第10話 仲の悪い?2人と
「さて。少し寄り道をしてしまったが話を戻そうか」
「は、はい。お願いしますぅ」
思わぬハプニング?があったけど、何とか乗り切った……
「それでまあ聖剣についての認識はそのうち嫌でも分かるだろうから今はちょっと強くて珍しい剣ぐらいの認識で構わない。それに聖剣を持っていることを公表するかどうかについても宮内くんに任せる」
「何か言い方が怖いんですけど……と、取り合えず聖剣については暫くの間は隠しておくつもりです」
「えぇ~、でも今更じゃない? 巷じゃ聖剣女子高生なんて呼ばれてるんでしょ? そこらの有象無象はともかく、見る人が見ればあの剣が普通じゃないってことぐらいすぐに気付くわよ? それに配信者をやってるんなら話題作りとかもした方がいいじゃない?」
「それはそうなんですけど、今のところはそれ以上に大変なことの方が多そうなので~。せめてB級以上にならないと、安心して周りには言えないです」
「ふ~ん、そんなもんかしらね?」
「宮内くんが自分で決めたことなんだから私達が口出しすることじゃないだろ。佐久間の言うことは気にしないとして……いくつか聞きたいことがあるんだ。まず君が持っているスキルについてなんだが――」
私が唯一持っているスキル。その名も――『勇者体質』。
持っているどころか、口にするのも人に見られるのも恥ずかしい字面の厄介なスキル……
私がこのスキルを持っていることを知ったのは、ちょうど
それでシーカーへの登録を終えた後、そのまま自分のスキルを調べてもらって――そうして判明したのがあのスキルだった。
私がこのスキルを隠す理由はいくつかある。
まず第一に、名前がダサい。というかイタい。
何が勇者だ、こっちはそれで喜ぶような年でも少年でもないんだよ!!と当時は内心全力でツッコんでいた。だからといって結果が変わる訳じゃなかったけど。あの時、私のシーカー登録を担当してくれた職員のお兄さんの何とも言えない表情……未だに記憶に残っている。
そして第二に――これがかなり致命的なんだけど、このスキルを持っているせいで私は他のあらゆるスキルを身に着けることが出来ないのだ。
シーカーにとってスキルは、ダンジョンを探索しモンスターと戦う上で必須の技能。これがあるからこそ人間がモンスターという怪物と戦えるといっても過言じゃない。
このスキルはそんなシーカーにとって大切なスキルの習得を妨害してくる、それはもう!厄介なスキルなのだ!!
ちなみにスキルにもアイテム鑑定とした時と同じように、その能力を現わした文章が現れる。これが『勇者体質』のスキルに説明として書かれていたことだった。
――――――――――――――――――――
スキル:勇者体質
その者、最も勇者らしくあれ。※他スキルの習得制限
――――――――――――――――――――
……もうね。ふざけるなと。そう叫びたい気分でしたわ。
そのくせ超強力な効果でもあるのか?と言えばそんなこと全く無くて。気持ち身体が軽く感じるかな~?という本当に効果が出ているのかただのプラシーボなのか分からない程度だった。
「――ふむ。勇者に聖剣とは確かにお似合いではあるな。スキルと聖剣が何かしら呼び合った可能性というのも無くはないか」
「何で剣はよくて他のスキルはダメなのか、私には皆目見当が付きません……」
「私もそれなりに長いことシーカーやってるけど、小花ちゃんのみたいなスキルは初めて見たわ~。妙ちくりんなスキルを持っているのは何人か知ってるけど、こんなに具体的なようで抽象的な感じじゃなかったわね」
「あの、私のスキルって本当に聖剣と関係あるんですか? 佐久間さんも他の人も別にこんなの無くても聖剣を見つけたんですよね?」
「まあそうね。でも小花ちゃんの聖剣ってけっこう特殊でしょ?」
「それって、剣の銘が~っていう話ですか?」
「そうそう。私が持ってるのはこれ――聖剣『羽々斬』っていうの」
そう言って佐久間さんが取り出したのは一本の刀だった。
私のと違って黄金に光っていたりとか派手派手しさは無いけど、でも何でだろう。向こうの剣の方がより厳かというか静謐な雰囲気を纏っているように感じる……
「羽々斬は簡単に説明すると風を使った攻撃が出来るっていう特殊能力がついてるわ。で、そういう部分は多少抽象的だったとしてもアイテム鑑定すればきちんと分かるものなのよ。でも小花ちゃんの聖剣は違う。銘も無ければ、聖剣が共通して持つモンスターへの特攻以外に特筆すべき能力も無い。しかも他のどの聖剣と比べても感じられる力は弱いし、でも私から見ても間違いなくあれは聖剣に見えた。ほんと不思議よね~。私もこんなこと初めてよ!」
