごしたからそう感じるのかもしれないねぇ……
と、そんな感慨に耽ってばかりもいられないっ。
今日から高校が再開するんだからちゃんと気を引き締めないとっ!
「そういえばちゃんと課題は終わらせたんでしょうね?」
「ちゃんとコツコツ進めたよっ。昨日のうちに終わらせてるから大丈夫っ!」
「そう? それならいいんだけど。久しぶりだからって忘れ物しないようにしなさいね」
「は~い!」
お母さんと定番のやり取りをしつつ、朝の身支度をそそくさと済ませて家を出る。
家から少し離れると私と同じ方向に向かう同じ制服を着た人たちがちらほら見え始める。言わずもがな同じ学校の同級生だ。
ん?先輩は同級生とは呼ばないか。ちなみにまだ一年生なので後輩ちゃんはいない。
通学路を歩いていると、突然後ろから肩をポンッと叩かれる。
誰かは想像つくけど、この感覚も久しぶりに感じるなぁ。
「おはよう、小花っ!」
「おはよう、さっちゃん! 久しぶり~!」
「小花が配信とかで忙しかったから確かに久しぶりだね~。折角の休みだからもっと遊びたかったのにー……」
「ごめんごめんっ。なんか色々調子が出てきちゃって~」
「ちゃんと見てるよ~? 小花のチャンネルまた登録者増えてたよね! ついこの間10人を超えたかと思ったら、もう1,000人超えでしょ! ほんとっ、小花はどんどん人気になっていくね~!」
「そ、そんな大げさだよ~。この前なんて秋冬さんって凄い配信者の人とコラボさせてもらったんだけど、やっぱり自分とは違うところが多すぎて学ぶところ沢山って感じだったし」
「そっか~。やっぱり配信者も大変なんだね~」
「ねぇさっちゃん。何か、誰かに見られてるような感じがするんだけど……?」
「やっぱりこの前のコラボが効いたんじゃない? ほら、秋冬さんの二人って今大注目の配信者さんでしょ? そんな人たちとコラボしたんだから、小花の知名度も一気に上がったんじゃない?」
「そ、それって変装とかした方がいい感じかなっ!? やっぱり家出るときにサングラスしてくれば良かった……!」
「それはやり過ぎ」
「あれ~?」
確かに秋冬さんとのコラボから一気にチャンネル登録も増えたし、学校の人たちに知られてもおかしくないか……
別に秘密にしてた訳でもないけど、いざ身近な人たちに知られるってなるとちょっと恥ずかしいかもっ!
学校に到着すると一部が真新しくなった校舎が出迎えてくれた。汚れなのか何なのか明らかにそこだけ色が違うから、あそこが壊れて直ったところなんだなとすぐに分かった。それを見て通いなれた校舎のはずなのに、また新鮮な気分になってくる。
別のクラスのさっちゃんとは教室の前で分かれて、私は自分のクラスの教室に入る。すると一瞬だけ入ってきた私に視線が集まった気がしたけど、すぐに各々の会話に戻っていった。
やっぱり有名人の仲間入りって考えるのは早すぎたかな……?
なんてほっとする気持ち半分、残念な気持ち半分で自分の席に荷物を下ろす。
それから少しすると、私の席に近づいてくる人影が視界の端に入った。
「ねぇ、ちょっといい?」
「ん?」
声の主の方に顔を向けると、三人の女生徒が私を見下ろしていた。
三人一緒にいる姿をよく見かける確か中学からの同級生らしき三人組だったはず。あんまり話したこと無いから詳しくは知らないけど何の用事なんだろう……?
なんか妙に真面目な顔をしてるからこっちも自然と背筋が伸びてしまう。
「えっと、な、何か用……?」
「ちょっと聞きたい事があるんだけど――これってもしかして、宮内さんだったりする?」
「っ!!」
そういって差し出されたスマホの画面に映っていたのは、間違いなく配信中の私の姿だった。多分、この前の秋冬さんとコラボ配信したときのやつだと思う。
私を取り囲み顔を近づけて声を潜めて聞いて来るもんだから謎の緊張感が走る。
「……た、確かに私だよ。少し前からダンジョン配信やってるの」
「やっぱり……!」
別に隠す事でも無かった(ちょっぴり知られたいって気持ちもあった)ので、正直に答える。
すると、一瞬前までいやに真面目な表情を作っていた三人の顔が破顔し途端に目を輝かせ始めたっ!?
