第六話 白 霞は扉を閉ざし、應 俰は扉を叩く事。
「
大川は
扉は固く閉ざされている。
「
大川は、ドン、と扉を拳で叩く。
「私は傷つきました。女に自分から口づけしたのも初めてなら、女に逃げられたのも初めてです。」
(
遊んだ
「私は
(今度こそ、ためらわない。我慢しない。私は欲しいものを手にいれる。)
「
扉越しに、
「嘘よっ、日本に恋した女がいるって言ってたじゃない!」
と、
「私もそう思っていました。でも、違いました。
私が愛しているのは、日本にいる女じゃない。
恋に落ちたのです。ここを開けてください。」
「恋人のフリはもうけっこう! 人助けをしてくださって、ありがとうございます。お芝居はおしまいよ。」
「お芝居じゃない。本心です。愛しています!」
「あたしは年をとりました。容貌も衰えました!」
「そんなことはない。あなたは美しい。」
「前に男がいました。すでに夫を持ったことのある身です。」
「関係ない。もう離婚なさったんでしょう? 私は今のあなたが愛おしい。」
扉越しの
「あなたは、ご自分がどんなに魅力的かご存知ないのです。
あたしには、あなたに愛されるほどの魅力はありません。」
(ああ、またこの顔のせいだ。)
「この顔に生まれてきて、良かったと思ったことは一度もない!
女がみな、いやらしい顔で見てくるんだ、この顔のせいで……。
自分が思っているより、ずっと、遥かに!
そうでなかったら、女嫌いの私が恋に落ちるものか!
私はあなたの口づけを恋い焦がれている。
この扉を開けて、私を愛してると言ってください。
私に口づけをもう一度ください。」
返答に間があいた。
「あなたは遣唐使です。日本にお帰りになるんでしょう?」
大川は慎重になる。
(その事については、今ではなく、あとで話したい。)
「……その事については、ゆっくり話させてください。ここを開けて。」
遠慮がちに、ゆっくり、部屋の扉が開いた。
「
大川はすばやく部屋にはいり、扉を閉めた。
「ありがとう。」
大川は
柔らかい唇を唇でふさぎ、
(あふれる想いを伝えたい。)
舌をいれてみる。
おずおずと舌をいれてみると、濡れた可愛い歯にであった。歯の間に舌をもぐりこませると、遠慮がちに
溶け合う。
大川より
大川の舌は戸惑い、慎重に動く。
気持ちよさで大川の頭の芯がしびれ、ぼうっとした心地になる。
唇を離し、抱きしめた
(お願い。)
「私を愛してると言ってください。」
これで、
* * *
優しく不慣れな
(こんなに胸がドキドキするなんて。)
「さあ、言ってください。」
「
(わあ、なんて魅力的な笑顔なの。)
ばふっ、と
「抱きたい。
「えっ、えええ……!」
「せ、性急では……。」
「あなたが欲しい。お願い。ダメ?」
(ひぃぃ……。)
そんな顔を見せられては、何も考えられなくなる。流されてしまっている自覚はあるが、この蜜のような甘え顔をされて、断れる女がこの世にどれくらいいるであろうか? すくなくとも、
「ダメではありません……。」
困ったように言うと、嬉しそうに笑った
口づけは、頬、首筋、胸元におりてゆく。
そのまま人差し指で、陌腹(胸帯)を下に、つる、とおろした。
ぷるん、と勢いよく弾みながら、
(ひええええ……。)
大川は愛おしそうに胸の丸みをひとなでしてから、柔らかい左胸に顔をうめ、夢中で口づけをはじめた。
大きな左手は、
「あっ……。」
気持ちよさが、ちり、と痺れるように甘く、両胸の先端から背中のうしろまで抜ける。
「は。あ……。」
(これ、本当にこのままここで最後までいっちゃうつもりだわ。あわわわ……。)
事態の急展開についていけない
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