「そ、そうなんですか? 私からすればあれでも十分に強いと思うんですけど」
「いやいや、本来の聖剣ってもっとヤバいわよっ! 私もちょっと前に使ったとき、ダンジョンの中にあった森を丸禿にしちゃったし」
「も、森を!?!?」
「色々と事情があったにしても、あれは間違いなくやり過ぎだったがな。お陰でその後の対応でどれだけこっちが苦労したことか……」
「ああいう時ぐらい管理局が役に立たないとね。それに責任はあのアホ局長にいったんだから別にいいじゃないっ」
「あのアホだから苦労したんだ。本当にいなくなってくれて清々する……」
そういえばニュースで管理局の偉い人が辞めたとか言ってたっけ。てことは権藤局長は最近なった新しい局長ってことなのか。それにしては威厳というかそれ相応の迫力みたいなのがもう感じられるけど……
「――と、すまんな。関係無い話をしてしまった。まあともかく、やはり現状だと分かることは少ないな。だが宮内くんと話せてよかった。君なら聖剣を持っていたとしても、悪用することは無いと確信することが出来たからな!」
「そ、そんなことないですよぉ~!」
「さて少し長くなってしまったが――最後にもう一つだけお願いをしてもいいだろうか?」
「あ、はい。なんでしょうか?」
「宮内くんが持つ最も古く、そして新しいというその聖剣の力――ぜひとも見せて貰えないだろうか?」
「力を見せるって……どうやってですか?」
「もちろん――模擬戦だっ!!」
権藤局長が勢いよく椅子から立ち上がって着ていたスーツの上着をバッと脱ぐ。
「え、え!? もしかして権藤局長とってことですか!?」
「その通りだ! 安心してくれ。局長なんて管理職になったが身体の鍛錬は怠っていない。さすがに全盛期と比べるといくらか鈍っているだろうが、元A級シーカーとして責任を持って相手を務めよう!」
「うそA級!?――ていうかまだ私、模擬戦をするなんて言ってな――」
「ちょっとちょっと~。そこは私の出番なんじゃないの~? 聖剣を使う者同士でしか分からないこともあるだろうし、わざわざこうして出向いてるんだから譲りなさいよ?」
「馬鹿め。お前は手加減を知らんだろうが。宮内くんの相手を務めさせるわけにはいかんなっ。せいぜい見学で我慢しろ」
「へぇ~、じゃあまずは私の手加減が下手かどうか確かめてからでもいいんじゃないの? その身体で試してあげましょうか?」
というかこの2人最初からそうだったけど相性悪すぎじゃないか!? ことあるごとに喧嘩してない!?
――いやいやそれよりも! まずは2人を止めてそれから模擬戦は断る方向で! だってモンスターはともかく対人戦って苦手なんだもん!?
「ちょ、ちょっと待ってください!!!!!」
「「っ!」」
「まず、私は模擬戦っていうか対人戦が苦手なのでちょっと遠慮したいです!! あと2人とも喧嘩し過ぎなので、いい加減にしてください!!」
「「す、すまない(ごめんなさい)……」」
「し、しかし聖剣の能力は直に確認しておきたいし――――そうだっ! だったら宮内くんが全力の一撃を放ってこっちがそれを受け止めるというのはどうだ? 模擬戦というより最大火力の確認といった感じで!」
「そ、それなら、まあ……あ、でも!誰かに向かって攻撃するのはちょっと……」
「ぐむっ――あまり無理を言うものでもないか。分かった。適当な的を用意するからそれに攻撃してくれればいい」
「それなら大丈夫ですっ!」
「よし決まりだっ!それじゃあ訓練場に「ちょっと私は普通に小花ちゃんと戦ってみたいんですけど~?」――いい加減にしろっ!! 大の大人がみっともない! お前には的作りを任せるからそれで我慢しろっ!!」
「ちょっ!? アンタにだけは言われたくないんですけど!?――ま、まあでも仕方ないわね。ここで小花ちゃんに嫌われたくもないし。でも気が向いたらいつでも相手になるから連絡ちょうだいね?」
「あはは……」
適当に笑って誤魔化したけど、これってもしかしていつか佐久間さんと模擬戦しなくちゃだめな奴かな……?
しかもその後ろで期待したような目でこっちを見ている権藤局長とも、佐久間さんと模擬戦するんだったらやらなくちゃだめな感じ?
……未来の私、頑張れっ!!
