恋愛弱者だと揶揄ってくる血の繋がりが八分の一しかない義理の美少女三姉妹が実は俺の厄介ガチ恋だった件

水島紗鳥@11/22コミカライズ開始

プロローグ

第1話 だって奏多君じゃん、彼女なんて出来ないに決まってるよね

 俺には超絶美人な姉妹が三人いる。三歳上の長女である莉乃りのと同い年で次女の杏奈あんな、二歳下で三女の瑠花るかだ。三人とは顔立ちなどが全然似ていないため俺が兄弟と知ると皆んな驚く。

 それもそのはず、俺と莉乃と杏奈、瑠香は義姉妹のため普通の兄弟姉妹では無いのだ。もっと正確に言えば俺と三姉妹はいわゆるはとこという関係であり血の繋がりも八分の一しかない。幼い頃に俺の両親が事故死して以来母さんの従姉妹夫婦に引き取られて今の関係になったというわけだ。

 義理の家族と聞くと家庭内で虐げられているようなイメージを持つ人もいるかもしれないがお義父さんもお義母さんも自分の子供のように育ててくれたし、三姉妹達も本当の兄弟のように接してくれた。


「でも三姉妹揃って恋愛経験がない事を揶揄ってくるのはそろそろ辞めて欲しい……」


 そう、莉乃も杏奈も瑠花もよく俺が恋愛弱者だと面白おかしく揶揄ってくるのだ。だからそんな愚痴を呟いているのだが三姉妹の反応は大体いつも決まっている。


「だって奏多君じゃん、彼女なんて出来ないに決まってるよね」


「そうそう、奏多と付き合ってくれるような女の子なんて世界中を探しても三十五億人中三人くらいしかいないわ」


「莉乃姉と杏奈姉もそう言ってるし、お兄ちゃんには彼女なんて百万年くらい早いよ」


 こんな感じで毎回のように三姉妹から揶揄われてしまう。だから高校二年生にもなって彼女の一人すら出来た事がない。


「奏多、瑠花そろそろ出発するわよ」


「おっ、もうそんな時間になってたのか」


「本当だ、早いね」


 気付けばもう学校に行かなければならない時間がやってきていた。俺と杏奈、瑠花は同じ中高一貫の学校に通っているため登校するのはいつも一緒だ。


「三人ともいってらっしゃい」


「莉乃姉は授業が昼からってズルくない?」


「それが大学生の特権だから」


「私も早く大学生になりたいな」


 瑠花はそう言葉を漏らしていたが中学三年生の彼女が大学生になるのはかなり先の話だろう。瑠花が大学生になる頃には俺も二十歳だが果たしてその時彼女はいるのだろうか。


「瑠花、モタモタしてたらあんただけ置いて行くわよ」


「あっ、杏奈姉待って」


「おい、足元危ないぞ」


「きゃっ!?」


 杏奈に急かされた瑠花は慌てて入り口に向かおうとして床のコードに引っかかり盛大に転びそうになる。だが瑠花が床に激突する事はなかった。そうなる前に俺が瑠花を抱き止めたからだ。


「言わんこっちゃない、大丈夫か?」


「……お、お兄ちゃんありがとう」


「瑠花って本当昔からドジだよな」


 ほんの少し顔を赤らめて何故かクネクネしている瑠花を抱き抱えたままそう呟いていると莉乃と杏奈がすっ飛んで来る。


「奏多君、いくら彼女が出来ないからって妹の瑠花ちゃんに手を出そうとするのはどうかと思うな」


「そうよ、早く瑠花から離れなさい」


「おいおい、せっかく朝から人助けをしたってのにこの扱いかよ」


「あっ……」


 莉乃と杏奈から責められたため体を離すと瑠花は何故か名残惜しそうな表情を浮かべていたのら気のせいだろうか。

 そんなこんなで家を出るだけで色々あったがようやく出発できた。学校は隣市にあるため電車で通学する必要があり少し面倒だ。


「新学期が始まってから一週間だけどお兄ちゃんは友達出来た?」


「奏多は相変わらずクラスに馴染めてないわ」


「おい、俺を社会不適合者みたいに言うのは辞めろ。てか、杏奈は違うクラスのはずなのに何で知ってるんだよ?」


「奏多とは違って私は学校に友達が多いから」


「てか、お兄ちゃん馴染めてない事は否定しないんだ」


「いやいや、ちゃんと友達くらいいるからな」


 煽るような表情の瑠花から揚げ足を取られた俺はそう答えた。杏奈も瑠花も俺の事を容赦なくいじってくるから本当に大変だ。

 まあ、でも俺が家族として認識されていなければこんなやり取りはそもそもしないためそこは安心だが。それから三人で歩き続け目的地の駅へと到着した。


「うわっ、相変わらず倉敷駅は混んでるね」


「ちょうど通勤通学ラッシュの時間だからな」


 俺達の住む岡山県第二の都市である倉敷市の主要駅は本当にいつもごった返している。今の家族に引き取られるまで住んでいた東京都内はもっと混雑がやばいらしいがその頃の記憶は昔過ぎて思い出せない。

 しばらくしてやって来た電車に乗った俺達は岡山市方面へと移動し始める。途中駅でも次々に人が乗ってきたため電車内はあっという間にすし詰め状態だ。


「ほらっ、二人ともとりあえず俺にくっついていろ」


「はーい」


「奏多のくせになんか腹立つわね」


 素直にくっついてきた瑠花に対して杏奈はやや不満気な表情を浮かべている。


「じゃあ杏奈はそのままでいいか?」


「うるさいわね、周りの男に密着されるくらいなら奏多で我慢するわよ」


「杏奈姉は身長低いもんね」


「瑠花は余計なこと言わない」


 そう言いながら杏奈は俺の袖を掴んで体を密着させてなきた。こんな感じで杏奈はいつも最初は文句を言っているくせに最後は何だかんだで密着してくるツンデレ気質なところがある。

 ちなみに今いるメンバーの背の順としては百七十四センチの俺、その次が百六十センチの瑠花、そして百五十センチの杏奈という順だ。

 杏奈は俺より二十四センチ、瑠花より十センチ低い事が気に入らないらしいが、姉の莉乃に十五センチ負けている事には対しては特に突っかかっていない。やはり長女は強いという事なのだろう。

 そんな事を考えているうちに電車は岡山駅へと到着した。そこから電車を一本乗り換え今度は西川原駅を目指す。

 西川原駅行きの電車内は俺達と同じ去華きょうか学園の学生ばかりだ。学校までは西川原駅から歩いてすぐのため去華学園に通う学生の大半が利用している。


「やっと着いたな」


「何年経っても満員電車は慣れないわね」


「お兄ちゃんと杏奈姉は後二年の辛抱だけど私は後四年も耐えなくちゃいけないから嫌なんだけど」


「なら瑠花は内部進学せずに外部の高校を受験するか?」


「……高校受験の勉強はもっと嫌だからそれはないかな」


 まあ、普通に考えてそうだろう。中学受験の時点で大変だったというのにその特典である内部進学を蹴って外部受験をする気になんてなれない。そんなやり取りをした後俺達はそれぞれ別れて自分達の教室へと向かった。



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