「じ、実は私ダンジョン配信を見るのが大好きなのっ! それで最近は秋さんと冬子さんの二人を追ってたんだけど――そしたらこの前急に見知った顔が配信に出てきてっびっくり! まさかこんな身近に配信者さんがいるなんて思ってもみなかった!」
「え、えっと、えっと……!?」
「ああ、いきなりでごめんなさいっ!! 驚かせたよねっ!? とにかくこれから応援するから!ってのを伝えたかったのと――実は宮内さんにお願いがあって……」
「お、お願い?」
「そうなのっ! 実は……あ、秋冬さんの、さ、サインって貰えたりするかなっ!?」
どんなお願いが来るのかと身構えていると、出てきたのは随分とミーハーな感じのお願いだった。
「う~ん、近々会う予定とかは無かったからすぐにっていうのは難しい、かも?」
「そ、そうだよね~。やっぱり今の忘れてっ! 変なお願いしちゃってごめんね? 宮内さんの配信これからも応援してるから、頑張ってね!」
そう言うと三人組は特に盛り下がった様子も無く自分たちの席に戻っていった。あの様子を見る限りサインについてはあんまり期待してなかった感じかな……?
というか――危なかった~……!
あんまり喋らない三人だったから、名前が全然出てこなくて焦った~!?
確かいかにも三人セットが似合うなって感じの名前だった気がするんだけど……思い出せない。後でこっそり名簿を見て確認しておこう。多分名前を見れば思い出せるはずっ。
それにしても、クラスにも私の配信を知ってる人がいたなんて……
配信を始めた当初はそんな妄想したりしたけど、まさかそれが本当になるなんて少し前には考えもしなかった。
何というかやっとここまでこれたかっ!という達成感を覚える。学校再開早々にこんな嬉しいことが起きるなんて幸先が良いスタートだ!
ただ、それ以降は誰に話しかけられる訳でもなく淡々と授業だったりがあって時間が経っていった。
課題を提出して一安心したり、休みになってしまった分を夏休みのどこかで補修するという話を聞いてテンションを下げたり。そんな感じで時間はあっという間に放課後になった。
さっちゃんはこの後、部活のミーティングがあるそうなので一人で帰ることにする。帰り道、何の気なしに真っすぐ家に帰るのではなく街をぷらぷらしながらのんびり帰っていたときのことだった。
スマホに一件の通知が入って来る。
「これって……!」
それは新たなダンジョンの出現を知らせる管理局アプリからの通知だった。
「場所は――ここから近い。推定難度も最低クラスか……行ってみよっかな」
アプリで位置を確認した私は、ここから数分で着く距離にあるそこに向かって歩き出した。
装備はスマホの中に入ってるから大丈夫っ。まあ実際に入るかどうかは行ってみてから決めよう。
「二型ダンジョンだから早めに壊しておかないと。この距離なら私が一番乗りだと思うけど、他に来てる人いるかな?」
そんな事を考えながらアプリが示す場所に向かっていくと、人気の少ない路地裏にポツンとダンジョンの入り口があった。
「やっぱりまだ誰も来てないか。最低難度ならいけると思うけど、装備以外の準備はしてきてないしな〜……うーん、どうするか」
ダンジョンを前にしてそんな風に悩んでいるとーー
「あの」
「えっ!?」
「あ、ごめんなさい。驚かせるつもりは無かったんですけど……」
「い、いえいえ。こっちこそ過剰に驚いてごめんなさい……」
「いえいえ――あ、それよりももしかしてあなたもシーカーですか? このダンジョンを攻略する感じでしょうか?」
「あ、はい。シーカーです。さっきのアプリの通知を見て来たんですけど〜、ちょっと悩んでたところなんです。装備はあるけど、ちょっと準備がな〜って」
「そうだったんですね。実は私もさっきの通知を見て来たはいいんですけど、一人で入るのはちょっと不安で……あの! もし良かったらですけど、一緒にこのダンジョン攻略しませんかっ! 二人なら何かあった時にサポートできるだろうし!」
「た、確かにそれもありですね。うーん…………よしっ!やりますっ!」
即席でパーティーを組むのは少し心配ではあるものの、二人で行った方が安全なのは確かに言われた通りだ。
それに何となく、あの子からは危ない雰囲気とかは感じないから大丈夫だと思うし。
「ありがとうございますっ! 私、二型ダンジョンの攻略は始めなんです。それで――あ、自己紹介がまだでしたね。私、楠木舞っていいます!」
「私は――宮内小花です〜! こちらこそよろしくお願いします!」
今回は配信はしないので、本名の方で挨拶を返した。
こうして唐突ではあるものの、即席パーティーを組んでのダンジョン攻略が始まるのだった。
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お待たせしました! 更新します!
今回から新章開幕ということでいきなり新しいキャラクターが複数登場しました。彼女たちが今後小花とどう絡んでいくのかお楽しみに!
また今回即席で組んだパーティーですが、楠木舞は何者なのでしょうか……?
(二型ダンジョンについては次回きちんと説明します!)
という感じで、また次回の更新をお楽しみに!!
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(また総PVが10,000を突破しました! ありがとうございます!)
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