若干憂鬱な気分になりながら管理局本部にある訓練場という施設に移動することになった。そこは普段はシーカーのランクアップ試験とかで使用される場所らしく、相当頑丈に作られているんだとか。
もし私がB級以上のシーカーを目指すのであれば、ここの訓練場は必ず一度は使うことになるらしく権藤局長は「下見にもなって一石二鳥だな!」とか言っていた。
まあ今の私のランクは一番下のE級なのでまだまだ先になるんだけどね。
そうしてやって来た訓練場は、誰も使用していないらしく広々とした空間のみがぽつんとあった。天井もかなり高くて大きな立方体の中にいるみたいな場所だ。
「それじゃあ佐久間、頼むぞ」
「はいはい。それじゃあっと――」
訓練場について早々、佐久間さんが私が使う的の準備に取り掛かる。
どうやって作るのか?と疑問に思っていたのも束の間、少し離れた場所に突然一枚の壁が出現した。
「わ、わぁ!? い、今のは!?」
「私の得意魔法よ。そこそこ魔力を込めたから、そうねぇ……前の配信でゴブリンキングを倒したような一撃でも完全に破壊は出来ないはずよ」
「そ、そんなに硬いんですか!?」
「まあまあそんな事よりも、早くやって見せて! ずっと楽しみにしてたんだから!」
厚みはそんなに無いように見えるのにゴブリンキングよりも堅いって相当じゃないかっ!?――なんて衝撃を受け入れる暇も無く、早速と言わんばかりに模擬戦(相手は壁)が始まろうとしていた。
あんなことを聞かされたんじゃ壊せる気が全然湧いてこないんだけど……もうこの際当たって砕けろの気持ちだっ!! 今日の色々で溜まった鬱憤をここで全部吐き出してやるぅ!!
「何か、小花ちゃん妙に迫力があるわね……」
「うむ……」
端末を使っていつもダンジョンを探索しているときの装備を身に着ける。
そして未だに鞘が見つかっていないため抜き身の状態の聖剣を背中から引き抜き、壁を正面に見据えてそれを構える。
もうこの聖剣を使い始めて暫く――とは言わないまでも、そこそこの時間が経った。
その中でいくつか分かったことがある。
権藤局長や佐久間さんにも話したことだけど、例えばこの剣はただ無意識に使っているだけだとそこまでの力を発揮しない。逆にいえば意識して使うことで力を引き出せるということでもある。
だから聖剣を握りながら「力出てこい~~!」と念を送る。
するとこれまでと同じように黄金の光が聖剣から出てきてそれが全身へと広がっていく。
「あれが……」
「私の羽々斬とはやっぱり違う。あの聖剣特有の力に関係があるのかしら……?」
今回は私のやる気が高いからなのか、ゴブリンキングの時よりも身体に纏う黄金の光が多いというか分厚くなっているような気がする。
そして私は、ここで一つ試してみようと思ったことがあった。
それはやはりあのゴブリンキングとの戦いで、アイツが使っていた飛ぶ斬撃――あれが私にも出来ないものかとずっと考えていたのだ。もしあれが使えるなら次に控えているトレントとの戦いでも必殺、とは言わないまでも有効な技になるはずだからだ。
でも勿論と言ったら恥ずかしいけど、あれがどうなっているのか技術も理論も分からないのだっ! だからここは気合でどうにかしてみる!
ダメで元々。出来なかったら普通に近づいて斬りに行けばいいんだから!
別に失敗したって私が恥をかくだけで死にはしないんだしっ!!
「はぁぁぁ…………!」
その場で聖剣を大きく上段に振りかぶる。
そして盛大に気合いを入れて聖剣を振り下ろしたっ。
「おりゃぁっっ!!!」
すると、振り下ろした聖剣が通った場所で黄金の光が軌跡として残り、それが凄い勢いで正面の壁に向かって飛んで行った。
そして――
ドガァァァァァッン!!!
凄い轟音と共に、ゴブリンキング以上と言われた岩の壁が粉々に砕け散ったのである。
「で、出来たぁ~……」
そうして私は飛ぶ斬撃の習得に成功したのであった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
大変遅くなってしまし申し訳ありませんでしたっ!<m(__)m>
そんな感じでダンジョン管理局側そして越界者側のトップ陣と小花との交流のお話でした。管理局でのお話はこれで終わりで、次回はいよいよトレントに挑んで行こうと思います!
という訳でまた次回の更新をお楽しみにっ!!
また読んでみて面白かった、続きが読みたいと思ってくださったら★評価やいいね、また感想を送って下さると嬉しいです! よろしくお願いしますっ!!
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