7.彼の声

第59話

 あれから毎日桜峰図書館に行ってみたけど、純に会うことはかなわなかった。

 ライブ前は、打ち合わせやお稽古で忙しいはずだ。それはそうだろう。

 そう思っても、なにもしないでいることはできない。

 でも、それくらいしかできることがない。

 そうしているあいだにも時は過ぎて、明日はライブ当日だ。

 金曜日。気もそぞろで授業を受けていると、とうとう夏陽に教室の隅に呼び出されて言われた。

「花乃、いったいどうしたの」

 こんなこと、親友とはいえおいそれと口にできることじゃない。

「べつに、どうもしないよ」

「そう。じゃぁ」

 平然とした顔を崩さずに、夏陽は言った。

「なんで今日授業中通算三回先生にさされて問題をきいていずとちったか、二十文字以内で説明せよ」

 ……。

 優しい人ぶったりしない優しさに、思わず涙が出そうになる。

 夏陽はいつもこうだ。

 明日はライブ当日。

 純にせまる陰謀のことを知ってるのは、あたし一人。

 でもライブのチケットだって持ってないし、会場に入れるわけもない。

 胸いっぱいにつかえていた現実が一気にあふれ出てきて、目頭を押さえると、夏陽がそっと背中に手を添えてくれる。

「純が……危険な目にあっちゃうかもしれなくて。どうしよう……」

 これだけじゃ、なんにも伝わらない。

 そう思ったけど、しばらく言葉が続かなかった。

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